• 夏井いつき氏 (C)MBS

――では、改めて番組の500回を振り返らせてください。MCの浜田さんと並ぶ番組の顔とも言える夏井先生の最初の印象はいかがでしたか?

俳句の解説が鮮やかなのはご承知の通りですが、トーク力に驚きました。俳句を背負って解説する姿は『プレバト!!』を代表的するシーンですが、もしも夏井先生のトークがグダグダだったらあのセットではやれてないです。細かく編集して他の人のリアクションを挟まないといけないから。でもそんな編集をすると、間違いなく視聴者は、後ろに貼られた俳句を認識できません。あのセットは夏井先生のライブ感があってこそ成立してるんです。

――よく浜田さんのMCはライブ感があって収録が早く終わると言われますが、そこに通じるところがありますね。このおふたりの親和性も想定外でしたか?

そうですね。かつて教師だった夏井先生のライブ感のルーツは学校の授業です。ずっと文芸で活躍してきた夏井先生と、お笑いやバラエティ番組で歴史を作り続けてきた浜田さん、本来は合わなそうだけど息がピッタリなのはライブ感という共通点があるからだと思います。スタッフも生放送くらいの感覚で食らいついていたら500回まで到達できた。そんな感じです。あ、ちなみに今度放送する500回スペシャルの水彩画コーナーはオンエア尺が1時間4分ですけど、収録尺は55分でした(笑)

――浜田さんのMCを昔から見ていて大好きなのは、梅宮辰夫さんとか中尾彬さんとか、自分より上の立場の人に果敢にツッコんだりしていくところなのですが、キャリアを重ねてその対象がだんだん少なくなっていくじゃないですか。そんな中で、『プレバト!!』では、例えば絵が上手い芸能人という立場に対して、決して絵が得意ではない浜田さんが果敢にイジっていく。この構図で、浜田さんがより生き生きとしている感じがあるんです。

俳句を添削している時に、「この句はこの言葉から始めたほうがいい」って浜田さんがバンバン言い当てたりするじゃないですか。夏井先生の俳句のイロハを一番聞いているのは、実は浜田さんなんです。でも、絶対に浜田さんは作らない。テレビショーとして番組を盛り上げることに徹していることが、『プレバト!!』にとってすごく大切で、創作の苦労をあえて経験しないことが、キレッキレな進行につながっていると思います。

――今年は一時期お休みされていましたが、復帰後で感じる変化はありますか?

復帰明けの最初のタイトルコールは、本当に脳みそが揺れました(笑)。浜田さんがMCを務める番組はどれも、盛り上がっている中に直角の折り目がパリッと入る感じがするし、タイトルコールでスタジオの空気が跳ね上がります。でもあの時のタイトルコールはさらに格別でした。感覚で言うと、「0.1ミリもずれることなく本当にピンマイクの芯を捉えた声って、これなんだ!」って思ったというか。感動しちゃって、しばらく余韻に浸ってました(笑)

  • MCの清水麻椰アナ(左)と浜田雅功 (C)MBS

芸能人の「負けず嫌い」気質に乗っかった

――『プレバト!!』を立ち上げて、最初に手応えをつかんだのは、どのタイミングでしょうか。

俳句の添削のビフォー・アフターが面白かったのが、発見でした。それまでは言葉の表現力の良し悪しをランキング順にすることが番組の最も面白いところだと思っていたのですが、そこにもう1つビフォー・アフターの要素が乗っかるというのが最初の収録で分かったんです。先生がお手本を披露すると、芸能人の皆さんは「すごい」って唸るし、視聴者の反応も良かった。この番組がやっていける手応えを持ちました。

――「芸能人が知られざる特技を見せる」という大きな括り方をすると、『新春かくし芸大会』(フジテレビ)という番組がありましたが、そこから『プレバト!!』が進化しているのは、まさに「ビフォー・アフター」だと思っていまして。『かくし芸』が完成披露までのドキュメンタリーであったのに対し、『プレバト!!』は一流の先生がお手本を見せるとガラッと良くなって、なおかつ詳細な得点を出して査定するという納得感やリアル感が、今の視聴者に合っているのではないかと。

そうですね。一流の先生たちがそのジャンルを背負っているから、その結果に対して僕らは当然何も言えません。だからリアルが伝わっているのだと思います。査定がリアルだから芸能人も褒められるとうれしいんですよね。これは最初に想定していた以上のことだったのですが、あんなに人気の芸能人たちも、褒められるとうれしいんです(笑)

――なぜここまで本気になるのかを以前の取材で伺った時、最下位を面白がるのではなく、一番を決めるからだと聞きましたが、それに加えて、芸能人の方は相当厳しい競争を勝ち抜いてきた人たちだから、やはり根底に「負けず嫌い」というものがあるのでしょうか。

みなさんとっても負けず嫌いです。これは(千原)ジュニアさんに言われたんですけど、芸能人はみんな負けず嫌いだから生き残っているわけで、その特性に乗っかって上手く番組にしているなって(笑)

――皆さんお忙しい中でも作品の完成までにすごく時間をかけていて、手を抜く人がいないですよね。

40時間、50時間の制作工程を、VTRで4分にしてしまう番組なのは、もちろん本当に申し訳ないです(笑)。でも、50時間かけた労力は、作品を見たら絶対に伝わりますよね。制作工程のVTR尺を1~2分延ばしたところで、大差はないし、ディレクターが感情移入しすぎると視聴者はかえって引いてしまうし(笑)

――それこそ『かくし芸』なんて、本番より稽古のドキュメントVTRのほうが長かったと思います。

昨日編集したVTRなんて、「まずはこの人を査定」と言ってから作品オープンまで、20秒でしたから(笑)。でも、出演者から「制作工程をもっと長く放送してほしい」と言われたことは、13年で一度もないし、先生がどこを褒めているのかを伝えることに時間を使ったほうが、出演者の感情が表れて番組が楽しくなります。もっと苦労しているところを見せる構成にしていたら視聴者に見てもらえていないような気がします。このVTRの尺の配分も、浜田さんのテンポ感に合った番組になっていると思います。