現在放送中のTBS系金曜ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(毎週金曜22:00~)。有村架純演じる石田硝子(通称:石子)と中村倫也扮する羽根岡佳男(通称:羽男)の何とも言えない凸凹コンビが物語をポップに彩っているが、これまでのリーガルものとは違う趣が興味をそそる。プロデューサーを務めるヒットメーカーの新井順子が、本作に込めた思いを語った。

  • 『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』

■「ちょっとためになるコメディドラマをお届けできたら」

弁護士や検察をテーマにしたいわゆる法廷ものの映画やドラマは過去にも数多くあったが、本作の大きな特徴と言えるのが扱う題材の身近さだ。第1話では「店のコンセントを無断で使う客」、第2話では「スマホゲームの課金問題」、第3話では「ファスト映画」、第4話では「電動キックボードでの接触事故」、第5話では「隣家の害虫問題」、第6話では「事故物件」と、普段の日常生活のなかで誰もが関わり合いを持ってしまう可能性のあるものばかりだ。

新井プロデューサーは「一般的に法律ってすごく難しくて、何かあっても弁護士さんに相談するなんてとんでもないって思う人がほとんどだと思うんです」と切り出すと「まあそれが日本人の奥ゆかしさなのかなと思うのですが、ニュースなどを見ていると『何でそれを誰かに相談しなかったんだろう』みたいなことって多いですよね。身近な人には話せなくても、第三者だったら話せるかもしれない。そういう世の中になればいいなという思いがありました」と扱うテーマが身近である理由を述べる。

こうした思いは新井プロデューサーの実体験でもあるという。「私自身、トラブルが起こった時に、自分たちだけで解決してしまったことがあったんです。あとで弁護士さんに話をしたら『何で言ってくれなかったんですか。もっといい方法があったのに』と言われたことがありました。どうしても素人だと、相手の言いなりになってしまうことって多い気がするんです」。

さらに新井プロデューサーは「意外と知らないうちに軽犯罪を犯してしまっていることってあると思うんです」と述べると、第1話の冒頭にあった、お店で勝手に充電してしまうようなことは、あまり罪の意識がなくやってしまっている人も多いのでは……と語る。エンターテインメントとして楽しむ一方、作品を観ることで、自然と自身を守るような知識を得るという効果も期待する。

「法律の話ですが、なるべくかみ砕いて小中高生にも分かるように作っている部分もあります。いま世の中で起こっていることについて、ニュースは見ないけれど、ドラマだったら観るという人もいると思う。そうすれば法律も、もう少し間口は広くなることってありますよね。観たらちょっとためになるコメディドラマをお届けできたらと思って制作しています」。

■著作権法を取り上げた第3話後の変化に「複雑です(笑)」

なかでも大きな反響があったのが、第3話のファスト映画の回だという。「分析班から、あの回のオンエアがあってから、引用リツイートが減ったのでトレンドに上がりづらくなったという報告があったんです。ツイッターって画像とか動画を張り付けることもあるじゃないですか。でもそういった行為も著作権法違反だ、みたいな話だったので、3話目以降つぶやきが少なくなり、トレンド上位に上がらない……。複雑です(笑)」

第3話のラストの結論に対しては、許す、許さないという議論がチームのなかでもなされたという。最終的には罪を許さずということを描いたが「いろいろな意見がありました。作り手の思いが詰まったラストになりましたが、許すという形にしていたらどんな反響になっていたんでしょうね」と新井プロデューサーは語っていた。

法律では白黒がつくが、是か非かだけで片付けられない余韻を残すのは、本作が描くテーマが“身近な題材”だからだろう。その意味では、これまでのリーガルものとは趣の違う余白を与えてくれるのも、本作の魅力の大きな要因だ。

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