婚活に挑む人たちがいかに本気で臨んでいるのか――それが伝わってくる一つの例が、プロポーズの場面だ。
今回登場した39歳の飯田さん、そしてYouTubeチャンネル『フジテレビドキュメンタリー』の配信で登場する内田さんは、いずれも女性の前にひざまずくスタイルでプロポーズを成功させた。これは植草さんの助言ではないそうで、「皆さん、YouTubeを見たりしてイメトレされるので、私もびっくりしました」と、それぞれが自ら考えた末の行動だった。
一般的な恋愛のプロポーズと違い、結婚相談所の現場には「結婚したい」という強い意思が凝縮されている。その“真剣度”が、所作として形に出るようだ。
10年で変化した婚活のカップリング
2015年から結婚相談所「マリーミー」で婚活に挑む人々を取材する八木D。約10年という期間で、「“女だから”、“男だから”、“この年齢だから”という役割みたいなものが、どんどん溶けてなくなっているのを感じます」という。
10年前は、「男性がバリバリ働いて、女性は子どもができたら家庭に」というモデルが、まだ“良い結婚”と捉えられ、「男性と肩を並べて働いてきたバリキャリ女性が鎧を脱げずに苦労するというケースもよく見ました」と振り返る。
それが現在は、「“一緒にいて楽に人生を歩めそうな人”が実は年上かもしれない…というふうに、固定観念を途中で変えていく人も多いです。最初に考えていた条件と全然違う相手と結婚するということも、よくあります」と、フレキシブルになっているそうだ。
今回の久保さんと紗栄子さんのように、30代前半の男性が40代の女性とお見合いするというのは、八木Dも初めて立ち会ったケース。「新しいカップリングの可能性が生まれてきていて、この10年でかなり変わってきたと思いますし、久保さんにとっても追い風になっていると思います」と、期待を示した。
「婚活漂流記」は特殊な取材「一緒に悩んで、迷って…」
これまで、全盲の夫婦や心臓移植を待つ夫婦、東日本大震災の被災者、居場所を失った子どもたちを受け入れる和尚、シングルマザーの大道芸人など、様々な立場の人たちを取材してきた八木D。それぞれのテーマを事前に勉強して臨んできたが、この「婚活漂流記」シリーズに関しては、「何かを撮りに行くというより、“その人の気持ちを知りに行く”という特殊な取材です。何が起きるかわからないけど、今日も会いに行くという気持ちなので、同じドキュメンタリーでも別ジャンルのような感覚で作っています」と打ち明ける。
その中で、何人もの婚活を見届けてきたが、「今も“結婚って何だろう”とずっと思っています。10年取材していても、男女のことはよく分かりません」という永遠のテーマ。それゆえに、「男性が分からない女性の考えを取材対象者に伝えることはありますが、一緒に悩んで、一緒に迷いながら歩んで、そこで撮れたものを放送する」というスタンスで向き合っている。
だからこそ数々のドラマが生まれ、多くの人々が一喜一憂しながら心を打たれる人気シリーズに。今後の続編については、「取材を受けてくださるのは勇気のいることだと思うので、機会があればまた一緒に悩んで迷って追っていきたいと思います」と語ってくれた。
●八木里美
1977年生まれ、東京都出身。学習院大学卒業後、青森朝日放送でニュースキャスター・記者・ディレクターとして取材現場に従事し、テレビ朝日『スーパーJチャンネル』を経て、04年にバンエイト入社。フジテレビ報道局で『スーパーニュース』を担当し、11年からは制作部でドキュメンタリー番組などを制作。『ザ・ノンフィクション』では、「愛はみえる~全盲夫婦の“たからもの”~」「わ・す・れ・な・い 明日に向かって~運命の少年~」「私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~」「わすれない 僕らが歩んだ震災の10年」「泣かないでアコーディオン ~シングルマザーの大道芸人~」、そして「婚活漂流記」シリーズなどを担当し、12年にわたって取材した「熱血和尚」シリーズでは、「2020年日本民間放送連盟賞」テレビ教養番組部門・最優秀賞、「ニューヨークフェスティバル2020」ドキュメンタリー宗教/哲学部門・銀賞&国連グローバルコミュニケーション賞・銅賞など、国内外で数々の賞を受賞した。
