小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer、FODで配信)の第9話が、9日に放送された。

鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。

今回決着した和平への“市長打診”だが、まさかここまで巧みに展開され、その心情が丁寧に描写され、何よりこんなにも大きな感動をもたらすエピソードに着地するとは、誰も思いもしなかっただろう。

  • 『続・続・最後から二番目の恋』第9話より (C)フジテレビ

    『続・続・最後から二番目の恋』第9話より (C)フジテレビ

返答を引き延ばしたことによる効果

そもそも和平への“市長打診”は、“何も起こらない”がアイデンティティーの今作に少しだけ波風を立てるエッジであり、前シリーズに登場した伊佐山市長(柴田理恵)を今回もまた効果的に顔を出させるための“ギャグ”のようなものだと思っていた。

つまり、市長打診に翻ろうされる和平のドタバタと、それを知った千明や長倉家の“笑い”が少しでも描ければよいのであり、現実に和平が市長になる、もしくは市長になってほしいとは視聴者の誰も思っていなかったはずだ。だが、市長打診の返答を伊佐山市長の誕生日までと“引き延ばした”ことが実に効果的であった。

“引き延ばした”ことは、ドラマの縦軸を増やし“引き”にも有効だったのは当然だが、何より「市長になったら?」を、和平とともに視聴者にもじっくり考えさせられたことが大きかった。和平自身が市長になる妄想をし、まんざらでもないと思わせるシーンは笑いにもつながったし、視聴者にとっても和平の市長を“あり”と思わせた。その時間の長さによって、和平の鎌倉に対する真摯(しんし)な思いが十二分に伝わり、和平が市長になった“もしも”を想像することでワクワクできてしまう。「和平は市長になるに違いない!」と思うまでに至ったのだ。

千明が和平のことを何でも分かっているからこそ

そんな市長打診に対する今回の決着は見事でしかなかった。

和平の市長打診に対する千明や長倉家のリアクションは、視聴者同様“ありえない”に他ならないのだから、そんな当たり前を見せては面白くない。そこで、“ありえない”はずのことなのに、なぜか千明ならばわかってしまう――なぜなら、千明は和平のことは何でも分かっている、思い合っているから――という意味を付け加えて“先読み”して当ててしまう展開は、まず最初に笑いがくるのだが、その後に2人の関係性が見え、沁みてくるという、得も言われぬ“良いシーン”であった。

しかもその“先読み”は、「和平のエプロン値段当て」という“いつもの丁々発止”を挟んだ上で、“市長打診”の決着をより大きなドラマチックへ変えるというもの。あの転じ方は、いつも通りを装いながら、大きな驚きをも味わうことができた。

また、市長を打診されたにもかかわらず断ったという報告は劇中でも言及されていたが、すでに終わった話であり報告しなくてもよい話だ。しかし、そこに和平の喜びと誇り、そして自慢があったと自ら語った場面は実に微笑ましく、視聴者にも“幸せのおすそ分け”をもらったようだった。

前回から続く万理子(内田有紀)の企画書が千明へ渡り、ドラマ制作チームに引き継がれていったように、千明の友人・啓子(森口博子)の“赤いジャケット”や、典子(飯島直子)の“捨てられなかった空き缶”のエピソードなど、今作をここまで長く楽しめ、キャラクターを愛することができるのは、シーズン1から連綿と“幸せのおすそ分け”が描かれているからなのだと、気付かされた回でもあった。

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