北海道における交通の拠点となっているJR札幌駅。高架のホームから道内各方面へ、特急列車が頻繁に発着する。札幌駅前にバスターミナルもあり、ここからも道内各方面へ、高速バスが次々に目的地に向けて発車する。

  • 札幌~帯広・釧路間の特急列車は千歳線、石勝線、根室本線を経由するルートが主流。特急「おおぞら」が多くの乗客を乗せ、道東へ向かう(筆者撮影)

先日、筆者は取材のため、1泊2日で釧路へ行くことになった。札幌~釧路間を公共交通機関で行く場合、鉄道と高速バス、飛行機といったルートが考えられる。今回は鉄道と高速バスを乗り比べ、それぞれの良さについて考えてみることにした。

1日目。平日の朝7時頃、筆者は札幌駅に到着した。駅構内は通勤・通学利用者で混雑しており、飲み物を買いに立ち寄ったコンビニではレジ待ちの行列ができている。会計を終え、札幌駅前ターミナルへ向かった。

今回、往路は高速バス「スターライト釧路号」を選んだ。札幌駅前ターミナルから札幌市内の2カ所で乗客を乗せた後、道央道・道東道を経由し、大楽毛駅前や釧路駅前などに停車して、終点のくしろバス本社まで5時間35分で結ぶ。筆者はインターネットで釧路駅前までの乗車券(片道5,880円)を事前購入したが、空席があれば札幌駅前ターミナルの乗車券うりばにて当日購入も可能。現在の本数は1日4本で、札幌駅前ターミナルの発車時刻は7時40分・11時10分・15時40分・17時50分。他に深夜バスもあるが、運休中とのこと。

「スターライト釧路号」が到着し、スマートフォンで乗車票を提示して車内へ入る。Wi-Fiや充電用コンセントが車内に完備されており、座席はシートピッチこそ狭いものの、リクライニング可能でフットレストも付いている。トイレが設置されているため、長時間の乗車でも安心できる。座席ごとにカーテンでプライベート空間を確保できるように設計されており、隣が気にならない。備え付けのスリッパに履き替え、発車を待つ。

定刻となり、「スターライト釧路号」は札幌駅前ターミナルを出発した。最前席だったため、前方の視界は良好。通常の車より視線が高いせいか、急に少し偉くなったような気分になる。札幌市街を抜けて道央道に入ると、高速バスらしい加速を見せ始めた。

千歳恵庭ジャンクションから道東道に入ると、車の数が一気に減る。車線も片側1車線の区間が増え、出入口付近で2車線になるものの、すぐ元に戻ってしまう。周囲は市街地から山の景色となり、紅葉の美しさに見惚れていると、線路を跨いだ。地図アプリで確認すると、室蘭本線か石勝線と思われる。遠くにはホルスタイン牛が草を食む様子が見え、車窓から北海道らしい風景を堪能できた。

運転手は2人乗務していて、途中で何度か運転を交代する。夕張川を渡った後は、石勝線と並走する区間もあった。トマムの山々にはうっすらと雪が積もり、長いトンネルを幾度も抜けて見えた十勝平野の美しさは、想像をはるかに超えていた。

十勝平原サービスエリアで15分ほど休憩する。周囲に人がいないことを確認し、マスクをずらして深呼吸すると、明らかに都会の空気と違う。今更ながら旅していることを実感すると同時に、胸が高鳴った。

「スターライト釧路号」はその後、乗務員交代を挟みつつ道東道を完走し、釧路市街へ。順調な走行で、定刻より15分早い12時40分、釧路駅前に到着した。

  • 釧路駅は大型のロータリーを備え、駅構内には飲食店や土産店が入っている(筆者撮影)

翌日、釧路駅で行われた報道公開の取材を終え、札幌へ帰る。復路はJR北海道の特急「おおぞら」を選んだ。札幌~釧路間を最速3時間59分で結び、現在は6往復運転されている。取材が決定した後、すぐに「えきねっと」を開いたが、指定席はほとんど埋まっている状態だった。なんとか3号車の通路側を確保し(早割で8,480円)、当日に備えた。

筆者が乗車した上り「おおぞら8号」は13時42分、定刻通り釧路駅を発車した。車両はキハ261系1000番代。4両編成で、1号車はグリーン車、2・3号車は普通車指定席、4号車は普通車自由席。平日ということもあり、周囲を見るとビジネス利用と思われる乗客が大半で、観光目的の利用は少ないように感じた。

  • 特急形気動車キハ261系の普通車の車内(提供 : 写真AC)

列車は順調に快走。西日が強いせいか、海側の乗客のほとんどがカーテンを下ろしていて、景色は見えなかった。帯広駅に到着すると、観光客が一気に乗り込み、自由席は満席に。立客が指定席まで流れ込み、デッキを通行することも難しくなってしまった。

新得駅から石勝線に入り、トンネルが増加する。乗客の多くは靴を脱ぎ、くつろいでいる様子。山が続く車窓の景色を眺めていると、シェルターなど酷寒地らしい設備が随所に見え、ずいぶん遠くに来たものだと実感させられる。

山が薄暮に染まり、だんだん陽が傾いてくる。新夕張駅を出る頃には、外は真っ暗だった。南千歳駅から千歳線に入り、すれ違う快速・普通列車も電車が中心に。北広島駅を通過した後、進行方向左側に見える北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」は、美しく輝いていた。途中、対向列車の遅れで少しもたついたものの、札幌駅にはほぼ定刻通りに到着。4時間半の長旅が終わった。

  • 千歳線を快走する特急「おおぞら」。キハ261系1000番代が充当される(筆者撮影)

  • 札幌発帯広行の特急「とかち」。「エスコンフィールド北海道」をバックに千歳線を駆け抜ける(筆者撮影)

今回、鉄道・高速バスという2つの交通手段を使ってみて、どちらも長距離を移動する乗客のニーズをとらえるべく模索している様子が感じられた。料金は高速バス、スピードは鉄道がそれぞれ有利だが、設備に関しては好みが分かれるだろう。旅行のニーズと優先事項を整理し、快適な旅をするためにどのルートを選ぶか。その選択から、旅は始まっているのかもしれない。