東京商工リサーチは26日、「2023年度『全国第三セクター鉄道61社』経営動向調査」を公表した。全国の第三セクター鉄道運営会社のうち9割がコロナ禍を経て売上を伸ばした一方、旧国鉄から分離された路線等を承継した「旧国鉄転換型」三セク鉄道は9割が赤字であることがわかった。
三セク鉄道61社の2023年度売上高合計は2,329億4,500万円(前年度比9.3%増)で、198億7,200万円の増収。1社あたりの平均輸送人員は1,487万9,000人(前年度比9.3%増)で、前年度から127万人増加した。コロナ禍で停滞していた人流が回復したことに加え、インバウンドを含めた観光需要が寄与したとみられる。
鉄道会社の分類別に業績を見ると、売上高において「都市型三セク鉄道」(20社)が三セク鉄道全体の約8割を占めた。一方、国鉄民営化にともない旧国鉄から分離され、赤字路線などを継承した「旧国鉄転換型三セク鉄道」(30社)は、売上高・輸送人員ともに1割弱伸長したものの、損益面では56億6,600万円の経常赤字だったという。
会社別に見ると、経常赤字額のワーストは私鉄・新幹線転換型の肥薩おれんじ鉄道で、8億7,900万円の経常赤字に。次いで旧国鉄転換型の三陸鉄道が6億6,700万円の経常赤字となった。旧国鉄転換型30社のうち9割にあたる27社で経常赤字を抱えており、経常黒字は智頭急行、南阿蘇鉄道、信楽高原鐵道の3社のみだったという。
旧国鉄転換型三セク鉄道は営業キロ数が長く、不採算路線を分離継承した経緯もあり、多くは過疎化の進む地域を拠点にしていることなどから、株主である自治体からの援助なしでは経営が成り立たない状況が浮き彫りになった。
一方、三セク鉄道の売上高トップは、つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道で452億3,500万円(前年度比10.7%増)。コロナ禍が深刻だった2021年3月期の売上高が348億1,800万円まで落ち込み、大幅赤字を計上したが、その後は業績回復が鮮明となっている。2位は東京臨海高速鉄道(りんかい線)の179億2,700万円。以下、東葉高速鉄道、北総鉄道、横浜高速鉄道と続き、トップ10社すべてを都市型三セク鉄道が占めた。