――やはり年長者ということで、現場の空気は黄川田さんがしっかりまとめていたのでしょうか。

ぜんぜんそんなことはなくて、僕を含めてワイワイといつも楽しい空気でやっていました。たまたま僕がみんなより年齢が上というだけで、現場にはいい意味で世代の隔たりのようなものがありませんでした。ありがたかったです。

――ナースデッセイ号のコクピット=移動作戦司令室で、ムラホシ隊長とカイザキ副隊長が現地のカナタ、リュウモン、イチカに指示を出すというシーンが多くありました。カイザキ役・宮澤佐江さんと黄川田さんの「大人コンビ」が画面を引き締めている感じです。

楽屋でも現場でも、いつもその場を明るく楽しく盛り上げてもらいました。佐江ちゃんがいてくれて本当によかったなと、改めて感謝しています。僕と佐江ちゃんとハネジロー(声:土田大)がナースデッセイ号の中にいるとき、モニターを見つめながら芝居をすることがありますが、あれって実際の画面には怪獣の姿が映ってなくて、想像しながらリアクションを取っていました。監督と相談して、今はどれくらい危険な状況なんだとか、怪獣をどのように攻略しなければいけないのかとか、しっかり組み立てながらやっていました。

――撮影の合間では、黄川田さんと宮澤さんが競い合ってギャグを放ち、みなさんを笑わせていたそうですね。

厳密に言えば、佐江ちゃんとのかけあいでみんなが笑ってた感じですね。僕はあまり計算してギャグを入れられないんです。ギャグのつもりで言ったことでも「いまのはボケなのか本気なのかわかりません」みたいに言われてしまいます。そんなとき佐江ちゃんが的確にツッコんで笑いに変えてくれるので、周りのみんなも「あっ、笑っていいんですね」って雰囲気になるようです。佐江ちゃんはイジリ上手、ツッコミ上手なので、ツッコまれた僕が「面白いですね」って言われます。まさにGUTS-SELECTにおける明石家さんまさん的存在というか(笑)。イチカが僕と佐江ちゃんのやりとりでゲラゲラ笑うんですけど、ときどき自分では「どこが面白かったのかな」なんて思うこともありました(笑)。

――第5話「湖の食いしん坊」のラスト、エレキングの飼育方法をレクチャーする映像をカイザキ副隊長が撮っているところで、カンペを出すムラホシ隊長の「手」だけが画面に映り込むというほほえましいシーンが見られました。

あのシーンを撮ったら今日の撮影は終わりというタイミングで、佐江ちゃんが現場にいたんですけど、ひとりだけ残すのもかわいそうだなと思い、辻本貴則監督に「僕も参加していいですか?」とお願いしたんです。スケッチブックを持つ手が画面に見切れてしまい、あわててひっこめるとか、アドリブでいろいろやっていましたね(笑)。隊長と副隊長のいいコンビぶりというか、親しみやすさを感じ取ってもらえたらうれしいです。

――第17話「過去よりの調べ」では、TPU隊員時代のムラホシが怪獣と戦うアクションシーンが描かれました。

ふだんはナースデッセイ号のコクピットにいますから、野外に出られてすごく楽しかったです。撮影中ずっと「イエーイ!」みたいなノリではしゃいでいました(笑)。怪獣と絡むシーンは難しくて、カナタやリュウモン、イチカの苦労が身に染みてわかりました。怪獣の破壊力がどれくらいあって、攻撃でどこがどう爆発するのか、みたいな状況について、中川和博監督と綿密に話し合いながら演技をしましたが、そうやって相談している時間もまた楽しいんです。

――どんな姿かたちをした怪獣と戦っているのか、その全体像はご存じでしたか。

撮影のたび、こんな怪獣が出ますという資料はいただくのですが、一体どれくらいの大きさ、強さがあるのか、実感としてつかめないところがありました。新型コロナ感染対策のため、僕たちキャストが特撮の撮影スタジオへ見学に行けなかったのも残念なことでした。いまは毎週のオンエアを観て、視聴者のみなさんと同じ気持ちで特撮シーンを楽しんでいます。

――中盤でTPUのアサカゲ博士(演:小柳友)が人類を滅ぼす野望に燃えるバズド星人アガムスであると判明します。出演者のみなさんは全体のストーリー展開の流れをつかんだ状態で撮影に臨まれていたのでしょうか。

撮影が始まったころはまだ後半の台本が完成しておらず、僕たちも撮影しながら同時進行で次はこうなる、ああなるという展開を知っていく感じでした。アサカゲ博士がアガムスの正体を明かして……というのは企画書の段階で明記されていた設定だったので、最初から知っていました。友くんは僕より年齢が下でありながら、すごくしっかりしていて、兄のように頼っていました(笑)。

――『ウルトラマンデッカー』は子どもたちや特撮ファンの大人たちからの評判がとてもいい印象です。黄川田さんはSNSなどで反響の強さを実感されることはありますか。

放送が始まって以来、本当にたくさんの感想、応援の言葉をいただいてます。ひとつひとつチェックして、励みにしています。武居正能監督とも話していたのですが、『デッカー』は作風の明るさ、わかりやすい物語といった「ウルトラマンシリーズの王道」を目指していて、そのために好評をいただいているんじゃないかと思うんです。僕のまわりにも「お話がわかりやすくてすごく面白い」とか「今回の話で泣いた」とか、とてもいい反響が聞こえてきます。GUTS-SELECT隊員たちのカッコいい部分だけでなく、人間味のあるところを映像にしてもらっている。そんな人間同士のドラマ部分も、人気の高い理由のひとつなのではないかと思っています。

――2023年2月23日に長篇新作『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』が動画サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」で配信されるほか、全国劇場でも同時公開されるなど、まだまだ『デッカー』の世界は続いていきますが、ひとつの「区切り」としてテレビシリーズ最終回を撮り終えたときの、黄川田さんの思いをぜひ聞かせてください。

最終回でムラホシが隊員のみんなに言葉をかけるシーンがあり、それが強く印象に残っています。撮影が始まって半年以上経って、改めてみんなを目の前にしたとき、黄川田雅哉とムラホシの気持ちがひとつになるような感覚がありました。あのときの言葉は役としてのセリフではなく、僕個人の思いも込められた心からの言葉でした。最終回を楽しみにしてくださっているみなさんには、ぜひムラホシの感情の高まりにも注目していただきたいです。『ウルトラマンデッカー』という素敵な作品に出演することができて、本当によかったと思います!

(C)円谷プロ