3番目に注目されたシーンは20時19分で、注目度79.4%。中宮・藤原彰子がまひろに心を開き始めるシーンだ。

まひろが局に遊びにきた弟・藤原惟規(高杉真宙)の相手をしていると、突然、中宮・藤原彰子が尋ねてきた。帝の正室の急な来訪にあわてながらも、「お呼びくだされば、参りましたのに」と、まひろは彰子を迎える。惟規はすばやく姿を消した。

「藤式部の局が見たいとおおせになって」傍らに侍る左衛門の内侍(菅野莉央)がそう言うと、「そなたはよい」と彰子は冷たく言い放った。「えっ?」驚く左衛門の内侍に、彰子は「下がれ」とだけつけ加えると、左衛門の内侍は何も言えず引き下がった。彰子はまひろと2人だけで話がしたいようだ。

「そなたの物語だが…面白さが分からぬ」すぐに彰子が切り出した。「さようでございますか…」「男たちの言っていることも分からぬし、光る君が何をしたいのかも分からぬ」どうやら年若い彰子には、男というものが理解できないようだ。「はあ…」まひろはどう答えればよいか思案した。

「帝はそなたの物語のどこに引かれておいでなのだろう」「さあ…帝のお心は計り知れませぬ。されど、私の願い、思い、来し方を膨らませて書いた物語が帝のお考えになることと、どこか重なったのやもしれませぬ」まひろは慎重に言葉を選ぶ。「ふ~ん…」彰子はまひろの言葉を懸命に理解しようとした。

すると「中宮様!」と、敦康親王の大きな声が聞こえた。彰子と遊びたいのだろう。「また来てよいか?」と尋ねる彰子に、まひろは「もちろんにございます」と、笑って答えた。

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「彰子さまには幸せになってほしい」

ここは、彰子の目を見張るほどの成長に、文字どおり視聴者の視線が集まったと考えられる。

これまでの彰子は、決めゼリフの「仰せのままに」のとおり、周囲にながされ、自分の感情を表に出すことなく生きてきた。しかし、敦康親王を引き取って育て、夫・一条天皇と炎の中で一時とはいえ触れ合い、そして(変わり者の)まひろと出会ったことで、徐々に自分らしさを取り戻しつつある。

ネット上では、「笑顔の彰子さまは最高に可愛らしい」「彰子さまの感情がだんだん表に出てくる様子がいい!」「彰子さまには幸せになってほしい」「『そなたはよい。下がれ』の圧、すごかった」「彰子さまが深窓の姫君から強い女性へ変わっていく道程に魅入られる」と、彰子の成長を喜ぶ多くの視聴者の声がアップされている。

『紫式部日記』によると、史実でも彰子は非常に遠慮がちな性格だったようだ。彰子が中宮となったのは他の后(きさき)や女御との競争が激しい時期だった。彼女は争いを避けるため、徹底して目立たないように振る舞っているうちに、自分の意志を周囲に伝えることができなくなってしまったようだ。闊達な皇后・藤原定子(高畑充希)とはまさに対照的といえる。

まひろは赤染衛門(凰稀かなめ)とともに、彰子に和歌や漢詩を指南した。その際、漢文のテキストとして一条天皇も好んだ『新楽府』を選んでいる。かつて、まひろは弟・藤原惟規に頼み込んで借りた『新楽府』を読んで勉強した。それがきっかけとなり、後に一条天皇と接点をもつに至ったが、彰子と一条天皇の仲を深めるきっかけにもなり得るのだろうか。

定子にとって清少納言(ファーストサマーウイカ)はかけがえのない存在だったが、藤式部も少しずつ彰子にとって大事な存在となりつつある。この後2人は同じ時間を過ごしていくうちに、より強い信頼関係が芽生えていくのだろう。