「埼玉県と言えば、何?」と質問されると、結構困る。これといった名物がないのだ。もちろんなくはないが、「狭山茶、深谷ねぎ、草加せんべい……」と説明しても、あまり盛り上がらない。聞かれたから答えたのに、である。

しかしよく考えてみれば、埼玉のソウルフードと呼ばれる「ピッツァ&パスタ るーぱん」があるじゃないか。身近すぎて忘れがちだが、「るーぱん」は結構自信を持ってプレゼンできる気がする……。

ということでさっそく訪問、名物メニューのひとつである「得だねセット」を改めて食べてみた!

  • 星野源さんも通い詰めた埼玉のソウルフード「ピッツァ&パスタ るーぱん」を実食レビュー

    昭和47年創業の老舗「るーぱん」は現在、埼玉県内に6店舗展開している

■埼玉県民のソウルフード!? 「ピッツァ&パスタ るーぱん」

昭和47年創業の老舗「るーぱん」、実はあの星野源さんが学生時代に通い詰めた店としても有名で、テレビなどで紹介されるたび、全国のファンが聖地巡礼に訪れる。埼玉県民にとっては生活の導線上にある、実家の出張所のような存在だろう。

  • 星野源さんも通い詰めた埼玉のソウルフード「ピッツァ&パスタ るーぱん」を実食レビュー

    700円前後のメニューが多く、コスパ抜群

ただし、かつては30店舗以上を展開していたが、現在は埼玉県内に6店舗(蕨、蓮田、上尾、鶴ヶ島、熊谷、本庄)を残すのみ。寂しいけど、これが時代の流れなのか。今となっては、この選ばれし6拠点に踏み入ること自体が、埼玉愛を試される儀式のようなものなのかもしれない。……さすがにそんなことはないか。

  • 看板メニューのボンゴレ(赤)も単品なら605円!

    看板メニューのボンゴレ(赤)も単品なら605円!

店内は昭和レトロとウエスタンが混ざり合ったような独特の空気感が漂っており、少し薄暗いくらいの光加減が妙に落ち着く。メニュー数がかなり多く、どれもコスパ抜群なので、何を食べるかいつも迷っていた覚えがあるが、この日は「得だねセット」(1645円)を選択した。

そして待つこと数分……

  • 【写真】「得だねセット」(1645円)。ボンゴレにカットピザ、イカ納豆サラダにケーキまでつく満腹メニューだ

「得だねセット」が到着! るーぱんの看板メニューであるボンゴレ(赤)にカットピザ、イカ納豆サラダ、そして本日のケーキまで付いてくる、食いしん坊の理想を現実にしたようなセットである。

まずはベジファースト。るーぱん名物「イカ納豆サラダ」からいただこう。

「サラダに……イカ納豆だと?」と、初見の人は絶句するだろう。だが、何も考えずに、ぜひ一口食べてみてほしい。新鮮な千切り野菜の上に、こんもりと乗せられた納豆&生イカ。ドレッシングはもちろん、るーぱん秘伝の「アンチョビドレッシング」をチョイスしている。

さっそくひと口いただくと……

……ヴォーノ!!!! マジでうめぇ〜! いや、よく作ったな、こんな出典の知れない謎の激ウマメニュー。オリジナリティがすごいし、イカ、納豆、アンチョビドレッシング、生野菜、海藻という具材同士の相性がめちゃくちゃいい!

爽やかでさっぱりしているんだけど、アンチョビならではの濃厚なコクもあって、ヤミツキになる味わいだ。とろとろの納豆&イカの食感もいい。家でも真似したくなるが、これはなかなか真似できるクオリティじゃない気がする。最高!

激ウマサラダだけで満足してしまいそうだが、主役の「ボンゴレ(赤)」を蔑ろにしてはいけない。皿の中にたっぷりと湛えられたトマトソースは、もはやスープと呼ぶべき量を誇る。2個分のトマトを贅沢に使用しているのだとか。

スープは下のほうに溜まっているので、まずはよくかき混ぜよう。うまく混ざったらクルクルっと巻いて……パクッ。

ああ、これこれ……「るーぱん」といえばこれ! 沁みる〜〜〜! 魚介の濃厚な出汁とトマトの爽やかな酸味と甘みが口のなかで炸裂! これだよ。これが埼玉の味だよ。あさりの旨味がこれでもかと溶け込んでいて、みずみずしいトマトの熟した味わいとベストマッチ。体に馴染む安心感がある。辛さ加減もちょうどよく、食べているうちに結構ピリピリが蓄積してくる感じね。タバスコをかけて、さらにホットにするのもよさそうだ。

麺を平らげたら、ぜひトライしてみてほしいのが……

バターライスである。「るーぱん」のオフィシャルが推している食べ方なんだけど、ボンゴレの残ったソースに投入して「イタリア風おじや」にするのがツウの食べ方らしい。

実際に試してみると……

……めっっっちゃうめぇ〜〜〜ッッッ!!!! バターの芳醇な香りとコクが、あさり出汁が凝縮されたトマトソースと融合。先ほどまでの爽やかな面持ちは鳴りを潜め、一瞬にして濃厚でジャンクなトマトリゾットへと変貌を遂げた。

ヤバい、スプーンが止まらない。一粒一粒の米が旨味を吸い、胃袋へとなだれ込んでくる。もはや炭水化物の暴力でしかないが、これほど心地よい攻撃が他にあろうか。どこか素朴ではあるのに、めちゃくちゃ満足できる。まさに「るーぱん」を体現するかのような一品だ。

「カットピザ」はチーズ感が強く、生地ももちもちしていて美味! るーぱんツウの間では、このピザをボンゴレのスープに浸して食べるのが常道とも囁かれているようだが、まぁ間違いなく合うだろう。

締めは本日のケーキ。これがまた、いい意味で普通に、ちゃんと美味しい。

この日はレアチーズケーキだったと思うのだけど、見た目から想像する感じの3倍は硬めに仕上がっており、そのハードさが逆に新鮮で嬉しい。プリンも昭和系の硬い食感のものが再評価されているけど、それに通ずる“古き良きレアチーズケーキ”の趣がある。すっきりした酸味と甘味のバランスも完璧!

「るーぱん」の魅力は数々あるが、個人的にはその“自由さ”も特筆すべき点だと思う。イカ納豆をサラダにぶっかけようが、ピザをスープに浸そうが、最後にご飯をぶち込もうが、ここではすべてが許される。というより、「自由なアレンジを楽しめる人ほど格好いい」みたいな空気すらあるように感じる。

もし埼玉を訪れた際は、ぜひ「るーぱん」の看板を探してみてほしい。そこには星野源さんも愛した、そして県民が愛してやまない埼玉産の“イタリアの風”が吹いているはずだ。