セミナーではっきり伝えるのは「うまい話はない」ということ

――学校で金融教育が必修化されましたが、学校教育だけでは補いきれないと感じる部分はありますか?

投資というのは、実際にやってみないとわからないことがほとんどです。教科書を読むだけで教えられるかと言われると、正直に言って難しいというか 、無理だと思います。株について教えることはできても、「株を買うために何が必要か」といった具体的な準備まではできません。そこに我々の役割があると感じています。

実際、保護者様向けにどで 説明会を開き、そこから子ども向けの授業に繋げる取り組みもあります。しかし先生たちは教科書や資料に頼るしかなく、変動がある投資の実態を教えるのは難しいと思います。

例えば、株価がずっと上がり続けることはなく、必ずどこかで急落があります。そういったときにどう対処するか、どう心構えを持つかといったことは、経験がなければわかりません。

  • オンラインで実施された金融教育の講義画面より。「ローリスク・ハイリターンの“おいしい話”なんてない!」と説明する小川氏

――金融知識の不足が、投資詐欺などのトラブルに巻き込まれる原因になるとも言われていますよね。

投資=儲かるという安易なイメージだけで始めてしまう人も、最近は少なくありません。もちろん、それはそれで悪くないと思いますが、長い目で見ると、どんな投資方法でも必ずリスクはあります。だから、長期投資や積立で分散して買うことに意味がある。なので、「なぜ積立投資なのか」「なぜ長期投資が重要なのか」は、セミナーでもしっかり説明するようにしていますね。

――セミナーでは他に、どのようなことを特に大切にして伝えられているんですか?

まず、「うまい話はない」とはっきり伝えることを重視しています。詐欺防止のためにも、すごく大事なポイントですね。実際の詐欺で使われた広告のイメージや、似たような偽物の広告があることを例に出して、「こういうことが本当にあるので気を付けてください」というところから話を始めます。

例えば、我々が関わったCMの画像を勝手に使われたりするケースもあって、本当にやめてほしいのですが……そういう現実があるんです。

――「新NISA」など制度が複雑なテーマを扱う際、どのような工夫で受講者にわかりやすく伝えていますか?

正直に言うと、「新NISAのセミナー」と言いながらも、NISA制度そのものの細かい説明はあまりしません。というのも、NISAという言葉自体は多くの人が知っていて、「なんかメリットがあるらしい」という程度には理解しているからです。なのに、まだ始めていない人がいるわけです。

つまり、問題は「NISAがわからない」ことではなくて、「どう始めたらいいかわからない」、「次に何をすればいいかわからない」、あるいは「損をするかもしれない」という不安があるからじゃないかと思うんです。

――確かに、そうかもしれません。

ただ、今回の新NISAについては、損をする可能性がかなり減ったと感じています。ゼロではありませんが、かなり薄まりました。一生涯保有できる制度になったことで、長期分散運用に本当に役立つ仕組みになったからです。この点についてはしっかり説明していますね。

なぜ投資をする必要があるかをしっかり伝える必要がある

――これまでに累計1,200回以上開催してきた金融セミナーですが、その背景には、どんな問題意識があるのでしょうか。しかも、収益に直結しにくい部分もあると思います。それでも取り組む理由について教えてください。

ネット証券という特性上、『すべて自己責任で自由に取引する』という印象を持たれることも少なくありません。実際にその通りですが、「場だけ提供するからあとはご自由にどうぞ」というスタンスでは終わらせたくないんです。

「やりたいけど始められない人」や、「少し興味はあるけど行動に移せない人」、さらには「そもそも投資に興味がない人たち」も含めて、もっと裾野を広げていきたい。だからこそ、サポートが必要なんです。サイトの使い方はもちろん、「なぜ投資をする必要があるのか?」という根本的な部分を伝えることが大事だと思っています。

――金融教育を民間企業がやることの意義を、どのように捉えていますか?

職場や学校といったコミュニティで、「(投資を)やりなさい」って義務的には言えないと思うんです。もちろん、企業であれば従業員に対し、福利厚生の一環として奨励金を出したりして、後押しすることはできると思います。でも「絶対やりなさい」とまでは言えないし、その線引きって難しいところなんですよね。

例えば、証券口座の開設方法を教えるってなると、もうそれは「勧誘」に当たっちゃうんです。なので、我々のような資格を持っていない人たちが話せる範囲は限られていて、例えば「物価が上がるとこうなる」「預金金利がこうだから、実質賃金はこうなる」みたいな経済の話や、「結婚するとこれくらいお金がかかる」「出産だとこれくらいかかる」みたいなライフプランの話くらいで、どうしても止まってしまうんです。

――確かに、そこまでの話を聞く機会は多い気がします。

もちろん、そういう基礎的な情報は大事なんですけど、いざ「わかった、やってみよう!」となったときに、「じゃあ何をすればいいの?」という具体的な部分は、我々がサポートしなければいけません。

別に証券会社の口座を開けという話ではなく、例えば「口座開設には本人確認書類が必要で、こういう手続きをします」とか、「入金したお金の範囲内でこんな商品が買えるんですよ」というところまで説明できて初めて、次のアクションに繋がると思うんです。

だから、「やりましょう!」で終わるんじゃなくて、その後のサポートも含めて、きちんと説明する。それが私たちの役割であり、意義だと思っています。