18日に放送された大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第36回で、中川大志演じる畠山重忠の乱が描かれた。サブタイトル「武士の鑑」が示すとおり、重忠は武士として立派な最後を遂げたが、演じ終えた中川は「満身創痍」の状態だったと言い、「胸がいっぱいになりました」と万感の想いを口にした。

  • 『鎌倉殿の13人』北条義時(小栗旬)と戦う畠山重忠(中川大志)

大河ドラマは『江~姫たちの戦国~』(11)、『平清盛』(12)、三谷幸喜作『真田丸』(16)に続き、4度目の出演となった中川。とりわけ長期にわたり演じた重忠役には格別な思いを感じていたようで「畠山重忠と共に過ごした時間は1年ちょっとと長かったので、今は終わってしまったんだという寂しさもあります」としみじみ語る。

「僕は畠山重忠という名前を初めて聞いた時、自分の知っている情報や印象が多くない人物だったので、どんな風にこのキャラクターを深めていけるかが未知数でした。でも、知れば知るほど本当に重忠という人物に引き込まれていきました。そして、『武士の鑑』として後世に語り継がれる意味も理解していくなかで、最後までしっかりと重忠を体現しなくてはいけないと思いました」

もともと大河ドラマの現場には、特別な思い入れがあったという。

「初めて大河ドラマのスタジオに入らせてもらったのは小学校6年生の時で、お芝居を始めたばかりの頃だったから、ものすごい緊張感がありました。周りにはベテランの方しかいなくて、他では味わえない空気感があり、それが何年経っても体に染みついて残っています。だから大河のスタジオに戻ると、背筋が伸びるというか、怖いんです。そこに立つのはすごく勇気がいることで、今回の目標は、飲み込まれずに戦い抜くということでしたが、畠山重忠という男が毎回自分を奮い立たせてくれたのかなと思っています」

武勇と教養にあふれ、清廉潔白な人柄の重忠は、北条義時(小栗旬)からの信頼も厚かった。ところが、義父・北条時政(坂東彌十郎)との亀裂が深まり、謀反の罪に問われてしまう。和田義盛(横田栄司)が重忠を説得しようとするも応じず、2人は一戦を交えることになった。

「和田義盛という毛むくじゃらのおじさんは(笑)、畠山にとってすごく大きな存在で、気づけばずっと横にいた人です。これまで共に過ごしてきた仲間なので、36回の台本を読んだ時にぐっと来てしまい、堪えるのに必死でした。しかも、畠山重忠の乱では敵陣にいるメンバーは全員、古くからの友達で幼馴染のような存在の御家人たちばかり。そんななかで代表して、和田義盛が重忠に会いにくるという展開に『三谷さん、ずるいよ』と思いました」

確かに重忠と和田義盛は、ことあるごとに一緒にいた名コンビでもあった。

「両極端な2人は、第1回から一緒にいて、勝手にライバル視している和田義盛とあまり相手にしていない重忠がいつもやりあっている感じがすごく愛らしくて、僕も2人のやり取りが大好きでした。また、2人は視聴者の方からも愛されていて、僕もそういう反響を見てきましたが、三谷さんもそこを受け止めて下さり、ああいうシーンになったのかなと。何が悲しいかというと、重忠が誰よりも和田義盛のことを分かっていたという点で、そこがすごく苦しくもありました」

さらに、「この戦で何がそんなに苦しいかというと、みんながやらなくていい戦いだということをわかっていた点です。35回の最後に、義時と重忠が2人で酒を飲むシーンもありましたが、みんなが心のなかで『どこをどう間違えてしまったのか』と思いながら戦をしていたのだと思います」と、重忠だけではなく、義時ら御家人の苦悩をも代弁する。

普段は決して感情をあらわにしない重忠が「戦など、誰がしたいと思うか!」と声を荒らげるシーンも胸に突き刺さった。重忠の怒りや悲しみ、慟哭といったものが込められていたに違いない。

中川は「重忠としては、もはや引き下がることができないところまで来てしまったとわかっていた。確かに、重忠を1年間演じてきて、これまで感情を爆発させるシーンはなかったのですが、あの時は『戦なぞしたくない』という気持ちと共に、悔しさや葛藤もあったと思います」と述懐する。