連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)の最終回を見る会が26日、高知県立県民文化ホールで開催され、ゲストとして柳井嵩(北村匠海)の母・登美子役の松嶋菜々子、脚本の中園ミホ氏、チーフ演出の柳川強氏が登壇。柳川氏が、蘭子(河合優実)と八木信之介(妻夫木聡)の名シーンの撮影秘話を明かした。

  • 「『あんぱん』最終回を見る会」に登壇したチーフ演出の柳川強氏

    「『あんぱん』最終回を見る会」に登壇したチーフ演出の柳川強氏

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。暢さんがモデルのヒロイン・朝田(柳井)のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じた。

本作では、結ばれるか否か、八木と蘭子のエモーショナルなシーンも注目を集めた。第127回で自分の戦争体験を蘭子に語り、慟哭する八木を蘭子が抱き寄せるシーンに心を鷲づかみにされた人も多かったはず。さらに129回では、八木から蘭子にプロポーズととれる指輪の入ったサプライズのカードがプレゼントされ、SNSは大騒ぎとなった。

この日のイベントでは、112回で蘭子が八木に傘を渡す時に、八木が蘭子の手を握ったシーンについての裏話が語られた。

柳川氏は「これ、どうなんですか? とよく聞かれるんですよ」と言うと、「リハーサルでいきなり妻夫木さんが手をギュッとやったんです。僕はそこを想定していなくて。でも、その瞬間に後ろを見ると、女性スタッフがキャー!と騒いでいて、これもいいのかなと。今まで八木さんは気持ちを封印してきた人なので、その気持ちが蘭子に対していきなり出るということもありなのかなと思って、そういう風にしました。また、八木さんがギュッと来たから、それで蘭子も感情が一気に出るってことがあったんじゃないかなと思ったんです」と明かした。

このシーンでは、照明の都合上、妻夫木側からのショット、河合からのショットと2パターンが必要だったため、本番では柳川氏から2人にこっそり演出を加えたという。

「妻夫木さんに『今までに見せたことのない蘭子の表情を撮りたいから、蘭子側から撮るときに、ギュッと握ってと言ったんです。逆に河合さんにも『八木も同じ表情ばっかりだと面白くないから、ちょっと変わったことをやってほしい』という感じのことをお伝えしたかと。そうしたら本番で、あの手のやりとりになりました」とのことで、妻夫木たちがそれぞれ手を動かすという熱いシーンになった。

そして、柳川氏は「何がやりたかったかというと、傘を俯瞰で撮った時に、見ている人がどういう想像をされるかなと思って。抱き合っていると思いました? それともそのまま見つめ合っていると思いました?」と問いかけた上で、「ちゃんと指が動いているんです。そこは皆さんのご想像にお任せしようと思ったんですけど、僕は見つめ合っているという風にやっていました。お互いに気持ちが高まっている表情を撮りたかったので、あえてそういう仕掛けをしたシーンでした」と解説した。

それを聞いた中園氏は「私は『雨降りしきる』という1行しか書いてないんです。それだけのシーンなのに、いろいろあったんだなと思ってびっくりしました」と感想を語った。

八木が蘭子に指輪をプレゼントするシーンについても、脚本の初稿ではなかったそうで、中園氏は「蘭子が旅立っていくのを『待ってるよ』と見送るだけだったのに、カードについて具体的に『こういうことをしない?』とおっしゃってくれたので、そっち行きますか! と書いたシーンでした」と柳川氏のリクエストにより、脚本を書き換えたことを告白。

柳川氏が「2人にはやっぱり幸せになってほしかった。戦争を引きずっていて、(戦死した)豪ちゃん、豪ちゃんと言ったままでは、蘭子も浮かばれないし、家族を残してそのまま1人でいくというのもあれだし、彼らには幸せになってほしいなという願望と希望があったので、そうしました」と思いを明かすと、会場から拍手が沸き起こった。

(C)NHK