フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)の公開セミナーが6日、神奈川・横浜情報文化センターで開催され、西村陽次郎チーフプロデューサー(フジテレビ)、八木里美ディレクター(バンエイト)、朝川昭史ディレクター(NEXTEP)、鳥居稔太ディレクター(テレビマンユニオン)が登壇した。
番組の“最年少ディレクター”として紹介された鳥居Dは、入社3カ月で企画を通したデビュー作の制作秘話を披露。ロケ先で取材対象者に叱責され、ドキュメンタリーの難しさを痛感した失敗談を明かした。
テレビマンの先輩たちからは断念を勧められるも…
鳥居Dのデビュー作となったのは、路上で通行人を褒め、投げ銭だけで生活する男性“褒めますおじさん”を追った「ほめる人とほめられる人 ~褒めますおじさん 令和の路上物語~」(24年9月8日放送)。入社して1か月もたたない研修期間中、仕事からの帰り道の渋谷駅で見つけ、自分も100円を入れて褒めてもらったところ、興味を持って企画書を提出した。
西村CPは、入社間もない時期でテレビのことも仕事のことも分かっていない新社会人が企画を持ってきたことに驚きつつも、「若い人がドキュメンタリーの世界で番組を作るのは面白い」と、企画を通したという。
しかし、新人Dは大きな壁にぶつかった。取材対象者との向き合い方が分からないまま強引に取材を進めようとした結果、褒めますおじさんに厳しく注意される事態に直面したのだ。
西村CPらテレビマンの先輩たちからこれ以上の取材を断念することも勧められたが、鳥居Dは「ここで止めてしまったら、褒めますおじさんにとっても、自分にとってもどうなのか」と自問自答した結果、「取材したい」という気持ちを貫き通すことに。
取材対象者に対しての向き合い方を改め直し、1年半にわたる取材を経て放送にこぎつけた鳥居Dに、西村CPは「若いドキュメンタリー制作者がまた一人、世の中に生まれたので、あの時に止めないでくれて本当に良かったと思います」と振り返った。
「人生の分岐点を迎える時を一緒に過ごせる」
この経験を積んで、最近も話題作「今どきじゃない会社で夢みる 僕と私の新入社員物語」(26年3月22日・29日)を手掛けた。「ゾス!」の叫びが飛び交うベンチャー企業に飛び込んだ新入社員たちの1年を追った作品だ。
取材中には何度も「うちの会社に入ったら年収1,000万円もらえるよ」と冗談混じりに誘われ、放送後にも何度か会社を訪れるなど、取材対象者と関係性が続いているという鳥居D。「すごくありがたいですし、良いことも悪いことも、人生の分岐点を迎える時を一緒に過ごせるのはドキュメンタリーでしか味わえないので、すごくやりがいがあります」と醍醐味を語った。
そんな鳥居Dは、現在2本の取材を進めており、西村CPは「楽しみにしています」と期待を寄せている。
このセミナーは放送番組センターの企画・主催で行われ、横浜情報文化センターにある放送ライブラリーでは、特別上映会「ザ・ノンフィクション 放送30周年セレクション」を6月28日まで開催中。放送ライブラリーで公開中の『ザ・ノンフィクション』177本の中から、番組制作チームがセレクトした選りすぐりの放送回を上映している。



