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――主人公の久部について、演じる菅田将暉さんは「自分勝手で人の話を聞かない」と三谷さんに言われたと聞きました。当て書きもされていると伺いましたが…

三谷:当て書きは誤解されやすいけど、菅田さん本人(の性格)に合わせているわけではありません。お会いしたのは昔、日本アカデミー賞の授賞式の時にトイレで並んだときくらいで、大河ドラマの時もお会いしていません(※三谷氏が脚本を書いた『鎌倉殿の13人』で、菅田将暉は源義経役)。だから今回の作品でようやくシッカリ話すようになったんです。でも、菅田さんが演じた義経を見たときに、いずれもっと複雑な役を演じるところを見てみたいと思った。いい人だけじゃなく、憎まれ役や嫌われ役も含めた多面性。それが久部という人物になりました。

――その久部と神木さん演じる蓬莱はどんな関係性ですか?

神木:久部さんは基本、僕の話を聞いてくれません(笑)。でも蓬莱にとっては初めて見るタイプの人間で、強引だけど新しい場所へ連れていってくれる期待感がある。暴走する久部に対して、どう距離を保つか考えながら演じています。本当に「話を聞かない人だな」と思いますね。

――菅田さんの新しい魅力を感じますか?

神木:感じます。菅田さんとは『コントが始まる』でも共演させていただいていますが、100%のパワーをずっと出し続ける姿は今回初めて見ました。普段ももちろん元気ですけど、今回は全力で言葉をぶつけてくる。久部としても、そして菅田さん自身も、僕ら全員を引っ張ってくれる大きな存在です。

三谷:84年当時はものすごく熱い時代。その色を背負っているのが久部であり、それを演じる菅田さんの熱量がドラマ全体を引っ張っている。横で冷静に見ているのが蓬莱。この2人のコンビは昔でいう勝新太郎さんと田村高廣さんのような関係ですね。

1984年の輝きを描くことで「現代へのメッセージに」

――改めてご自身をモチーフにした人物を登場させる狙い、そして今この時代に1984年を舞台にする意義というのは何でしょうか?

三谷:僕は20代後半、渋谷のストリップ劇場でバイトをしていて、ショーの合間にやるコントの台本を書いていました。その自分を投影させた人物を出すことで、当時を描きたかったんです。今は不安なことがいろいろあって、固定概念がどんどん崩されていく時代。それは悪いことだとは思わないんですけども、先がどうなるか分からない不安は常にあるように感じます。絶対永遠に続くと思っていたものが、どんどん崩れていく。でも80年代は、永遠の夢を信じて熱気にあふれていた。あの輝きを描くことで、現代の人たちへのメッセージやエールになればと思いました。

――神木さんは1984年という時代をどう受け止めましたか?

神木:僕は1993年生まれで知らない時代ですが、現場に入って「元気だな」と思いました。新しい商品や出来事に「何これ! どうやって使うの!?」と盛り上がる。全てを初めて体験するような新鮮さ。今は情報があふれていて、新しいものも「これはあれの応用でしょ」と思えてしまう。でも当時はすべてが未知で、目がキラキラしていた時代だと思います。

――1984年当時の渋谷を再現した巨大なオープンセットを建てての撮影ですが、いかがでしたか?

三谷:本当にタイムスリップした感覚でした。ストリップ劇場や控室、芸人と稽古したアパートまで完全に再現されていた。あの頃の自分に「これがいずれドラマになるんだよ」と教えてあげたいくらい。物語は9割フィクションですが、舞台設定は自分の体験に近いです。

神木:夜のシーン、道路を濡らしてネオンが反射していたのがすごくきれいでした。色使いも今と違っていて、ノスタルジックでネオ東京のよう。怪しげな路地には危険も楽しみも潜んでいて、そのミステリアスさが魅力的でした。絶対映えると思って、たくさん写真を撮りました(笑)