教育費の中で最も多くの費用がかかる大学の学費。その中でも特に費用がかかるとされるのが医学部の学費です。医学部に入ると6年間通うことになるので、それだけでも大きな出費です。国公立大学は、基本的に学部にかかわらず学費が一律であるため、医学部であっても多くはかかりません。一方、私立の医学部はとても多くの学費がかかります。どのくらいかかるのか、学費が安い大学と学費が高い大学をランキング形式でご紹介します。また、学費が足りない場合でも、医学部進学が可能となる方法もご紹介します。

  • 医学部で学ぶにはいくら必要?

    医学部で学ぶにはいくら必要?

国公立大学医学部の学費

国公立大学と私立大学の医学部の学費はどのくらい違うのか、まずは国公立大学の学費をみてみましょう。

*国立大学医学部の学費

医学部を置く国立大学は全国で42大学あります。国立大学は国が運営していることから、学費の標準額を定めています。そのため、どの学部でも基本は同じになりますが、大学の判断で2割増までは増額を認めています。現在、標準額は年間53万5,800円となっており、2割増になると64万2,960円となります。千葉大学は2020年度から、東京医科歯科大学は2021年度から授業料を64万2,960円に値上げしています。

<千葉大学医学部・東京医科歯科大学>
入学金28万2,000円+授業料64万2,960円×6年間=総額413万9,760円

<その他の国立大学医学部>
入学金28万2,000円+授業料53万5,800円×6年間=総額349万6,800円

*公立大学医学部の学費

医学部を置く公立大学は全国で8大学あります。公立大学は自治体が運営しており、学費は自治体ごとに異なりますが、国立大学の標準額を基準としているため、ほぼ国立大学と同様の金額になります。入学金はその地域の居住者と地域外の者で分けているケースがあり、地元の学生は入学金が軽減される傾向があります。

以上のことから、国公立大学の医学部の学費は350万円~400万円程度といえるでしょう。

私立大学医学部の学費

医学部を置く私立大学は全国で31大学あります。最も学費が高い大学と最も学費が安い大学の学費の差は2890万円です。ここでは学費が安い私立大学ランキング(上位10大学)と学費が高い私立大学ランキング(上位10大学)の2つをご紹介します。

*学費が安い私立大学医学部ランキング

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    学費が安い私立大学医学部ランキング(2024年2月29日時点の新入生に向けての学費)

*学費が高い私立大学医学部ランキング

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    学費が高い私立大学医学部ランキング(2024年2月29日時点の新入生に向けての学費)

この他に、大学によっては諸経費が別途必要になる場合があります。詳細は大学のHPでご確認ください。

以上のことから、私立大学の医学部の学費は2,000万円~5,000万円程度といえるでしょう。

学費が足りない場合はどうする?

私立の医学部に通うには2,000万円~5,000万円程度必要ということがわかったことで、裕福ではない普通の家庭の子どもが私立の医学部に通うのは、不可能と思われるかもしれません。しかし、学費が足りない場合でも、進学を可能とする制度が用意されています。ここでは、学費の免除や貸与など、学費を賄うための方法を4つご紹介します。

*特待生制度を使う

成績優秀な学生を対象に、特待生として授業料や入学金を免除・減免する制度です。特待生制度がある大学は限られていますが、成績に自信がある人は目指してみるといいでしょう。国際医療福祉大学では一般選抜から20人が選抜される「特待奨学生S」になると、学費が無料になります。

*奨学金を借りる

日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査報告」によると、何らかの奨学金を受給している大学生(昼間部)の割合は49.6%、およそ2人に1人が奨学金を利用していることになります。日本学生支援機構の奨学金は「給付型」と「貸与型」があり、返済不要の給付型は住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生が対象となっています。返済が必要な貸与型は、無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」があります。審査は第一種奨学金の方が厳しく、成績、収入状況で制限がかけられています。第二種奨学金は収入基準さえ満たしていれば利用できるものとなっています。

借入額は医学部の場合、最大で月16万円(第二種奨学金)借りられるので、6年間で1,152万円借りられます。学費が2,000万円程度の大学を選べば、残り1,000万円を負担することで、進学が可能となります。将来、医者になることで奨学金の返済は楽になるでしょう。

*医学部地域枠を利用する

地域枠とは、地方の医師不足を解消することを目的に、大学の医学部が設ける選抜枠のことです。地域枠に合格すると、6年間奨学金が貸与されます。卒業後、医師として一定期間、特定の地域で勤務することを条件に、貸与された奨学金は返済が免除されます。ただし、奨学金貸与期間の1.5倍(9年間)の期間従事することや、地域枠から離脱した場合は、貸与を受けた奨学金に年10%の利息を付した金額を返還しなければならないなど、気を付けなければならない点もあるので、医師としての将来を明確にして、ある程度の覚悟を持って臨む必要があるでしょう。

*矯正医官修学資金貸与制度を利用する

矯正医官修学資金貸与制度とは、全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院など)において被収容者の医療や健康管理など行う医師になることを希望する医学生に修学資金を貸与する制度です。第3学年以上の在学生が対象で、卒業するまでの間、月額15万円が貸与されます。卒業後、矯正医官として3年以上勤務することで、貸与を受けた修学資金の全額または一部の返還が免除されます。3学年以上でないと利用できないことと、支給額は年間180万円なので学費の一部の負担軽減にしかなりませんが、矯正医官は外部医療機関での兼業が可能、大学などで調査研究をしながらの勤務が可能などのメリットもあります。

まとめ

医学部の学費は、国公立大学の場合は、350万円~400万円程度、私立大学の場合は、2,000万円~5,000万円程度と10倍近く差があることがわかりました。そのため、家計に余裕のない家庭では、国公立大学の医学部を目指すしかないと考えますが、国公立大学の医学部は難易度が高く、入学するには狭き門を潜り抜けなければならないため、諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、私立大学の医学部に進むことも不可能ではないことを知っておくと、選択肢は広がるでしょう。学費で諦める前に、制度の活用を検討してみてください。