2023年5月の新車販売台数における人気軽自動車ランキングをまとめました。2023年5月は、どんなクルマが売れたのでしょうか?
それでは、今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2023年5月の新車販売における人気車種トップ15を紹介する。
2023年5月軽自動車人気車種ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 13,967 |
2 | ダイハツ | タント | 11,208 |
3 | ダイハツ | ムーヴ | 8,193 |
4 | スズキ | スペーシア | 7,901 |
5 | スズキ | ワゴンR | 5,448 |
6 | スズキ | アルト | 5,397 |
7 | スズキ | ハスラー | 5,145 |
8 | ダイハツ | ミラ | 4,877 |
9 | ダイハツ | タフト | 3,898 |
10 | 日産 | ルークス | 3,747 |
11 | スズキ | ジムニー | 3,170 |
12 | 日産 | サクラ | 2,773 |
13 | 三菱 | デリカミニ | 2,513 |
14 | 日産 | デイズ | 2,375 |
15 | ホンダ | N-WGN | 2,269 |
※通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算せず
1位: ホンダ「N-BOX」
2022年は普通車も含めた販売台数、つまりトヨタをしのいで日本一売れたホンダのスーパーハイトワゴン「N-BOX」。もはや日本の国民車といっても過言ではない超ベストセラーモデルだが、その最大の特徴はホンダの特許技術「センタータンクレイアウト」で、一般的に後席や荷室下にある燃料タンクを前席床下に配置し、低重心化と荷室の低床化やスペースの拡大というメリットを持つ。重心が高くなりがちで室内空間に限りのあるスーパーハイトワゴンには最適なアイデアだろう。
現行の「N-BOX」は2017年12月に登場した2代目だが、そのコンセプトは2011年12月に登場した初代から大きく変わっていない。人気の理由はホンダならではの独創性や、国内外のレースで活躍したブランド力はもちろんだが、スポーツカーからミニバンまで多彩なクルマ作りで得たノウハウが活かされていることが大きい。従来の軽自動車にありがちだった「安価なセカンドカー」というイメージを一変させ、内外装や走りの質感も高いファミリー向けファーストカーとしての時代を切り開いた名車だ。
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2位: ダイハツ「タント」
ダイハツの「タント」は2003年に登場したスーパーハイトワゴンのパイオニア。自慢の大仕掛けは助手席側の前席と後席間のピラーをドアに内蔵して巨大な開口部を持つ「ミラクルオープンドア」だ。これにスライド量の大きなシートを組み合わせ、大きな荷物の積み込みや乗員の乗り降り、室内のウオークスルーといったユーティリティ性能を向上させている。左側ピラーだけをドアに内蔵することは車体剛性や重量増加が課題となるが、現行の4代目では親会社であるトヨタ「TNGA」のダイハツ版「DNGA」を導入して最適化した。
「DNGA」によって車体性能は大幅に引き上げられたが、近代の自動車には欠かせない予防安全性能もしっかり装備されている。これは「スマートアシスト」といわれるダイハツ独自の装備で、その機能は衝突回避や認識支援、運転負荷軽減、駐車支援など、最大17種類におよぶ。バリエーションはファミリー向けのスタンダードモデルや大型グリルとメッキパーツを装備した上級仕様「タントカスタム」のほか、2022年10月のマイナーチェンジではアクティブなSUVイメージの「タント ファンクロス」も追加された。
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3位: ダイハツ「ムーヴ」
「ムーヴ」は1995年からの歴史を持つダイハツのトールワゴン。同社の「タント」をはじめとした人気のスーパーハイト系と異なるのは、全高は1,600mm程度に抑え、リアに一般的なヒンジ式を採用したことが挙げられる。誰にでも扱いやすいスタンダードな軽規格の乗用車として、デザインや安全性能はもちろん、使い勝手や買いやすい価格帯といったトータルバランスを重視したモデルだ。
「ムーヴ」はダイハツの技術陣がこだわりぬいた上級モデル「ムーヴ カスタム」のほか、エクステリアをレトロ風にして後席ドアをスライド式にした「ムーヴ キャンバス」という派生モデルがある。もともとは若い女性をターゲットとしていたが、年齢や性別を問わず人気が高まり、2022年7月に登場した2代目では本家の「ムーヴ」に先駆けて「DNGA」プラットフォームを採用し、待望のターボモデルも加えられた。このモデルが「ムーヴ」の販売台数を大きく伸ばしているようだ。
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4位: スズキ「スペーシア」
「スーパーハイトワゴン」という激戦区にスズキが投入したモデルが「スペーシア」。今月は4位に後退したが、常にダイハツ「タント」と激しく2位を入れ替え、時には1位のホンダ「N-BOX」に迫るほどの人気モデルだ。使いやすさや多彩な収納など、軽自動車を主業としてきたスズキならではのアイデアが盛り込まれている。
ライバルにはない「スペーシア」独自の特徴は、省燃費とパワーや静粛性を実現するモーターアシストの「マイルドハイブリッド」を全グレードに採用していることだ。このほか、スーパーハイトワゴンの中ではSUVブームへの対応も早く、2018年12月に「スペーシア ギア」をリリースし、2022年8月には車中泊も想定した軽貨物自動車として「スペーシア ベース」も追加された。
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5位: スズキ「ワゴンR」
「ワゴンR」は1993年からの歴史を持つスズキのトールワゴンで、初代は現在のホンダ「N-BOX」のように爆発的に売れまくり、それまで「小型ハッチバック」か「商用バン」だった軽自動車のスタンダード・スタイルを、現在の「ワゴンタイプ」に一変させたモデルだ。現行モデルは6代目で、「スペーシア」同様にマイルドハイブリッドのほか、インタークーラー付ターボモデルも揃えている。
初代からのライバルはダイハツの「ムーヴ」で、これに対抗するように「スティングレー」や「カスタムZ」といった特別仕様車をリリースしてきた。「ムーヴ キャンバス」がヒットすると、同様にリアスライドドアと個性的なエクステリアを備えた「ワゴンRスマイル」を2021年8月に追加し、同年の10月には6年10カ月ぶりに首位に返り咲いている。
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2023年5月もホンダ「N-BOX」が首位を守ったが、3強のスーパーハイトワゴンではスズキの「スペーシア」が4位に落ち、3位にダイハツのトールワゴン「ムーヴ」が繰り上がるという結果になった。ただ、乗用車の販売台数にはカウントされない商用の「スペーシア ベース」が869台あり、半導体や部品供給の問題を考えると、「スペーシア」の人気が急激に落ちたというわけではなさそうだ。
また、今回は3位に繰り上がったダイハツ「ムーヴ」と、5位のスズキ「ワゴンR」にも注目したい。この2つのモデルは現在の軽乗用車ではスタンダードな「トールワゴン」だが、売れ筋はまったく別のクルマのようなデザインと後席をスライドドアに変更した「ムーヴ キャンバス」や「ワゴンRスマイル」だ。両社の主力であるスーパーハイト系が流行りのSUV版を加えて積み上げた販売台数であることを考えても、この「派生トールワゴン」の存在は大きいだろう。
そのほか、昨年からさまざまなメディアで話題に上がっている三菱の「デリカミニ」が5月25日に発売された。5月のカウントでは約2,500台でトップ10圏外だが、三菱のリリースでは5月24日の時点で受注は約16,000台と好調のようで、来月以降にはさらに順位を上げてくるはずだ。また、同じ「NMKV」が設計した姉妹車の日産「ルークス」も、セレナ風の新型Vモーショングリルを備えたマイナーチェンジモデルが6月15日に発売された。
ここ数年の軽自動車はスーパーハイトワゴンが主流となり、その中でもホンダ「N-BOX」が王座に君臨しているが、ライバルメーカーは先進メカや安全装備はもちろん、商品力を高めるためにあらゆる手を尽くしている。そして、最近のトレンドは女性ユーザーも愛着を持てる愛らしいデザインのようだ。「ムーヴ キャンバス」や「スペーシア ギア」に続き、三菱もマスコットキャラまで加えた「デリカミニ」が大ヒットの兆しを見せている。今後も各社のデザイン戦略に注目したい。