2番目に注目されたのは20時35~36分で、注目度80.5%。まひろ(吉高由里子)が、道長より賜った扇から着想を得て、『源氏物語』第5帖「若紫」を書き上げるシーンだ。

曲水の宴の後、まひろは道長から贈られた檜扇を眺めていた。幼いころ逃げ出した小鳥を追う最中、偶然に道長と出会ったあの日のことを思い出す。どれだけ探しても小鳥が見つからずに、泣きそうになっていたまひろに「いかがした?」と声をかけてくれた道長。「小鳥を追っていった先で、出会ったあの人…あの幼い日から、恋しいあの人のそばでずっとずっと一緒に生きていられたら、一体どんな人生だっただろう」と、墨をすりながら、心の中でかなうことのない道長への想いを巡らせた。

庭に目をやると、小鳥が鳴いていた。あの時の小鳥にとてもよく似ている気がした。やがて小鳥は飛び立っていった。次の瞬間、まひろは天啓を得た。今しがたひらめいた情景を書き留めるため、まひろは急いで筆を走らせた。「『雀の子を犬君が逃がしてしまったの。籠をふせて閉じ込めておいたのに』と大層、悔しそうにしています」越前の和紙の上で、「若紫」が鮮やかに誕生した。

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『源氏物語』ファン勢のテンション爆上がり

このシーンは、『源氏物語』の中でも代表的なエピソード「若紫」の誕生に、『源氏物語』ファン勢のテンションが爆上がりしたと考えられる。

道長から贈られた檜扇をうれしそうに見つめるまひろ。幼いころの思い出を懐かしんでいるうちに、もし道長と結ばれていたらという妄想がどんどん募っていく。かなうことのなかった恋を物語でかなえようとするあたり、陰キャのまひろらしさがよく描かれている。

SNSでは、「とうとう若紫がでてきた!」「幼きまひろの初恋が若紫に続くなんて脚本が素晴らしい」「若紫が降りてきた!」と、若紫の爆誕に多くの反響があった。また、「若紫を読んだ時の道長が見たい!」と、道長が若紫を読んだ時の反応が楽しみという声もあった。

「若紫」は、『源氏物語』でも特に人気の高いエピソードの1つだ。古文の教科書にも掲載されているので知っている方も多いのではないだろうか。主人公・光源氏が北山で美しい少女、若紫と出会う。少女は光源氏が恋焦がれる藤壺によく似ており、光源氏は強く引き付けられる。光源氏は若紫を自分の理想の女性に育てたいと考えるが、若紫の祖母・尼君は若紫が幼すぎるため本気にしない。その後尼君が亡くなると光源氏は半ば強引に若紫を二条院に引き取り育て始めるというストーリーで、のちの物語の展開にも大きな影響を与える。

美しく幼い少女を自分好みの女性に育てるというテーマは現代においても衝撃的で長年にわたって多くの人々を惹き付けてきた。これまで『光る君へ』で描かれてきたまひろの人生が、今後どのように『源氏物語』に落とし込まれていくのか、非常に楽しみだ。