第36期竜王戦3組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、1回戦の遠山雄亮六段-大橋貴洸六段戦が12月21日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、大橋六段が126手で勝って2回戦進出を決めました。

相掛かりの流行形

振り駒が行われた本局、先手となった遠山六段は相掛かりの戦型に誘導します。玉の囲いもそこそこに右桂の活用を優先したのが近年流行の作戦で、飛車角桂の飛び道具を活用して積極的に局面を動かしていく狙いがあります。後手の大橋六段が7筋の歩を突いたのに反応し、飛車を大きく活用して遠山六段は一歩得を果たしました。

一歩損となった大橋六段は、この代償として自陣の金銀の活用を急ぐことで先手の駒の立ち遅れをとがめる方針を採ります。部分的に定跡化されている進行ながら、雁木の構えを作ったあとに3筋の歩を突き捨てたのが筋に明るい指し方でした。大橋六段は続いて3筋に銀立ち矢倉の好形を築いて先手の攻撃陣にプレッシャーをかけます。

遠山六段の好調な攻め

自陣の駒組みが頂点に達したと判断した遠山六段が1筋の歩を突き捨てて、本局は本格的な中盤戦に突入しました。遠山六段は立て続けに右桂を跳ねて盤面右方からの端攻めを継続します。これに対し大橋六段も自然に対応しますが、戦いの中で桂を敵陣左方に成り込むことに成功した遠山六段がペースをつかみました。局面は「遠山六段の攻め対大橋六段の受け」という構図で進展しています。

やがて遠山六段は1筋に歩を打って角取りをかけ、この角をへき地に追いやる戦果を挙げました。このことに満足して2筋に歩を打つ穏やかな攻めに切り替える手も考えられるところでしたが、一気の敵陣攻略を目指す遠山六段は直接手の連続で迫ります。守勢の時間が続く大橋六段でしたが、遠山六段のこの選択のおかげで香を打って飛車を捕獲する楽しみが生じました。

攻めすぎをとがめて大橋六段が逆転

激しいやり取りが続き、局面は後手の大橋六段が駒得を果たして終盤戦に突入します。遠山六段が大橋玉のすぐ近くに馬を作って迫ったとき、大橋六段が持ち駒の金を打ってこの馬を弾いたのが当然とはいえ好手でした。駒損の遠山六段としてはこの馬を切って攻めを継続するほかありませんが、大橋六段は自玉に対して寄り筋がないことを読み切っています。

遠山六段の攻めが一段落したのを見た大橋六段はついに反撃に出ます。ここに至るまで、最初に遠山六段が端攻めを開始してから実に50手が経過していました。敵陣深くに飛車を打ちおろしたのが基本に忠実な一手で、遠山六段としては次の角打ちの王手がわかっていても防げません。形勢不利と見た遠山六段は最後の猛攻に出ますが、これに対してじっと自陣桂の受けを放って攻め駒の入手を催促したのが大橋六段の決め手となりました。

終局時刻は19時52分、最後は自玉が寄り筋に入ったのを見て遠山六段が投了を告げ、熱戦に幕が引かれました。勝った大橋六段は2回戦にコマを進めるとともに、公式戦連勝を6に伸ばしています。

水留啓(将棋情報局)

  • 勝った大橋六段は直近15局で14勝1敗と好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)

    勝った大橋六段は直近15局で14勝1敗と好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)