このシリーズを通して、山田氏が一貫して伝えたいのは、「動物との付き合い方に正解は一つではない」ということだ。
「イギリスみたいに愛護団体がものすごく頑張って、すごくルールを決めて、きちんと犬と猫の命を守るというやり方もある。台湾では2017年まで殺処分をしていたのですが、そこから方針が変わって犬猫を助けるためのシステムが構築されています。そしてトルコは、市民のみんなが保護活動家のような存在。現地のコーディネーターも、いつもポケットに餌を入れ、そこに猫がいたらあげていました」
それぞれの国に、犬猫に対する文化や歴史がある。だからこそ、どれか一つを“正解”として押しつけるのではなく、まずは違いを見ることが大事だと考えている。
「日本は、どうしても野良猫、野良犬とか保護猫、保護犬という話になると、“猫は絶対家から出しちゃダメ”だとか、“高齢者は保護動物を飼うのは難しい”といったルールの話になるんですよね。もちろん、動物の命のためには厳しいルールは必要な面もあるけれど、大切なのは人間も犬も猫も、みんなが仲良く一緒に幸せに暮らすことだと思うんです」
トルコの旅で登場する猫の餌の自動販売機も、その象徴の一つだ。
「ああいうのって、日本なら“あんなところに餌が放置されたら不衛生じゃないか”と言う人も出てくるかもしれません。でも一つのやり方だから、それで幸せになってる子がいるなら、いいのではないかと思うんです」
だからこそ、この番組を“トルコ礼賛”にしたいわけではない。
トルコは近年、法律が変わり、野良犬は保護されることになったが、「狭いところにたくさん入れられて、閉じ込められてかわいそうだと思う場面もありました」と、課題を目の当たりに。トルコでは殺処分は行われないそうだが、石田もそれを見て、「あれは狭くてかわいそうだよね」と、心配していたそうだ。
この番組は、かわいい動物たちの姿に癒やされて楽しく見ることもできれば、日本の動物保護や共生のあり方を考える入口にもなっている。山田氏は「ゆり子さんの魅力も楽しめますので、ぜひ、いろんな視点で見ていただけたら」と呼びかけた。
●山田あかね
東京都出身。テレビ制作会社勤務を経て、1990年よりフリーのテレビディレクターとして活動。ドキュメンタリー、教養番組、ドラマなど様々な映像作品で演出・脚本を手がけている。2010年、自身の書き下ろし小説を映画化した『すべては海になる』で映画初監督。東日本大震災で置き去りにされた動物を保護する人々への取材をきっかけに手掛けた監督2作目『犬に名前をつける日』(16年)は、国内外で評価され続けている。映画『犬部!』(21年)では脚本を務めた。また、22年2月24日に起きたロシアによるウクライナ侵攻から約1カ月後、映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』の取材を開始し、25年に公開された。


