伊藤匠叡王に斎藤慎太郎八段が挑む第11期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)は、両者2勝で迎えた最終第5局が5月31日(日)に千葉県柏市の「柏の葉カンファレンスセンター」で行われました。対局の結果、両者得意の相掛かり戦から抜け出した伊藤叡王が117手で勝利。熱戦を制して叡王3連覇を果たしています。

去年と同じ場所で

勝った方が叡王という重要な一番。昨年と同じ対戦カードおよび対局場で、斎藤八段としては「タイトルを取れるのではと思ってしまった」と後悔した昨年のリベンジを目指したいところです。振り駒が行われた本局は両者の息が合って相掛かりへと進展。先手の伊藤叡王が4筋に銀を上がった手はじっくりした駒組みを目指す手で、持久戦が予想されました。

対局開始から1時間、そんな予想を裏切って伊藤叡王が動きます。何気ない序盤戦の中、機敏に3筋の歩をぶつけたのが常識にとらわれない鋭い序盤感覚で、一時的に角が狭くなっている後手に指し手の候補が少ないのを見越しています。先手番らしく主導権を握ることに成功した伊藤叡王は、このあと左辺の桂頭攻めを起点として一気の踏み込みでリードを拡大しました。

逆転許さず押し切る

先手の攻勢が止まりません。8筋の飛車頭にタタキの歩を放ったのは後手に粘りを与える攻め方だけに最善を逃した感はあるものの、これが大勢に影響しなかったのが伊藤叡王にとっての幸運でした。「寄せははがすことなり」の格言通りシンプルに清算に踏み込んだのが改めての勝着で、斎藤八段としては自陣に金を埋める受けの勝負手を逃した格好です。

優勢を確立してからの伊藤叡王の指し手は安定そのものでした。終局時刻は19時24分、最後は自玉の受けなしを認めた斎藤八段の投了で伊藤叡王の3連覇が決まりました。序盤から主導権を握り続け、良い内容で熱戦を制した伊藤叡王は「結果については幸運、自分なりに一局一局全力で望めているので結果に表れてうれしい」と語りました。

水留啓(将棋情報局)

  • 伊藤叡王はタイトル獲得の4期すべてがフルセットと、最終局での無類の強さを発揮している(提供:日本将棋連盟)

    伊藤叡王はタイトル獲得の4期すべてがフルセットと、最終局での無類の強さを発揮している(提供:日本将棋連盟)