いまだに視聴率のみを前提にして「夏枯れ」という言葉を使うメディアもいるが、フラットな目線で見れば今夏は「不作」とは言えないほど多彩な作品がそろった。児童相談所、スクールロイヤー、韓国制作会社との共同制作、ヒット映画続編、夫婦間のラブサスペンス、『昼顔』チーム再集結、3年連続の『占拠』シリーズ、総合診療科……「好みの作品を選ぶ楽しみがあるクール」と言っていいのではないか。
主要作がそろったこのタイミングで「本当に質が高くて、今後期待できる作品」を唯一のドラマ解説者・木村隆志がピックアップ。今回の第1弾では、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで2025年夏ドラマ主要23作の傾向とおすすめ5作(第1弾)、後日掲載の第2弾では、目安の採点付き全作レビューを挙げていく。
2025年夏ドラマの主な傾向は、【[1]フレッシュなキャストと夏らしさ [2]夏休み中の子どもに向けた脚本・演出】の2つ。
傾向[1]フレッシュなキャストと夏らしさ
今夏は連ドラ初主演の當真あみ(18)が『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)を筆頭に、清原果耶(23)が『初恋DOGs』(TBS系)、福原遥(26)が『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)、高橋海人(26)が『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)で主演を務める。
さらに森川葵(30)が『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジ系)で民放ゴールデン・プライム帯初主演、磯村勇斗(32)が『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジ系)で民放連ドラ初主演、中村アン(37)が『こんばんは、朝山家です。』(ABC・テレビ朝日系)でゴールデン・プライム帯初主演。
その他でもゴールデン・プライム帯ドラマ初出演のラウール(22)が『愛の、がっこう。』(フジ系)で準主演を務めるなど、助演も含めてフレッシュなキャストの作品が目立つ。
また、局を代表するフジ・月9ドラマの『明日はもっと、いい日になる』、TBS・日曜劇場の『19番目のカルテ』(TBS系)で海辺のシーンが盛り込まれているほか、『僕達はまだその星の校則を知らない』では星空など、各作品に夏らしい映像が多用されている。作品ジャンルはさまざまだが、制作サイドが「いかに夏ドラマらしさを感じさせるか」を踏まえているかがわかるだろう。
それでも夏の代名詞だった『ビーチボーイズ』(フジ系)、『WATER BOYS』シリーズ(フジ系)、近年では2年前に放送された『真夏のシンデレラ』(フジ系)のような“夏”を軸に据えたド真ん中の作品は見当たらない。夏ドラマは最も季節性を感じさせられるだけに、来夏は思い切ったチャレンジも見たいところだ。
傾向[2]夏休み中の子どもに向けた脚本・演出
かつて「夏は学園ドラマの季節」と言われたが、2010年代ごろから激減し、時折放送されるのみとなっていた。しかし、今夏は王道の部活青春ドラマ『ちはやふる-めぐり-』のほか、スクールロイヤーを主人公に据えた『僕達はまだその星の校則を知らない』の2作が放送されている。
さらに『愛の、がっこう』の主人公は高校教師であり、メインはピュアなラブストーリーだが学園内のシーンも多い。そしてもう1つの注目は児童相談所が舞台の『明日はもっと、いい日になる』。学園が舞台ではないもののメインは子どもであり、週替わりで多くの子役が出演している。これほど子どもをフィーチャーするのは「夏休みの時期だけに親子で見てもらいたい」という狙いだろう。
特筆すべきは、『ちはやふる-めぐり-』と『僕達はまだその星の校則を知らない』の主要生徒役が高校生に近い年齢層のキャスティングであること。
『ちはやふる-めぐり-』は、當真あみ(18)、齋藤潤(18)、山時聡真(20)、嵐莉菜(21)、高村佳偉人(17)、坂元愛登(16)、原菜乃華(21)、藤原大祐(21)、大西利空(19)。
『僕達はまだその星の校則を知らない』は、日高由起刀(21)、南琴奈(19)、日向亘(21)、中野有紗(20)、月島琉衣(17)、近藤華(17)、越山敬達(16)、菊池姫奈(20)、のせりん(22)、北里琉(16)、栄莉弥(19)。
どちらも現時点での人気優先ではなく、高校生に見える上に実力のあるキャストをそろえた様子がうかがえる。このキャスティングは「高校のリアルなムードを映像表現するため」だけでなく、「同世代の視聴者を引きつけるため」のものだろう。「視聴率確保のために学園ドラマでありながら人気優先で20代中盤の俳優に偏りがちだった」ころからの健全な変化が見られる。
これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『僕達はまだその星の校則を知らない』『ちはやふる-めぐり-』『明日はもっと、いい日になる』の3作。
『僕達はまだその星の校則を知らない』は回を追うごとに扱うテーマのリアリティが増し、それをスクールロイヤーのフラットな目線から紐解く流れが絶妙。学校問題を扱いながら主人公も生徒も穏やかなキャラクターがそろい、癒しすら感じられる。
『ちはやふる-めぐり-』は王道の部活ドラマとして真っ向勝負。ヒット映画を生かし、原作者の協力を得たビジネス戦略は見事で、現役高校生はもちろん10年前とクロスオーバーした展開にも期待がかかる。
『明日はもっと、いい日になる』は、この時期に放送すべきテーマを真摯に扱った作品。“きれいごと”を丁寧に扱い、親や児童福祉司にとっての光のような物語に仕上がっている。
さらに『愛の、がっこう。』は井上由美子のヒリヒリした脚本と西谷弘監督の映像美が際立ち、一周回った純愛を感じる仕上がりに。『しあわせな結婚』(テレ朝系)はゆったりとしたテンポとシニカルな笑いで“夫婦”を問う大人のムード。長編サスペンス&ミステリー好きは『誘拐の日』(テレ朝系)も楽しめるだろう。
「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局の動画配信サービスなどでチェックしてみてはいかがだろうか。
2025年夏ドラマ オススメ5作
- No.1 僕達はまだその星の校則を知らない (フジ系 月曜22時)
- No.2 ちはやふる -めぐり- (日テレ系 水曜22時)
- No.3 明日はもっと、いい日になる (フジ系 月曜21時)
- No.4 愛の、がっこう。 (フジ系 木曜22時)
- No.5 しあわせな結婚 (テレ朝系 木曜21時)



