確定申告をする際は、1年間の所得や所得控除を確認するためのさまざまな書類を提出することが必要です。そのため、所得や所得控除の種類などによって必要となる書類が違い、人それぞれに提出するべき書類が異なります。自分の場合は何が必要になるのか早めに確認し、準備しておきましょう。

本記事では、できるだけスムーズに確定申告できるよう、個人事業主の場合と会社員の場合に分けて、それぞれいくつかの申告パターンの例でどのような書類を用意すべきか説明します。

●確定申告をするすべての人に共通して必要なもの

まずは、確定申告をするすべての人に共通して必要な書類について確認しておきましょう。これらの書類は個人事業主か会社員かにかかわらず必要です。

・確定申告書

確定申告は、国税庁所定の「確定申告書」に所得額や所得控除額などを記載して提出します。確定申告書は最寄りの税務署でもらうこともできますが、国税庁のサイトからダウンロードして使用することもできます。

AとBの2種類ありますので申告する内容によって合うほうを選びましょう。Aは所得の種類が給与所得、雑所得、配当所得、一時所得のみ人が利用できます。Bはすべての所得に対応しているため、事業所得や不動産所得がある人も使用できます。

・本人確認書類

申告者本人であることを証明するために本人確認書類も必要です。マイナンバーカードを所有している人は、マイナンバーカードの表・裏面の写しを提出します。マイナンバーカードを所有していない人は、マイナンバーを確認できる書類(通知カード、住民票など)に加え、身元確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)の写しが必要です。

・源泉徴収票、支払調書など

会社で年末調整を受けた人でも確定申告をする場合には、申告書にその年の所得額を記載しなければなりません。所得の種類によって必要書類や提出要否が変わるので、自分の所得に応じて用意しておきましょう。たとえば、次のような書類です。

給与所得・公的年金等:源泉徴収票(提出不要)
事業所得や不動産所得、その他所得:青色申告決算書、収支内訳書、株式年間取引計算書など(提出必要)

・所得控除を受けるための証明書

社会保険料(国民年金保険料)控除証明書、生命保険料控除証明書、医療費控除の明細書など、自分が受ける所得控除に応じて用意しておきましょう。

・銀行口座番号

確定申告によって税金の還付を受けることができる場合は、通帳など銀行口座情報がわかるものを用意しておきましょう。これは確定申告書に口座情報を記載するためですが、写しを提出する必要はありません。

●個人事業主の確定申告に必要なもの

個人事業主が得る「事業所得」の申告は、青色申告と白色申告の2つの方法があります。それぞれ必要書類が異なりますので確認しておきましょう。

・青色申告の場合

青色申告とは、複式簿記等、正規の記帳方法により申告する方法です。請求書や領収書の保存・管理なども規定に基づき正しく行わなければなりません。一方で、その特典として55万円の特別控除を受けられます。e-Taxによる申告や電子帳簿保存を行っている場合は控除額が65万円になります。

青色申告をする人は、国税庁所定の「青色申告決算書」に記載し、上記(共通)書類とともに提出することが必要です。青色申告決算書は国税庁のサイトからダウンロードすることもできます。

なお、事業所得以外にも、不動産所得、山林所得のある人は青色申告をすることができます。

・白色申告の場合

青色申告をする場合には、記帳方法等の規定以外に、所定の期限までに納税地の所轄税務署に「青色申告承認申請書」を提出しておくなどのルールもあります。これらの規定に該当しない場合は白色申告をすることになります。

白色申告をする人は、国税庁所定の「収支内訳書」に記載し、上記(共通)書類とともに提出します。収支内訳書は国税庁のサイトからダウンロードすることもできます。

●会社員の確定申告で必要なもの

会社員が確定申告をするケースとしては、年末調整では受けられない所得控除を申請する場合や、副業による所得が年20万円を超える場合などがあります。ここでは、ふるさと納税、医療費控除、住宅ローン控除を受ける場合、および副業所得を申告する場合の4つの例で必要となる書類について説明します。

・ふるさと納税をした場合

ふるさと納税をした場合で、ワンストップ特例制度を利用しない人は、上記(共通)書類とともに「寄付金控除に関する証明書」を提出します。

「寄付金控除に関する証明書」は、ふるさと納税をする際に利用した特定事業者(ふるさと納税ポータルサイト運営者)が発行する書類です。特定事業者にもよりますが、一般的に電子発行または書面発行の好きなほうを選べます。不明な場合は、利用している特定事業者に確認しましょう。

・医療費控除を受ける場合

年間に支払った医療費の自己負担額(※)が10万円(総所得額が200万円未満の場合は総所得額×5%の額)を超える場合は、確定申告をすることで医療費控除の適用を受けることができます。
※民間の医療保険などから保険金などを受け取った場合は、その保険金・給付金額を除きます。

該当する場合、上記(共通)書類とともに「医療費控除の明細書(集計表)」を提出します。医療費控除の明細書(集計表)は国税庁サイトの確定申告書作成コーナーから、集計用ファイルをダウンロードして利用することができます。医療費の領収書等は提出する必要がありませんが、申告内容の確認のために提出を求められる場合があります。5年間は自宅で保管しておきましょう。

健康保険組合等から医療費通知(「医療費のお知らせ」など)の交付を受けている場合は、それを提出すれば明細書(集計表)の記載を簡略化することができます。ただし、医療費通知のなかに次の6つの項目が記載されていなければ提出書類として利用できません。きちんと確認しておきましょう。

1.被保険者等の氏名
2.療養を受けた年月
3.療養を受けた者
4.療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
5.被保険者等が支払った医療費の額
6.保険者等の名称

・住宅ローン控除を受ける場合

返済期間が10年以上の住宅ローンを組んでマイホームを購入またはリフォームをした場合、一定の条件のもと、住宅ローン控除を受けることができます。会社員等で会社の年末調整を受けられる場合、2年目からは年末調整で申請できますが、初めて控除を受ける年は確定申告をしなければなりません。

必要書類は購入する住宅の種類等によって異なりますが、一般住宅を購入した場合は、上記(共通)書類とともに次の書類を提出します。

1.住宅借入金等特別控除額の計算明細書(国税庁サイトからダウンロードできます)
2.借入金残高証明書(住宅ローンを借りた金融機関から送られてきます)
3.登記事項証明書
4.住宅の工事請負契約書または売買契約書の写し

認定住宅や中古住宅の購入およびリフォームの場合は別途必要となる書類があります。これらに該当する人は国税庁サイトまたは税務署で確認しましょう。

・副業をしている場合

本業の給与所得以外の所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。必要となる書類は副業の種類によって異なりますが、たとえば副業も給与を受け取っている場合は、上記(共通)書類とともに副業先の源泉徴収票または支払調書が必要です。

副業が雑所得に該当する場合には、あらかじめ雑所得の金額を計算して確定申告書に記載しなければなりません。収入および必要経費(交通費・通信費・消耗品費など)を確認できる書類を用意しましょう。計算は国税庁サイトにある「副業に係る雑所得の金額の計算表(エクセルファイル)」を使用すると便利です。

●早め早めの準備をしておきましょう

確定申告をする際は確定申告書にさまざまな書類を添付し提出しなければなりません。必要書類はすべての人に共通するものもありますが、申告する所得の種類や所得控除などによって異なります。書類によっては事業者などに発行を依頼しなければならないものもあり、受け取るまでに時間がかかる場合もあります。確定申告期間に間に合うように、早め早めの準備をしておきましょう。