現在放送中の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で柳井嵩(北村匠海)の弟・千尋を演じている中沢元紀と土佐ことば指導を務める西村雄正が14日、高知県の高知工科大学講堂で開催されたトークショーに登壇し、舞台裏のエピソードを語り合った。

  • 「連続テレビ小説『あんぱん』トークショー in 香美市」に登壇した中沢元紀(左)と西村雄正

    「連続テレビ小説『あんぱん』トークショー in 香美市」に登壇した中沢元紀(左)と西村雄正

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じている。

中沢は、演じた千尋との共通点を問われて「僕自身も千尋と同じように、あまり自分が思っていることを積極的に発信していかないので、けっこう聞き役に回ることが多いです。そこは似ていると思います」と語る。

とても誠実で控えめな中沢の人柄は、北村たち共演者からも伝えられてきたが、西村も「(千尋という)役も好きだけど、元紀くんという人物が大好きだから、かなり過保護にするじゃないけど、ずっとイチャイチャしていました」とおちゃめに語り、会場は爆笑。

中沢も笑ってうなずきながら「そういう遊びというか、自由な時間が僕にとってはとても大切でした」と言うと、西村は「ずっと隣にいました。自分の言い方をほとんどそのまま当てているのが、千尋と寛先生(竹野内豊)なんです。自分が学生時代にしていたしゃべり口調を全部当てはめていたので、それを体現しないといけなかったから、一番難しかったはずです。でも、本当にナチュラルでした。たぶん高知の方ならわかると思いますが、すごいですよ」と感心していた。

中沢はうれしそうに「本当にありがとうございます」と感謝し、「集中しないといけないシーンの前とかは、逆に任せてくださったりしました。ずっとそばにいないようにしてくださったんです」と語ると、西村は「中沢くんは最初は土佐ことばが苦手でしたが、彼は猛練習をしたので、インしてからは本当に大丈夫だったんです。だからそういうシーンでは、視野には入らないけど、近くにいる感じでした」と振り返った。

  • 『あんぱん』場面写真 (C)NHK

さらに2人は、6月12日放送の第54回で、嵩と千尋が3年ぶりに再会し、小倉の旅館で思いをぶつけ合う胸熱のシーンの撮影秘話も明かした。

「3年間の月日を感じさせるくらいの声、軍人としての話し方を意識しました」と役作りについて述べた中沢。すると西村が「実はあのシーンって最初は全部土佐弁だったんです」と明かし、「でも、効果的な流れにするために、敢えて途中まで標準語にして、その後、完全にスイッチが入る時に土佐弁にしようと、1回台詞を直したんです。軍人言葉は標準語なので、千尋が軍人としてしっかりやってきているということもそこで描けるかなと思ったから。でも、兄貴と会うと、千尋は昔に戻りやすくなるかなということでそうしました」と説明した。

中沢も「自分の中でもけっこう感情が入ってから土佐ことばに変わることで、スイッチとしてよかったなと。つまり自分の気持ちを制御できづらくなると、慣れている土佐ことばになってしまう」と言うと、西村は「まさに土佐弁スイッチだったなと」とうなずいていた。