このドラマに託しているのは、政治や選挙への関心を喚起することだけではなく、その手前にある「対話」のきっかけを作りたいという思いだ。

前述の通り、日本では親子や友人同士でも政治の話題を避けがちな一方、X(Twitter)などのSNSでは党派性を帯びた言葉が激しくぶつかり合う。この現状に「百歩譲って議論にはなってるのかもしれないけど、決して対話ではないと思っているんです」と指摘。画面越しの文字ではなく、相手の言葉を聞き、受け取り、自分もまた考えて返すというやりとりの中にこそ意味があると考えている。

だからこそ、ドラマの感想をきっかけに、「自分はこう思った」「実はこの人を応援している」といった言葉が自然にこぼれ、そこから少しずつ会話が広がっていく――佐野氏は「理想論かもしれないけど、そのきっかけになったらいいなと思っています」と願った。

●佐野亜裕美
1982年生まれ、静岡県富士市出身。東京大学卒業後、06年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て09年にドラマ制作に異動し、『渡る世間は鬼ばかり』のADに。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス~この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9~刑事専門弁護士~』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュース。20年6月にカンテレへ移籍し、『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス―希望、あるいは災い―』、さらにNHKで『17才の帝国』をプロデュース。23年1月に映像コンテンツのプロデュースや脚本作り、キャスティングなどの支援を行う「CANSOKSHA」を設立。『カルテット』でエランドール賞・プロデューサー賞、『大豆田とわ子と三人の元夫』で大山勝美賞を受賞、『エルピス』で芸術選奨・新人賞(放送部門)を受賞している。