前作から11年の時を経て復活したフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer・FODで見逃し配信))。小泉今日子演じるテレビ局のプロデューサー・吉野千明と、中井貴一演じる市役所で働く公務員・長倉和平の恋を描いたロマンチック&ホームコメディで、物語の舞台である古都・鎌倉の味わい深い情景も見どころの一つだ。

この世界観を構成する大きな要素が、スタジオセット。フジテレビ湾岸スタジオ内に、鎌倉の雰囲気満載の古民家セットを建てて撮影が行われている。第1シリーズからデザインを手がけた塩入隆史氏に、文字通り“舞台裏”を聞いた――。

  • 長倉家のダイニング=『続・続・最後から二番目の恋』第9話より (C)フジテレビ

    長倉家のダイニング=『続・続・最後から二番目の恋』第9話より (C)フジテレビ

11年の時をつなぐ小道具たち

まずは、同シリーズの立ち上げ時に、ドラマの象徴的なシーンである長倉家のリビング・ダイニング兼「カフェ・ナガクラ」のセットをどのように作り上げたのかを聞いた。

「最初のシリーズは宮本(理江子)監督でしたが、鎌倉オールロケでやりたいと言っていたんです。すでに監督はいいカフェを見つけてきていました」(塩入氏、以下同)

そのモデルが、実在する「cafe坂の下」(現在は「サカノシタ」)。しかしロケハンに行くと、「そこでロケをやるのは無理だと分かって、それならセットで作ろうということになりました」と方針転換し、「cafe坂の下」と似たような感じにしてほしいというオーダーを受けた。

そして11年ぶりとなった今作は、「楢木野(礼)監督から“変に変えないでほしい”と言われました。岡田(恵和)さんの台本も11年の時を経た今の主人公を描いているので、主人公たちの今に沿ったセットにしてほしい」と発注を受け、「“下手に変えるのはやめよう”というのがコンセプトでした。つまり 11年間待ってくれていた視聴者の方が見て、“帰ってきたんだ”と思ってくれるようなイメージです」と設定。

その中でも、「装飾に関しては、例えば、敷物が11年前と一緒だったらおかしいので、そういうところは変えました。昔に忠実に、ただ 11年の時の流れで残してあるものも変わったものも共存させよう。それでも、雰囲気は変えないように」とブラッシュアップした。

ほかにも、「あまり話の中では触れられていないのですが、カフェ・ナガクラの入口の方にお土産コーナーがあるんです。装飾スタッフが実際に鎌倉のお土産屋さんとタイアップを取って、全部鎌倉に売っているものを並べています」といい、こだわりがうかがえる。

以前作った「カフェ・ナガクラ」の店のカードや看板は保存されていたそうで、「よく取っておいてくれたと感心しました。そういうのがあるとやっぱり“帰ってきた”って感じがしますよね」と、11年の時をつないでいる。

真平の趣味の要素が減り、えりなの作品を配置

長倉家のスタジオセットでの一番大きな変化は、和平の娘・えりな(白本彩奈)の海ゴミアート作品だろう。「当時小学生だったえりなが美大を卒業していて。店の中に作品をフィーチャーしたのですが、結構自然に溶け込みました」。

そもそも「カフェ・ナガクラ」は和平の弟・真平(坂口憲二)の店。「以前は、真平の趣味でハワイやサーフィンを意識した海の要素を加えていましたが、今回はそれが半分ぐらいに減って、えりなの作品が足されました」という。

その作品は、実際に活動する海ゴミクリエイター・高梨新一氏の工房を訪ねて、「ごっそりお借りしました」。高梨氏も、えりな同様に作品を販売していないそうで、「“作品を売ってしまうと、買った人しか見ることができないから”という考え方も、反映させていただきました」と設定に生かされている。

このように心がけて作り上げた長倉家のセットには、どんな思いが込められているのか。

「僕は元々、セットデザインはシンプルイズベストだと思っているんです。作りすぎるのがあまり好きではなくて。それがこの作品に合っているかもしれないですね。長倉家も余計なことはしない、目立つようなことはしない、と意識しています」