大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は7日、中央線に導入する新型車両400系の報道関係者向け内覧会を実施した。中央線で現在運行している20系の更新車両および他路線へ転用する24系の置換え用として導入され、2023年4月中の運行開始を予定している。

  • 大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)が中央線に導入する新型車両400系を報道公開

中央線の新型車両400系は6両編成で計23編成を導入する予定。同社のCDO(チーフデザインオフィサー)を務める奥山清行氏がデザインを担当した。大阪・関西万博を契機に新世代車両として開発を進め、安全性はもとより移動手段としての新機能と高レベルの快適性を追求。「乗って楽しい」を形にしたデザインとしている。

今回公開された編成は、1号車から「409-01」(定員125人、自重31.9トン)、「402-01」(定員139人、自重34.1トン)、「403-01」(定員139人、自重33.8トン)、「408-01」(定員140人、自重25.1トン)、「401-01」(定員139人、自重34.9トン)、「406-01」(定員125人、自重31.9トン)。日立製作所笠戸事業所で製作され、航路と陸路を使って10月末に車両基地へ搬入されたと説明があった。

車体はアルミ製。前面は八角形のデザインとなり、四隅に前照灯・尾灯を配置している。ガラス張りの展望形状で、宇宙船を意識させる未来的デザインに。「お客さまからの展望や将来の自動運転の可能性を示唆する外観」「Osaka Metroが提供するアプリや大阪シティバス、オンデマンドバスなどのMaaSとの関連性を暗示させる魅力的なデザイン」だという。

ホーム可動柵時代に伴う乗降口の明確化と、最新の室内装備によるコミュニケーションをデザインテーマに、車体側面は一般座席の扉を中央線の号線色であるグリーン、車いす・ベビーカースペースおよび優先座席の扉をブルー、クロスシート車両(4号車)の扉をグレーで配色。ブルーとグレーで配色した扉に関して、窓下に車内設備を示すサインを配置している。近年の新造車両と同様、床面高さを40mm下げることで、ホームと車両の段差縮小も図った。

  • 車体前面は宇宙船を意識させる未来的デザインに。車体側面の扉はグリーンのほか、ブルーやグレーで配色している

車内は天井を落ち着いた配色にする一方、壁面と床面を明るくし、座席の袖仕切りや車両間の貫通扉にガラスを採用。機能に応じた多色使いの座席(一般座席はグリーン系、優先座席はブルー系で配色)とも相まってモダンな空間となった。座席の背を高くするなど、座りやすさも考慮いる。座席はロングシートを中心としつつ、クロスシートの車両を1編成につき1両配備。「目的地に向かって移動するワクワク感」「パーソナルスペースの確保による安心感」を提供するという。

快適性向上の取組みとして、車内吊り広告を廃止して開放感を広げるとともに、車内デザインと調和したLED照明を採用することで、より明るく快適な空間としている。脱臭、除菌、PM2.5抑制、アレル物質(花粉・ダニなど)の抑制効果がある空気浄化装置を全車両に搭載し、パナソニック「ナノイーX」搭載車両であることを示すステッカーも掲出された。荷棚を利用しやすくするため、全車両において荷棚高さを10mm下げている。

  • 新型車両400系の車内。ロングシート車両はグリーン系を中心とした多色使いの座席が特徴

  • クロスシート車両は1編成につき1両配備。向きの異なる横2列(1列+1列)の配置に

車内案内装置として、同社の車両で最大という21.5インチのワイド液晶ディスプレイをすべての乗降口上部に設置。4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国・朝鮮語)による運行案内を行う。2画面構成とすることで、乗換案内や駅設備案内など、きめ細かな情報を提供できるようになった。

ドア部の床に黄色のラインを入れ、乗降口を識別しやすくするとともに、チャイムとドア上部に設置したランプの点滅でドア開閉を知らせる。開いているドアの位置を知らせる誘導鈴も設置。扉が閉まる際に荷物等が挟まった場合や、扉が開く際に指などが引き込まれた場合に備え、扉の開閉力を一時的に弱めることで容易に抜け出せるようにした。

  • 乗降口上部の車内案内装置は2画面構成

  • 先頭車両のユーティリティスペース

  • モバイル用電源(USB)付きカウンターを設置

  • 1号車の乗務員室と客室を仕切る部分。初期に導入する車両において、扉の窓は従来通りの高さとなっている

  • 6号車の乗務員室と客室を仕切る部分(モックアップ)。展望を考慮し、将来的に全編成で扉の窓を大型化する予定だという

  • 1号車の運転台。ワンハンドルマスコンを採用している

先頭車両にユーティリティスペースを設け、モバイル用電源(USB)付きカウンターを設置して乗客のニーズに対応。サービス向上を目的に車内Wi-Fiを全車両に導入するほか、非常時に乗務員室で確認可能な車内防犯カメラを全車両に搭載し、車内での犯罪抑止・セキュリティ向上を図る。運転台はワンハンドルマスコンを採用。ワンマン運転にも対応しているとのことだった。

新技術・新仕様も取り入れた。空調装置に学習・予測制御を導入し、日常走行における車内温度や外気温度、乗車率などのデータを蓄積・活用することで、車内環境に応じた最適な運転を行えるようにする。車両の各装置と機器の状態情報(動作情報など)を地上設備へ常時送信するモニタリング機能も導入。収集した情報を分析・活用し、効率的な車両保守やさらなる安全性の向上に取り組む。2024年度に計画している自動運転の実証実験に向け、指令所からの運行指令や情報伝達を行うデータ伝送機能など各種機能も備えた。

新型車両400系は今後、来春の運行開始に向けて、営業線を走行しての各種試験や、乗務員の習熟運転などを行う予定。なお、中央線では万博開催期間中に必要な輸送力を確保するため、新造車両30000A系の導入(6両編成×10編成)も進んでいる。30000A系は万博後、谷町線へ転用される。

  • 中央線に導入される新型車両400系の車内・外観