連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)の最終回を見る会が26日、高知県立県民文化ホールで開催。ゲストとして柳井嵩(北村匠海)の母・登美子役の松嶋菜々子、脚本の中園ミホ氏、チーフ演出の柳川強氏が登壇し、最終回の感想や撮影秘話を語り合った。

「『あんぱん』最終回を見る会」に登壇した松嶋菜々子

「『あんぱん』最終回を見る会」に登壇した松嶋菜々子

強烈な登美子の言動も理解「役柄に必要なセリフ」「納得して」

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。暢さんがモデルのヒロイン・朝田(柳井)のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じた。

嵩と千尋(中沢元紀)の母である登美子は、教養が豊かで見目麗しいが、とにかく勝ち気で言いたいことをずばりと口に出す性格である。そんな登美子について、視聴者から「次は何を言うんだろうとひやひやしながら見ていました。松嶋さんご自身は演じられて、そのように思うことはありましたか?」という質問が入ると、松嶋は「役柄に必要なセリフなので、特に迷いはなく、気持ちよく言い切れる感じでやらせていただきました」と笑顔で答えた。

そして、松嶋は「監督ともよく話しましたし、時代背景もありましたし。もちろん現代の私には、子供を置いて出ていくというのは考えられなかったのですが」とした上で「子供にとって一番大事なことは、お母さんがそばにいることで、そこもわかります。でも、それさえも許さない時代ということで、私としては納得して演じていました」とキッパリ言い切った。

とはいえ、SNSでは一時期、登美子の身勝手なふるまいにバッシングが入ったり、若手スタッフの間でも、このキャラクターで大丈夫か? という意見も出ていたそうだ。

松嶋も登美子のキャラクターについて「私の印象としては、北村匠海くんがリハーサルテストをやった後に本当に素で『無理っす』と監督に訴えていたことが印象に残っています」と笑いながら言うと、会場でもドッと笑いが起きる。

松嶋は続けて「たぶんその後もさらに、登美子が強烈なことを言うのに、それでも嵩が『一緒に住まないか』と言わなきゃいけなくて、その言葉が出るか出ないかってことだったようです」と言うと、柳川氏も「そうそう。『無理っす』と言っていました」と笑いながら振り返った。

中園ミホ、松嶋菜々子に感謝「いい人に見せようとかは、これっぽっちもない」

そんな登美子だが、中園氏はフジテレビ系ドラマ『やまとなでしこ』(2000)などで組んでいて信頼を寄せている松嶋に当て書きをして書いたそうで、「まだ松嶋さんが引き受けてくださるかどうかもわからない時から、松嶋さんの姿や表情や声をありありと思い浮かべて書いてたんですよ」と明かし、「ただ、特に若い男性のスタッフから『こんな母親、ちょっとひどすぎます』と打ち合わせ中に言われ、私もくじけそうになったことがあったんです」と告白。

松嶋自身は、ひるむことなく登美子というキャラクターを脚本通りに演じていったが、そんな松嶋について中園氏は「『こんなセリフを言ったら私が悪い人に見えるじゃないですか』という女優さんはいっぱいいらっしゃるんですが、松嶋さんはそういうことを一切おっしゃらないんです」と松嶋に感謝する。

また、中園氏は「でも私はむしろ、登美子はきれいごとも言わないし、なんか清々しくて。実は母親ってけっこうそういうところがあるかなと。息子が医者になってくれたらうれしいだろうし、漫画家になるって言われたら『え!?』と思うかもしれません。有名な百貨店に勤めてくれたら、自分も安くお買い物ができるかもしれないと思ってしまうかも」と登美子をフォロー。

その後、回を追うごとに、登美子については好意的な意見が増えていったそうで「最初は心配していたのですが、だんだん『登美子はどんどん本音を言ってくれて気持ちいい』という意見が、特に女性からいただくようになりました。また、松嶋さんに途中で『もうちょっと柔らかくしましょうか?』とお伝えしたら『いえ、このままで。どうぞお気兼ねなくやってください』と言ってくださいました」と笑顔で明かすと、会場から拍手が上がる。

松嶋も「毒舌を吐かないシーンもありましたが、自分でも物足りなさを感じました」と言うと、また会場からどっと拍手が起こった。

また、中園脚本の魅力について松嶋は「すごくキャラクターがしっかりしていて、言いたいことをスパッと言う。周りがどう思おうと、スパッとそれをセリフにするという心地よさがあります。役を描き切るところが、中園先生は本当に素晴らしいと思っています」と絶賛。

中園氏もそれを受け「松嶋さんの素晴らしい点は、いい人に見せようとかは、これっぽっちもないところです。この役だから、こういうセリフでいいんじゃないですかと言ってくださる。『やまとなでしこ』の時も最初は『こんなひどいヒロイン、誰も見ませんよ』という声もありました。でも、ふたを開けてみたら、逆にピュアで思ったことをはっきり言うから気持ちいいという女性がすごく賛同してくださった。それは、松嶋さんだから成立したキャラクターだと思います」と松嶋を称えた。

(C)NHK