放送開始25周年を迎えた『ウルトラマンダイナ』(1997年)の系譜を受け継ぎながら、正統派「怪獣映画」の醍醐味をも見つめ直し、地球の平和を脅かす脅威に立ち向かうエキスパートチーム「GUTS-SELECT」メンバーの等身大の人間像をみずみずしく描くドラマが、子どもから大人まで幅広い年齢層に支持されている『ウルトラマンデッカー』。
現在放送中のテレビシリーズはいよいよ物語の核心に迫るクライマックスを迎え、ウルトラマンデッカー/アスミ カナタ隊員(演:松本大輝)を中心としたGUTS-SELECTレギュラーメンバーそれぞれに改めて注目が集まっている。
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大地伸永(だいち・のぶなが) 2001年生まれ、埼玉県出身。2015年NHK大河ドラマ『花燃ゆ』徳川家茂役で俳優デビュー。以後、テレビドラマ、WEB配信ドラマ、映画、CMと幅広い分野で活躍中。 撮影:大門徹
『デッカー』キャストインタビュー、今回はGUTS-SELECTでカナタやイチカ(演:村山優香)と共に最前線で怪獣を迎えうつリュウモン ソウマ隊員を演じる大地伸永が登場。常に冷静で、感情をあまり表に出さないクールな性格で、熱血漢のカナタとは対立することが多かったが、次第にお互いの良いところを認め合い、信頼関係を築いていく。子どものころから特撮ヒーロー作品に憧れていたという大地に、リュウモンを演じるにあたっての心がまえや、共演者たちとのチームワークの良さについて、そして約半年間にわたる撮影時の強烈な思い出の数々を尋ねた。
――まずは、大地さんがリュウモン隊員役に決まったときのお気持ちから聞かせていただけますか。
実はオーディションの際、アスミ カナタ役を受けていたんです。オーディションが終わって数日後、会社に来てほしいと言われ向かったのですが、その日はみんな、なぜか態度が冷たくて……。何か怒られるようなことしたかな?と心配していたら、「『ウルトラマンデッカー』受かりました!」という発表サプライズでした。
とても嬉しかったのですが、いただいた紙にはアスミ カナタ役ではなく、リュウモン ソウマ役と書いてあるし、リュウモンの芝居はオーディションではしていないけれど、どんなキャラクターなんだろう?最初はそんな気持ちでした。出演者のみんなとお会いして、ホン読み(脚本読み合わせ)のときにお互いのセリフを言い合いながら、リュウモンは、こういう人間なのかなと、だんだんと見えてきた理解していった感じです。
最初リュウモンは口調が強く、笑わないため「怖い」と思われそうな印象でしたが、ただ怖いだけではなく、強い口調になるには、それなりの理由がリュウモンにはあるということを理解してもらうために、どうしたらいいかを考えました。撮影に入ると、みんなから「こうしてみたら面白いよ」とアドバイスをもらったり、自分なりにもここをもっと膨らませようと考えたりしながら役を作っていきました。
――劇中では、カナタ、イチカ、リュウモンの若手隊員3人がお互いの持ち味をぶつけあって困難に立ち向かう姿が印象的でした。みなさんが初めてお会いしたときの印象はいかがでしたか。
初めて会ったばかりのときは、やはりぎこちなかったですが、特に大輝と優香は人見知りなところがあるのか、僕としては積極的に「壁」を崩しにいこうと思っていました。カナタ、イチカ、リュウモンの役と同じで、日々撮影をしていくうち、仲良くなって共に成長していった仲間という感覚でいます。撮影も中盤から終わりにかけては、このシーンではこういう気持ちでやりたい、ここはこういう動きをするからこんな受け方をしてほしいとか、3人の芝居をうまく組み合わせて見せることもできるようになりました。仕事上の仲間というよりは「戦友」という思いが強いです。
――村山さんは、第2話で3人が山登り訓練を行ったことでいっそう連帯感が高まったとおっしゃっていました。
ありましたね! 確かに、あの撮影はキツかったので(笑)。訓練校の制服だけだと寒くて、ホントどうしようかと思いました。寒くなると鼻が赤くなるタイプなので、メイクをしていただいてもうっすら赤いかな~とか思ったりして(笑)。あの山登りのシーンで、リュウモンとカナタがぶつかるんですよね。僕としても、リュウモンが最初に自分の気持ちをはっきり言えたシーンなので、すごく印象に残っています。カナタもイチカも最初の大事な部分だったし、俺たち3人頑張ったよなあという思いが強いです。
――撮影が始まった時点で、最終回までの展開を聞かされていたりしましたか。
昨年の12月から撮影が始まったのですが、その時点では最後にどんな展開になるかは知らされてはいませんでした。僕は先の展開を知ってしまうと楽しめなくなると思っているので、なるべく次はこうなるみたいなことは聞かないようにしていました。
――第6話で、リュウモンがGUTS-SELECT入隊を決意した理由が「TPC隊員に助けられた幼少時代」にあるということが判明しましたが、助けてくれた隊員が実はムラホシ隊長(演:黄川田雅哉)だったと、第17話で明かされました。あの一連はリュウモンの人となりを知る上で大切でしたね。
僕にとっても力の入った回でした。第6話を撮って撮影していたときは、まだ第17話の台本は上がってなかったので、リュウモンが語った過去については、そのうちこんな出来事につながっていくかな……と武居正能監督からうかがっていました。そのお話を頼りに演技をして、後の第17話にうまくハマッてくれたらいいなという、ちょっと運任せな感じもありました。
設定資料を読んだとき、リュウモンは今でこそ芯が通っていて、精神的にも強いですが、昔は弱々しい少年だったんじゃないか、怪獣災害についてもずっとトラウマで、今とは正反対の非力な子だったのではないかというイメージが自分の中に生まれました。第6話の段階で、なぜリュウモンがGUTS-SELECTに入りたいのか、入ることが自分にとってどれだけ大きなことなのかが後に絶対語られるぞ!という願いを込めて演じていました。
――明るく、熱血なカナタとの対比もあって、リュウモンはクールで感情を表さないところが特徴でしたが、それだけに第11話のテラフェイザー登場シーンでは、テラフェイザーの必殺武器の説明を聞いたとき「一撃必殺……燃えるなあ!」と心底嬉しそうな表情とガッツポーズをするリュウモンがすごく印象的でした。
ああいうシーンは楽しいんですけど、いつもと違った無邪気っぽいリュウモンを演じるので、テストで一回やってみたら恥ずかしくなっちゃって(笑)。後で画面を観てみると、いつもは「生真面目サイボーグ」とマルゥルさんに言われるくらいカタいリュウモンの、人間らしさがにじみ出た感じで、すごくいいと思いました。撮影中、リュウモンってずっと子どもたちから「怖い」と思われているままで終わるのは辛いな……と悩んでいた時期もありましたが、いろいろな監督から「このシーンではこうしたらリュウモンの人間味が出るんじゃないか」みたいなアドバイスをたくさんいただいたり、ほんとうに助けていただきました。
――第11話では、人間と同じ大きさのウルトラマンデッカーとリュウモンが共に力を合わせてヒナバッサーの群れと戦うアクションシーンがありました。デッカーと手を取り合ったときのお気持ちはいかがでしたか。
まさか僕がウルトラマンと同じ画面に収まるなんて思っていませんでしたから、嬉しかったです。デッカーの手を握るのは、画として自分でいいのかなと思っていたときもありましたが(笑)、リュウモンならではといったシーンになっているので安心しました。
――第22、23話でリュウモンはデッカーの正体がカナタだと気づきます。しかし、それまでのエピソードでは、カナタがデッカーだなんて絶対にそんなことはありえないと思っているリュウモンのガンコさが、笑いにつながるといったシーンがあちこちにありました。ああいったコミカルな場面はどう思われますか。
楽しいです! ここだけの話ですが、映像を観ていると、カナタがデッカーだとリュウモンが気づかないわけない!っていうくらいの距離感で変身しているシーンが多いですね。子どもたちはテレビを観ながら「気づいてるでしょ!」って思ってるところもあるでしょうけど、そんなことで覚めてしまわないのが”ウルトラマンシリーズ“の不思議なパワーなんでしょうね。リュウモンは隊長から「見つめる天才」という名をいただいていますから、天才ならもっと早くに気づいていたと思うんですけど(笑)。