さて。今回のラストは、あの大人しかった紀介がアホの八郎を殴るという、衝撃(?)のシーンで終わったが、これを演じる津田健次郎という俳優とは何者なのか。論じていきたいと思う。

津田はもともと舞台役者だったが、2000年頃に声優として成功を収め、それ以降、「俳優<声優」という印象が大きくなった。その唯一無二の低く渋い声は多くのファンの心をつかみ、『テニスの王子様』の乾貞治をはじめ、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人、最近では『呪術廻戦』の七海建人など、代表キャラを挙げていけばキリがない。

映画吹き替えでも『ジョーカー』のジョーカー役のほか、ナレーターなどでも頭角を現した。ただ、俳優として注目されたのは40代からで、今でこそ声優人気と言われてはいるものの、どうしてもメインではなくサブの存在として見られてしまうわけで、そういった意味では苦労人とも言える。

そんな彼が、俳優として再び注目を集めたのが、2021年の『最愛』(TBS)。警察官・山尾敦を演じ、「渋い」「不気味」「静かな威圧感」があるなど話題にになり、俳優としての活動が拡大していった。声の低さや、息の混ざる発声、セリフの独特の“間”があることから、(吹き替えも含め)特に刑事や権力者、裏社会の人物、知的な悪役などはハマりやすい。

その津田が『ラムネモンキー』で演じるのは、「イケボのカリスマ」ではなく、冴えない普通のおじさん。知的でユーモアのある性格や声優としての実力を封印し、長かった下積み経験(※サブカルチャー界隈や、声優界では人気はあった)の空気を役柄に滲ませているように見える。

そんな彼だが、実は第4話では、漫画を描いているシーンがあり、そこで書いたセリフを「CV.津田健次郎」のごとく「良い声」で読み上げるなどのサービスがあった。これに、津田ファンは大歓喜。こうした遊び心こそが『ラムネモンキー』の隠された魅力だ。

その津田が、役柄としてアホの八郎を殴った。これまで抑えめで控えめな芝居をしていた分、あの何を考えているか分からない目のまま、暴力に訴えかけた芝居と、そのギャップに驚嘆した。どうも『ラムネモンキー』は、声優・俳優双方の津田の魅力を、大きく引き出そうとしているようだ。マチルダ事件の真相とともに、新たな津田が見られる楽しみが増えたと感じられた回であった。

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