• 安達祐実

――やっと役が広がっていったと思えた転機になった作品がありましたら教えてください。

16~17歳頃に出演したNHKの大河ドラマ『元禄繚乱』(1999)で大石内蔵助の妾の役を演じさせてもらって。それまで私は、男の子でも女の子でも演じられる役が多かったんです。『家なき子』もそうですが。でも、妾の役は女性にしかできない役だなと思い、そんな役が自分に来るんだという衝撃と、そこを託してくれたことへの感謝もありました。子役は女らしいところを見せると嫌悪感を抱かれることも多いんですけど、自分が女性であることを認めてくれるようになってきたのかなとも思いました。あと、フジテレビのドラマ『主に泣いてます』(2012)が“どコメディ”という感じで、ぶっ飛んだ役をやらせてもらったんですけど、そこまで振り切った役が初めてだったので、こういう方向もありなのかなと思いました。

――作品ごとにいろいろな学びがあると思いますが、『霧をはらう』の朗読を務められたことはどんな経験になりましたか?

声だけで何かを伝えるというのはすごく繊細な作業だなと思い、今まで俳優として表情とか動きとか、体に頼っていた部分が大きかったんだなと改めて気づき、ほかの作品をやるときも言葉を発するということをすごく意識するようになりました。

――『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』のりつ役にも生きそうですか?

『べらぼう』は江戸っ子の話口調で、あまり聞いたことがない言い回しが多くて。私は江戸っ子ですが、現代では使わない言葉が多いので「どういう意味だ?」と思いながら台本を読んでいるんですけど、小気味いい江戸っ子のテンポを意識したりということでは、このAudibleの経験もすごくつながっているなと思います。

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■安達祐実
1981年9月14日生まれ。東京都出身。2歳からキッズモデルとして活動を始め、94年の日本テレビ系ドラマ『家なき子』で本格的にブレイク。同作品の台詞は、新語・流行語大賞にも選ばれるなど社会現象となった。以降も幅広い役をこなす実力派俳優として数々のドラマ、映画に出演する他、ファッションブランドのプロデュース等、活動は多岐に渡る。
■『霧をはらう』
著者:雫井脩介 ナレーター:安達祐実
小児病棟で起きた点滴殺傷事件。4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が奪われた。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児の母親。献身的な看病のあまり、周囲との軋轢も生んでいた彼女は取り調べで自白するが、後に否認する。娘を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか? 弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む。