2番目に注目されたのは20時2分で、注目度74.0%。向こう傷の男が唐丸に接触するシーンだ。
本屋から出てきた唐丸をつけ狙う男がいる。その男の顔面には向こう傷が走っており、目つきには不気味な光が宿っていた。唐丸が人通りの少ない通りに入ったところで、「よう、久しぶりだな」と、男は後ろから声をかける。振り返った唐丸は、「ど…どなたさまで…おいら、何も覚えてないもんで…」ととぼけるが、動揺を隠せずその声は震えていた。どうやら2人は面識があるようだ。
「じゃあ教えてやろうか。おまえがどこの誰で、あの日何をしたのか」と言うこの男は、唐丸にとって招かれざる客なのだろう。男から逃れようと唐丸は走り出したが、追いかけてきた向こう傷の男に肩をつかまれ捕まってしまった。
「ただいま」しばらくして蔦屋へ戻ってきた唐丸だが、その声は暗かった。蔦重は「お使い、ありがとな」と返事をしたが、心ここにあらずである。版元になれないという絶望感からまだ立ち直れていない蔦重が、唐丸の様子がおかしいことに気づくことはなかった。
「わかりやすいくらいすげえ悪人」
このシーンは、唐丸に不幸をもたらす人物の登場に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
唐丸の身に異変が起こることは、前回の予告で明らかとなっていた。その原因となる人物・向こう傷の男は、ビジュアル的にもいかにもな風貌で唐丸を分かりやすく脅迫する。
SNSでも、「いかにも時代劇に出てくる悪役ってキャラだな」「骨までしゃぶりつくす典型だね」「もう、わかりやすいくらいすげえ悪人」と、向こう傷の男の型にハマり過ぎた悪役っぷりが話題となった。
向こう傷の男にゆすられた唐丸が「あんた、死罪になるよ」と、反論するシーンがあったが、この時代の「死罪」は斬首刑の一種で、庶民に執行されていた死刑の一つ。処刑後に死骸を試し斬りにされる上に、付加刑として財産が没収され、死体の埋葬や弔いも許されなかった。さらに重罪の場合は、馬に乗せ刑場まで連行される「引廻し」が追加されることもあった。当時の死刑は「下手人」「死罪」「獄門」「磔」「鋸(のこぎり)引き」「火焙り」の6つがあり、武士の場合は「切腹」が追加される。どれも御免こうむりたいものだ。
江戸時代後期では、死罪は死刑のうちで最も多く執行された。「公事方御定書」の規定では「追落(人を脅したり追いかけたりして、財布などを奪い取ること)」、土蔵を破る盗み、人妻との密通、十両以上の窃盗などが死罪に該当する。2人の会話から想像すると、唐丸の場合、年齢的に人妻との密通は考えにくいので、何か盗みを行った可能性が高いと考えられる。
向こう傷の男を演じた高木勝也は、太田プロダクションに所属する神奈川県出身の38歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマンの3大特撮出演を果たした俳優の1人として特撮界では有名。ウルトラマンではクールな隊長役、仮面ライダーでは冷徹ながらもコミカルな面のある悪役を演じ、その演技力の高さが注目されている。