ALSOK杯第76期王将戦七番勝負(日本将棋連盟主催)は二次予選がスタート。5月27日(水)には渡辺明九段―鈴木大介九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、意表の相居飛車力戦から中盤で抜け出した鈴木九段が110手で勝利し2回戦に進出。渡辺九段は復帰戦を白星で飾ることはできませんでした。

ファン待望の復帰戦

渡辺九段は昨年9月からの休場を経て約半年ぶりの公式戦復帰。心配されていた膝の調子ですが、この日は椅子ではなく畳に正座するスタイルでの対局でファンを安心させました。振り駒が行われた対局は駆け引きのすえ先手の渡辺九段が雁木を採用、これを見た鈴木九段は普段は振り飛車党ながら本局では居飛車を採用。相居飛車の力戦形となり、鈴木九段から渡辺九段の土俵に乗り込んだ格好です。

中盤に入るやいなや双方居玉のまま大駒が入り乱れる打撃戦へと突入。渡辺九段が飛車を切って角を手にしたのは決断で、端に隠居した後手の飛車をいじめることで棒銀を遊ばせる狙いです。駒の取り合いが一段落した局面は難解ながら、ここでは後手の鈴木九段が絶妙手を用意していました。遊び駒の桂をタダのところに跳ね出す一手が、局後に「はっきり良くなった」と語った鈴木九段の左手がしなる自慢の一手でした。

大きかった「天使の跳躍」

先手がタダの桂を竜で取った場合はポッカリ空いた空間に桂を打って王手金取りをかけるのがその読み筋。「右桂は居飛車党の魂」と言わんばかりの絶品のさばきで「はっきりよくなったと思った」と鈴木九段が振り返る通り、本局はここを境に一気に後手優勢に傾きます。とはいえ渡辺九段も粘りの桂打ちで見せ場を作り、終盤は再度混戦の様相を呈してきました。

先に一分将棋に入った渡辺九段を尻目に、持ち時間を40分以上残す鈴木九段は慎重かつ大胆な指し回しで再度引き離しにかかります。竜を切って銀を手にしたのが「終盤は駒得より速度」の格言通りの決め手で、飛車を渡しても自玉に詰みがないのを見切っています。終局時刻は16時27分、最後は後手玉に詰みなしと認めた渡辺九段の投了で熱戦に幕が引かれました。

勝った鈴木九段は2回戦に進出しリーグ入りまであと2勝と迫りました。一方敗れた渡辺九段は局後SNSを更新し、「結果は残念だったが悔しいと思えるところまで戻ってこられたことに感謝」と思いをつづりました。

水留啓(将棋情報局)

  • 鈴木九段は局後「見えない手を連発され力を発揮された、(一時は)負け将棋になっていた」と激戦の終盤を総括

    鈴木九段は局後「見えない手を連発され力を発揮された、(一時は)負け将棋になっていた」と激戦の終盤を総括