――『エルピス-希望、あるいは災い-』(22年)、『春になったら』(24年)、『アンメット ある脳外科医の日記』(同)と民放連の最優秀賞を3年連続で受賞するなど、“カンテレドラマ”の高評価が続いていますが、その背景にはどんなことがあるのでしょうか。
重松:それはもう、プロデューサー陣が言うことを聞かないことですね(笑)。自分たちのやりたいものに対して譲らない気持ちをすごく持っているところだと思います。だけどそれは、イコール「失敗したらお前のせいだよ」ということなんです。だから管理職も、ある意味で管理していない。それぞれがそれぞれのやりたいことをやっていくけど、その代わり責任は自分が取るというのを徹底してきたと思います。
河西:重松さんが冗談で「2回連続して失敗したらクビだぞ!」ってよく言ってたんですけど、逆に考えると「2回までは失敗できるんだ」ってことじゃないですか(笑)。だからこそ、現場が責任を持ってできるんです。そうさせてもらってきた僕が部長になったからこそ、これからもそういう体制じゃないといけないなと思っています。
ただ、賞をたくさん頂いたり、業界関係者の方から褒めていただいたりというのは、うれしいことではあるのですが、制作者としての一番はやはり、たくさんの人に見てもらうこと。つまり地上波である以上は、視聴率をとらなきゃいけないので、そのための努力をしないといけないと思っています。
――プロデューサー同士のライバル意識はあるのでしょうか。
重松:そこが特殊なのかもしれないのですが、カンテレのプロデューサー同士にライバル意識はないんですよ(笑)。それは僕が外へ出てみて分かったことでもありますね。
河西:ドラマの打ち上げの場に、全プロデューサー陣が集まることがあるんです。他局ではそんなことないって言われました(笑)
人間に必要な「必ず来週も見たい!」装置になるメディア
――アメリカではテレビ局制作のテレビドラマが縮小傾向にあるというニュースがありました。今後のテレビドラマの未来について、どう思いますか?
重松:テレビドラマを作る力がないと、配信も映画も作れないと僕は思うんです。1週間待ってまで見てもらえるもの、そのコンテンツを作れる人はやっぱり強いですよね。そこまでのコンテンツを作れるなら、どこでも勝てると思うので、テレビ局はどんどん頑張ってほしいと思いますし、僕らもしっかり作らなきゃいけないと思います。
テレビ全体の価値観だと思うのですが、連続してやっていけるものは、来週も楽しみにさせているものということですよね。つまりそれは、見ている人を“前向きにしている”ということ。「必ず来週も見たい!」という装置になるメディアは、やっぱり人間にとって必要なんだと思います。
河西:たしかに。刹那的なメディアのエンタテイメントだけになってしまったら、人は前向きになれるのかなと。だから僕は、テレビドラマは人間が生きる上で必要なエンタテイメントの一つだと思うので、衰退させてはいけないと思っています。
2人が強調していたのは、テレビドラマだからこそ発揮できる“連続性”の面白さだ。『終幕のロンド』もまた、その“連続性”を強く意識した物語であり、“遺品整理人”という仕事を通して見えてくる人間ドラマの深みに加え、主人公・樹の生き様を、集団訴訟やロマンスといったドラマチックな展開の連続で描き出している。クライマックスに向けてさらに加速していく『終幕のロンド』はもちろん、今後のカンテレドラマからも目が離せない。
●重松圭一
1966年生まれ。90年に関西テレビ放送入社。営業局を経て、03年の『僕の生きる道』を皮切りに、『僕シリーズ』のほか、『がんばっていきまっしょい』『ブスの瞳に恋してる』などのドラマ、『福山エンヂニヤリング』『SMAP×SMAP』などのバラエティ、『阪急電車 片道15分の奇跡』などの映画でプロデューサーを務める。映画事業部長、東京制作部長、東京支社長などを歴任し、23年7月末で同局を退社。映像制作集団「g」を設立し、演出家・脚本家の瑠東東一郎氏、金沢知樹氏、山田能龍氏ら多数のクリエイターが参加する。
●河西秀幸
1980年生まれ。02年に関西テレビ放送入社。『ハングリー!』『銭の戦争』『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』『嘘の戦争』『パーフェクトワールド』『罠の戦争』などでプロデューサー、バラエティ『SMAP×SMAP』も担当した。昨年は、26年ぶりに復活し話題となった反町隆史主演『GTOリバイバル』も手掛けた。今年7月から東京制作部長となり、『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』のプロデューサーを務める。


