フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)の公開セミナーが6日、神奈川・横浜情報文化センターで開催され、西村陽次郎チーフプロデューサー(フジテレビ)、八木里美ディレクター(バンエイト)、朝川昭史ディレクター(NEXTEP)、鳥居稔太ディレクター(テレビマンユニオン)が登壇した。

番組開始30年を超え、今年、第34回橋田賞を受賞した同番組。セミナーでは、近年大きな反響を呼んだ「婚活」シリーズを手がける八木Dが、取材対象者との信頼関係、SNS時代におけるドキュメンタリー制作の難しさ、そして放送後の向き合い方について語った。

  • 『ザ・ノンフィクション』公開セミナー

    『ザ・ノンフィクション』公開セミナー

シリーズ最新作は推計約260万人が視聴

『ザ・ノンフィクション』屈指の人気シリーズとなっている「婚活漂流記」は、カリスマ婚活アドバイザー・植草美幸氏の結婚相談所に入会して婚活に奮闘する人々を追った作品。今年2月8日に放送された「結婚したい彼と彼女の場合 ~令和の婚活漂流記2026~ 後編」は、昼帯の関東ローカル放送にもかかわらず、リアルタイム、録画、見逃し配信を合わせて約260万人が視聴したと推計されている(※ビデオリサーチ調べなど)。

同シリーズをきっかけに、植草氏は今やバラエティ番組にもひっぱりだこだが、西村CPは「真剣な婚活の場をドキュメンタリーとして撮れるのは、植草さんと長年の信頼関係を築いてきた八木さんだけです」と強調した。

取材対象者と一緒に放送視聴「時間をなるべく共有」

『ザ・ノンフィクション』が放送されると毎週のようにX(Twitter)で番組名がトレンド入りするようになったが、反響が大きくなることで負の側面も。以前なら番組への意見やクレームはテレビ局に届くものだったが、今はSNSで取材対象者本人に直接届いてしまう。その上、本人もSNSで発信できるため、制作者やテレビ局を介在せず反論や応戦が起こり、炎上状態と隣り合わせになっているのだ。

現在は取材対象者に対して取材がスタートする前に、SNSで攻撃されるリスクがあることを念入りに説明し、それを承知した人を追っているが、八木Dがケアの一環として行っているのは、取材対象者と一緒に放送を見るということ。

「一人になってしまうと、どうしてもそのリアルタイムでSNSを見たり、エゴサーチをしてしまったりするので、一緒に見て、いろいろ話をしたりして、時間をなるべく共有するようにしています」

放送後も「何か不安に思うことがあったら聞くようにして、心のケアは常に考えています」というが、2024年の放送に登場した進藤さん(仮名)は、我慢できずにエゴサした結果、心無い人々から攻撃を受けているのを目にしてしまう。進藤さんは深く傷つき、気分が悪くなって嘔吐するまで追い込まれてしまったそうだ。

立ち直るまでにも時間がかかったといい、八木Dは「一般の人を深く取材するドキュメンタリーというのは、ますます難しい時代になったなと思います」と実感を語った。

10年以上の取材日記を書籍化

取材中は客観的な視点を持つため、対象者に「あえてあまり近づきすぎないようにします」と距離感を保っているが、やはり強い信頼関係で取材が成立している。それを裏付けるように、「放送が終わってから仲良くなったり、友達みたいになってご飯を一緒に食べに行ったりすることもありますね」とエピソードを明かした。

そんな八木Dは、植草氏の結婚相談所での10年以上にわたる取材日記をもとに、書籍を出版する予定。「見つけたらぜひお手に取っていただければ」と呼びかけた。

このセミナーは放送番組センターの企画・主催で行われ、横浜情報文化センターにある放送ライブラリーでは、特別上映会「ザ・ノンフィクション 放送30周年セレクション」を6月28日まで開催中。放送ライブラリーで公開中の『ザ・ノンフィクション』177本の中から、番組制作チームがセレクトした選りすぐりの放送回を上映している。

  • 八木里美ディレクター

    八木里美ディレクター

  • 西村陽次郎チーフプロデューサー

    西村陽次郎チーフプロデューサー