三谷幸喜のオリジナル脚本で、1984年の渋谷「八分坂」という商店街を舞台にした群像劇のフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(毎週水曜22:00~ ※TVer、FOD、Netflixで配信)の第6話が、5日に放送。物語半ばの新たな伏線回となり、“後半戦スタート”が明示された。

  • (左から)菅田将暉、二階堂ふみ (C)フジテレビ

    (左から)菅田将暉、二階堂ふみ (C)フジテレビ

【第6話あらすじ】皆の心が一つになるもトラブル続出

久部版「『夏の夜の夢』初日公演を終えたばかりのWS劇場。客席で久部三成(菅田将暉)に声を掛けたのは、日本を代表するシェイクスピア俳優・是尾礼三郎(浅野和之)だった。是尾は、久部が敬愛してやまない蜷川幸雄氏が演出した舞台にも数々出演している大御所俳優。

久部は是尾との対面に深く感激する。是尾は「久しぶりに渋谷を歩いていたら、ここの前を通りかかりましてね」と前置きすると、久部版『夏の夜の夢』に対して一定の評価を示す。

その言葉に舞い上がる久部は、是尾を打ち上げ会場へ連れて行く。すると、手にメモをもった巫女の樹里(浜辺美波)の姿が。樹里のことが気になっている蓬莱省吾(神木隆之介)は樹里を打ち上げに誘う。しかし樹里の目には久部しか映っていない様子。そして、その純粋な想いを、辛辣かつリアリストな倖田リカ(二階堂ふみ)に打ち砕かれ、帰ってしまう。

打ち上げ会場では、すっかりWS劇場の面々と仲良くなった警察官・大瀬六郎(戸塚純貴)が付け焼き刃ながらなかなかの芝居を披露。これに盛り上がり、うる爺(井上順)の代役を大瀬がやってはどうかと冗談で盛り上がる。しかし、これを遅れてきたうる爺が目撃。ショックを受け、立ち去ってしまう。

実は初回でアドリブによって舞台をめちゃめちゃにした反省から、真面目に取り組もうとしていたうる爺。そんな彼が交通事故に遭ったとの知らせが。さらにリカの前には、昔の男と思しき青年(生田斗真)が突如、現れ…。

  • (C)フジテレビ

    (C)フジテレビ

綻びを見せ始める“一体感”

第6話ではそれほど大きな動きはなかった。そして残念なことに正直、これまでの数字もかんばしくない。だがSNSを見ると“好きな人は好き”であることも分かる。

ここで韓国のSNSを参考に分析する。韓国SNSでは韓流コンテンツについて誇る声が圧倒的に多い。だが自国ドラマに関して「どれも同じパターン」と苦言を呈し、「日本のドラマはいろんなジャンルがあって羨ましい」との声を見かけるのだ。

『もしがく』はその“いろんなジャンル”の一つであり、数字的には“少数派”。だがハマる人はハマっている。「面白くない」の声も正直多い。だが「右向け右」は韓国でも不評であり、多くの可能性を潰す。ほかの例としては、アメコミやハリウッド。LGBTQやルッキズム、BLMなどに「右向け右」“しすぎた”結果、何でもありの日本アニメ/漫画へと人気が移ってしまうことになった。流行や人気だけでなく、ジャンルの裾野が広い包容力こそ日本カルチャーの強み。まあ「勝てば官軍」の事実からは目を背けられないが…

さて、気を取り直そう。──とはいえ、個人的に第6話の構成は実に見事であった。まず前半の「打ち上げ」の“一体感”。あの樹里でさえWS劇場へ好意的になり、うる爺もやる気に満ちた。これまで物語の“外部”的存在だった警察官・大瀬でさえ、WS劇場関連の“内部”へ…。物語構成的にいえば、物語半ばに置かれる“小カタルシス”に当たる場面だ。

だが後半からトラブルが続出。一度は「やっぱりこの地に残る」と「八分坂」を見直した樹里が、リカとの掛け合いの結果、「やっぱり出る」と手のひらを返す。うる爺は冗談を間に受けて飛び出し、前半築かれた“一体感”が綻びを見せ始める。そして事故で全治2カ月。「うまくいきそう!」という期待が「ヤバいことになった。今後どうなる?」の引きを作り出している。

また、回収されていない伏線はいまだ数多いのに、新たな伏線がまた、多く放り込まれたのには驚いた。象徴的なのは、日本を代表するシェイクスピア俳優・是尾とジャズ喫茶のマスターの風呂須太郎(小林薫)がまさかの知り合いだったこと。また、芸人・王子はるお(大水洋介)が、よく劇中のテレビ画面に登場する人気芸人・ポニー田中(堺正章)の息子だったこと。ここまでは「成功」の布石と見られるが、不穏感を出してくれたのが、過去に何かありげな謎の美青年(生田)とリカの再会であった。

このリカの艶っぽさやミステリアスな雰囲気。画面に映るとそこへ目が行ってしまうほどの存在感は、いうまでもなく二階堂による天才的な芝居によるが、だからこそ、リカが鍵を握っているようにも感じられる。そこへ落とされた影は、これまでのテーマリズムを半拍落とし、『もしがく』推しに強いインパクトを与えるには十分だった。これまでと違う物語展開が入ってくる──この不安感と期待をラスト近くに置くこの構成は、「ここから新たな展開の後半が待っている」ことを指し示す道標。「盛り込みすぎ」との声もあろうが、これがどう収束するのか、やはり次話が気になってしまう。