女優の高石あかり(高ははしごだか)が主演を務める連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)が29日よりスタートする。本作は、小泉セツ&八雲(ラフカディオ・ハーン)夫妻をモデルにした物語。この2人を令和の時代に描く意義とは――。制作統括の橋爪國臣チーフ・プロデューサーとチーフ演出の村橋直樹氏に話を聞いた。

  • 連続テレビ小説『ばけばけ』ビジュアル

    連続テレビ小説『ばけばけ』ビジュアル

113作目の朝ドラとなる『ばけばけ』は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、怪談を愛する夫婦の何気ない日常を描く物語。小泉セツがモデルのヒロイン・松野トキを高石あかり、小泉八雲がモデルの夫レフカダ・ヘブンをトミー・バストウが演じ、脚本はふじきみつ彦氏が手掛ける。

橋爪氏は、テーマが決まる前に、まず脚本をふじき氏にお願いすることが決まったと明かす。

「僕が朝ドラをやるとなったときに、庶民や一般の人たちの話を描きたいと思ったんです。何か成し遂げた人というより、一般の人たちが普通に生きている話にしたいと思ったので、脚本をふじきさんにお願いしました」

そして、いろいろな人の伝記などを読んでリサーチする中で、4人まで候補を絞り、ふじき氏と相談しながら最終的に小泉セツをモデルにすることに決めた。

一般の人を描く物語ということで、「脚本のふじきさんの力がすごく大きい」と橋爪氏は語る。

「ふじきさんはごく普通の、何にもないことを何かあったかのように書かれる。普通の人からするとどうでもいいことだけど、めちゃめちゃ面白いみたいなことが書ける作家さんなので、そこに大きく寄っていると思います。ふじきさんの筆の凄さがすごく力になっていると思いますし、彼にしか書けない作品になっていると思います」

本作は、明治初期の物語。急速に西洋化が進む明治の日本の中で埋もれてきた名も無き人々の心の物語に光を当てていく。

橋爪氏は「今まで信じていたものが急に変わって混沌としている明治時代と現代は、細かいところを見ていくと似ているなという思いがあって、人々が右往左往していくところなど、とても現代と似ているなと思っていて、今の人たちに刺さるドラマになるのではないかと思いました」と語る。

あまり描くことの少ない時代に、村橋氏もやりがいを感じている。

「幕末の話や、そのあとの日清戦争・日露戦争に入っていく時代のことはよくやるんですけど、小泉八雲さん夫妻が生きた時代はその端境期なんです。日本人の価値観が大きく変わっていく時期なんですけど、みんなそこの歴史が飛んでいる。明治維新が起きたらみんな西洋化して現代人に近い感覚になったと思っている人が多くて、変わらなきゃいけない時代に流されていった人たちはあまり描かれないんです。僕と橋爪が一緒にやった大河ドラマ『青天を衝け』は、西洋化を牽引していった渋沢栄一さんを是としてドラマにしたので、僕はその逆の、そこに乗れずに歴史の影に隠れている人がどう生きたかというのをいつかやりたいと思っていたので、この時代ができるのは面白いなと思いながらやっています」

ただ、小泉八雲の人気故の葛藤もあるようで、橋爪氏は「小泉八雲さんの力がすごく強くて、いまだにものすごい数のファンの人たちがいて、どうしても小泉八雲さんの話なんでしょと思われているんですけど、私たちがやりたい狙いはそこではないという乖離をどうしようかなと思いながら制作しています。小泉八雲さんがどう(作品を)作っていくのかというところに注目されている人たちがいっぱいいると、そこには100%は応えられないだろうけど、ある程度は応えていかないとみんな満足してくれないだろうなというところもあって、その塩梅はとても気にしながら作っています」と打ち明けた。

(C)NHK