ドラマとARGのストーリー作りを並行で進めながら、ARG側で届けたいメッセージをどうドラマの中に落とし込むか、その逆にドラマのストーリーに応じてARG側をどう設計するか――この複雑に絡み合う構造を作っていく作業は、岩崎氏を含む5~6人のメンバーが会議室に集まり、ホワイトボードに全体の構成を書きながら、「ここは差をつける」「ここまではドラマで伝え、その先でもう一歩体験させる」といった組み立てを繰り返していったという。

最も腐心したのは、リアリティとの整合性。ARGでドラマ制作の裏側を体験として成立させるためには、すべての出来事に理由をつけ、放送されるドラマと矛盾しないようにしなければならない。

しかもARG側を派手に、劇的にしたくなればなるほど、リアリティが損なわれる危険がある。「地上波でこの時間に放送されるドラマ」が大前提である以上、その土台からズレすぎることは許されない。だからこそ、本作は「あくまで日常の中で起きうる話」でなければならなかった。

この制作作業を、岩崎氏は「牛歩のように詰めていきました」と振り返るが、ドラマとARGを密接に結びつけたことで、「ドラマのエンディングは、ARGが存在しなければ違う形になっていたと思います」と作用したようだ。

ドラマは放送後も長期間にわたり無料でアーカイブ配信する予定で、視聴者がドラマを見た後にゲームをプレイし、もう一度ドラマを見返すと、「なぜあの人たちはそうしたのか」「なぜこの形に着地したのか」が違う角度から見えてくるように設計しているという。

実質一人芝居の砂田将宏が熱量高く参加

ドラマ×ARGという複雑な構造なだけに、キャスト陣をはじめ、関係各所には丁寧に説明を重ねた。理解してからは、「ここはこういうことですね」と疑問を持たず、スムーズに撮影が進んでいったという。

また、AIとの会話という実質一人芝居の役に挑んだ主演の砂田将宏には、「本当にいいお芝居をしていただきました」と感謝。「自分がどう追い込まれていくかという部分や、場面場面の気持ちについて、現場でも細かく議論しながら作っていってくれました」と熱量高く臨んでいたことを明かした。