ポケモンと宇宙。このどちらかを追っていれば、その親和性の高さに気付くに違いない。神奈川県相模原市立博物館で11月1日から始まる企画展「ポケモン天文台」は、その両方を一度に、とことん楽しむことができる“神企画”である。
主催は自然科学研究機構・国立天文台、そしてゲーム「ポケットモンスター」をプロデュースする株式会社ポケモン。子どもたちの宇宙への関心を育み、科学を“わくわく”しながら学ぶことを目的とした巡回企画展で、初回の開催地として相模原が選ばれた。
10月30日に行われたオープニングセレモニーでは、ほしぞらピカチュウの着ぐるみも登場。挨拶に立った国立天文台の土居守台長は、「天文学はなかなか普段、みなさんに足を運んでもらえないという難しさを感じているのですが、おそらくポケモンの魅力で非常にたくさんの人に来ていたいただけると思う。将来の天文学者がこの展示会からどんどん育ってくれるのではないかと、非常に期待をしています」と胸を膨らませた。
いよいよ開幕!「ポケモン天文台」に潜入!
来場者をまず出迎えるのは、夜空を見上げるようなポーズの「ほしぞらピカチュウ」のフィギュア。満天の星々に浮かぶ“ポケモンの星座”を背に立つその姿は、これから始まる「宇宙への冒険」を象徴しているかのよう!
展示の序盤は「太陽のひみつ」から始まる。「太陽の磁場を体験してみよう」と題されたコーナーでは、太陽の黒点と磁力をテーマにした体験展示が並ぶ。
「黒点が増えると不思議と“レアコイル”が多く現れる」。そんな“ポケモン世界の仮説”をモチーフに、レアコイルやその進化形・ジバコイルのぬいぐるみを太陽模型に近づけると、磁場の強い場所にピタリと吸い寄せられる仕掛けとなっている。磁力線の“見えない力”を、ポケモンの力で体感できる。まさに科学実験とエンターテインメントが見事に融合した展示だ。
続く「身近な宇宙に迫る」コーナーでは、太陽系の星と、それにまつわるポケモンの詳しい解説が展開される。
月の光によって進化した“ブラッキー”、月の満ち欠けで体調が変化する“ルナトーン”など、ポケモン世界でも月の影響を受けるキャラクターは多い。
日食・月食の仕組みを解説するパートでは“ネクロズマ”が登場。エネルギー源となる光を求めて暴れるプリズムポケモンで、ソルガレオ、ルナアーラを取り込むことで、通称「日食・月食ネクロズマ」へと姿を変える。
「日本の月探査」コーナーには、電子空間を自由に移動できる“ポリゴン”も展示。ポリゴンは最高の科学技術で生み出された人工ポケモンで、ポリゴン2は「惑星開発プログラム」がインストールされた“宇宙対応型”の存在。ポケモンシリーズを知る人にとっても、「そういえば、そういう設定があったかも」と再確認できる内容だ。人類の技術とポケモン世界の科学の力がクロスオーバーする世界。本当に奥深い。
火星に似た特徴を持つポケモンとしては“ゾウドウ”が登場。銅でできた体が錆びることで鮮やかな緑色に変化するという特性が、赤い火星の表面との対比で紹介されている。ここでは天気を「すなあらし」に変える“バンギラス”も展示されており、「もし火星にバンギラスがいたら、激しい砂嵐もへっちゃらかも」というユーモア溢れるキャプションが添えられていた。
ガス状の体を持つ“コスモッグ”が進化し、“コスモウム”を経て“ソルガレオ”や“ルナアーラ”になる過程が、「原始星から成熟した恒星、そして老いた星へ」という“星の一生”のサイクルに重ねて紹介されている。星の誕生と進化を、ポケモンの進化にたとえる展示は、子どもにも大人にも直感的に理解しやすいはずだ。
終盤には、「流れ星と隕石」のコーナーが登場。ここでは隕石ポケモン“メテノ”が主役だ。オゾン層で生まれ、周囲の塵を吸収して成長し、重くなると地上へ落ちてくるというメテノの設定が、隕石の生成と落下の仕組みとリンクしている。
さらに頭上を見上げると、天空を駆ける“レックウザ”の姿が! 大気中の塵や隕石を食べて生きる伝説のポケモンで、オゾン層やカーマンラインといった「地球と宇宙の境界」を解説するコーナーと合わせて展示されている。
展示の終盤には、「私たちはどこから来たのか」という問いとともに、「ポケモンはどこから来たのか」というパネルが並ぶ。ここで紹介されるのは、すべてのポケモンの先祖とされる“ミュウ”だ。その体にはすべてのポケモンの遺伝子が眠っており、どんな技も使えるという設定で、人類の起源と宇宙の始まりを問う科学のテーマと、ポケモン世界の創世神話が重なり合う、まさに本企画展の核心部分ともいえる。
さらに、ポケモン世界における宇宙の始まりを語る「シンオウ神話」も登場。“アルセウス”が宇宙を創造し、そこから“ディアルガ”“パルキア”といった時間や時空を司るポケモンが生まれたという物語である。
展示を見終えたら、隣接するオフィシャルショップへ足を運びたい。「ポケモン天文台」限定のTシャツ、フィギュア、カードなど、ここでしか手に入らないグッズが多数並ぶ。
「ポケモン天文台」は相模原市立博物館で2026年1月12日まで開催。その後、全国を巡回する予定だ。


















