3番目に注目されたシーンは20時38分で、注目度74.2%。女院・藤原詮子(吉田羊)と一条天皇の決裂が露わとなるシーンだ。

「皇子様のご誕生まことにおめでとうございます」と、詮子はわが子である一条天皇に、皇子誕生の祝辞を述べた。「ありがとうございます」と返答する一条天皇だったが、実の親子であるはずの2人の会話はどこかよそよそしい。

「皇子様はいずれ東宮となられる身。お上のように優れた男子に育っていただかねばなりませぬ」という詮子の言葉には、一条天皇を立派に育て上げたという自負が感じられる。しかし、その言葉に対する一条天皇の答えは「朕は皇子が私のようになることを望みませぬ」と、およそ詮子が想定していないものだった。「え?」と絶句する詮子に、「朕は己を優れた帝だとも思ってはおりませぬ」と一条天皇は追い打ちをかける。愛する息子の言葉に、詮子は動揺を隠せず、「なんと…私が手塩にかけてお育て申し上げたお上です。優れた帝でないはずはございませぬ」と声を震わせる。

一条天皇も次第に感情的になり、「朕は中宮一人幸せにはできぬのですよ」と声を荒げた。言葉に詰まった詮子は「それは…そもそもあちらの家が…」と反論するが、感情を抑えられなくなった一条天皇は「朕は母上の仰せのまま生きてまいりました。そして今公卿たちに後ろ指をさされる帝になっております」と、はじめて母に心情をさらした。詮子の感情もむき出しとなり、「ですからそれは伊周らが悪いのです。中宮もお上のご寵愛をかさに着ていい気になり過ぎたのですよ。決してお上のせいではございませぬ」と、想いを息子にぶつけた。

一条天皇は「こたびも母上の仰せのまま左大臣の娘を女御といたしました。されど朕が女御をいとおしむことはありますまい」「いいかげんに中宮に気をお遣いになるのはおよしなさいませ」「そういう母上から逃れたくて朕は中宮に救いを求めのめりこんでいったのだ。全てはあなたのせいなのですよ!」母子は互いに本心を吐露し、確執が表面化した。

一条天皇のあまりに険しい表情に気圧される詮子。気まずい空気が母子のあいだに張り詰める。居たたまれず立ち去ろうとする一条天皇を、「お待ちください! お上はそのようにこの母を見ておられたのですか」と詮子は呼び止める。そんな詮子に、一条天皇はただ「はい」とだけ答えた。詮子はか細い声で「私がどれだけ…どれだけつらい思いでいきてきたか…私が…」と、懸命に言葉を紡ぐが、一条天皇にその想いは届かなかった。「もうお帰りくださいませ」と告げる一条天皇に、詮子は「私は父の操り人形で政の道具でそれゆえ私は…」と抑えていた心情を一条天皇の背中に向かって吐き出した。

しかし、振り返った一条天皇から発せられたのは、「朕も…母上の操り人形でした。父上からめでられなかった母上のなぐさみものでございました」という言葉だった。「そのような…私は…」予想だにできなかったわが子の答えに狼狽する詮子をかえりみることなく、一条天皇は、「女御の顔を見てまいります。母上のお顔を立てねばなりませぬゆえ」と言葉を残しその場を去った。残された詮子はただひたすらに絶望し、一筋の涙を流した。

吉田羊と塩野瑛久の鬼気迫る応酬と演技力に注目

ここは、女院・藤原詮子と一条天皇の確執に注目が集まったと考えられる。女院・藤原詮子は夫である円融天皇(坂東巳之助)に愛されなかったため、心の空白をひとり息子である一条天皇に依存することで埋めてきた。一条天皇を立派な帝に育てようとの一心で厳しく接する時期もあり、そんな詮子の想いが一条天皇を苦しめてきたという事実があった。一条天皇は母のそんな屈折した感情から逃げるため、定子に依存し、やがて深く愛するようになったが、定子を遠ざけるように進言した母の言葉で、これまで長年抑えてきた感情が爆発してしまった。

詮子はかつて自分自身が、父・藤原兼家に政治の道具として扱われ傷ついたが、同じことを愛する息子にしてしまっていたことを、一条天皇本人の言葉で気づかされた。これまでのすべてを否定された詮子の胸中はいかばかりのものか。Xでは、「詮子と一緒に泣いた」「あまりにも引き込まれた」「吉田羊さん、素晴らしすぎた」「塩野瑛久さんが一条天皇を演じてくれてよかった」などと、吉田羊と塩野瑛久の鬼気迫る応酬と演技力の高さに注目が集まった。