この記事では「やんごとなき」の意味や使い方をわかりやすく解説します。「やんごとなき」の類語や英語表現も紹介しているので、語彙(ごい)力や知識力アップのためにぜひチェックしておきましょう。

また、会話で使う際の注意点も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。

「やんごとなき」の意味とは

  • 「やんごとなき」の意味とは

    「やんごとなき」にはさまざまな意味があります

まず、「やんごとなき」の基本的な意味について紹介します。

古文「やんごとなし」の連用形で、「止む事無し」からきている

「やんごとなき」は古語の「やんごとなし」の連用形で、「やんごとなし」は「止む事無し(やむことなし)」が一語化した言葉です。「やんごとない」も同じ意味です。

『広辞苑』では「止事無い(やんごとない)」の意味を次のように説明しています。

やんごとない【止事無い】
(1)捨てて置かれない。よんどころない。後撰和歌集(恋)「―・きことによりて京へ人つかはしけるついでに」
(2)ひと通りでない。特別である。枕草子(276)「身に―・く思ふ人のなやむを聞きて」
(3)(身分・地位などが)きわめて尊い。重々しい。高貴である。源氏物語(桐壺)「いと―・ききはにはあらぬが」
(4)粗末には扱えず、貴重である。恐れ多い。「―・い賜り物」

小学館『広辞苑 第六版』デジタルより引用

つまり「やんごとなき」は、ある物事や人が特別に貴重であったり、重要であったりする場合に用いる言葉です。

「やんごとなき」の使い方と例文

  • 「やんごとなき」の意味とは

    「やんごとなき」の使い方を例文とともに覚えておきましょう

現代で「やんごとなき」を用いる場合の、具体的な使い方と例文を紹介します。

「やんごとなき」はかしこまった会話で使う

「やんごとなき」は古語であるため、現代の日常会話の中ではあまり使われない表現です。

現代において使われる場合は、かしこまった会話で使われる傾向にあります。あるいは友達同士など親しい間柄で、あえて冗談交じりに使うケースなどが考えられます。

「やんごとなき」の意味が通じにくいケースもあるので、相手の状況を見ながら使うといいでしょう。

「高貴」の意味で使う場合の例文

「やんごとなき」を、特に相手の身分の高さを表現する意味合いで使う場合の例文を紹介します。

  • 本日の式典には、やんごとなき御身分の方々がおいでになります
  • やんごとなき地位のお方なので、お迎え用の車を手配しよう
  • あのようなやんごとなき方々と会食をする機会など普段はないので、とても緊張して疲れてしまった

古語ではありながらも、現代でも相手の身分が非常に高いことを表現する際に「やんごとなき」という表現が使われることがあります。

「重要」「やむを得ない」の意味で使う場合の例文

「やんごとなき」を、「重要」「やむを得ない」という意味で使う場合の例文を紹介します。

  • どうやらやんごとなき状況にあるらしく、会議室を開けると全員が緊張した面持ちであった
  • やんごとなき状態にもかかわらず、先輩たちは冷静に一つ一つの問題に対処しており、さすがだった
  • やんごとなき事情により呼び出され、休日出勤することとなった

重要だったり特別だったりする状況などにおいて、現代でも「やんごとなき」という表現が使われることがあります。この場合は「ただ事ではない」というニュアンスもあります。

「やんごとなき」の誤用や注意点

古語でありながら、現代でも少なからず使われることもある「やんごとなき」という表現ですが、誤用や使用上の注意点があります。

「やんごとなき」は日常生活でよく使われる表現ではないため、あまりたくさん使いすぎると、相手に対して違和感を与えるおそれがあるでしょう。

また「やんごとなき事情」などと状況をあいまいにするのではなく、具体的な状態を詳しく説明する方が適していることもあります。

むやみに「やんごとなき」を使うのではなく、相手や状況などに応じて使い方には注意するようにしましょう。

「やんごとなき」の類語・言い換え表現とは

  • 「やんごとなき」の類語とは

    「やんごとなき」にもさまざまな類語があるため、ぜひ覚えておきましょう

「やんごとなき」は複数の意味がありますが、それぞれの意味について類語を紹介します。「やんごとなき」は古語であるため、多用すると聞き手が違和感を覚えるかもしれません。そのようなリスクを避けるためにも、言い換え可能な類語を知っておくことには意味があります。

高貴な

「高貴」とは、その人の身分が高く、人柄などにも気品があるという意味です。物に対して使う場合には、立派で値打ちがあることを意味します。

重要な

「重要」とは、とても大切であることやその様子、物事の本質や成否に関わることという意味があります。

貴重な

「貴重」には、重んじて非常に大切にすること、大切で得がたいものである様子といった意味があります。

やむを得ない、仕方ない、のっぴきならない

そうするよりほかに方法がない、どうしようもないといった意味の表現は複数あります。

「やんごとなき」の英語表現

  • 「やんごとなき」の英語表現

    「やんごとなき」の英語表現もぜひ把握しておきましょう

「やんごとなき」の英語表現について紹介します。例文も紹介するのでぜひチェックしてみてください。

「やんごとなき」の意味の一つである身分の高さを表す英語表現としては「noble」があります。「noble」には「高貴な、高尚な、気高い、立派な、堂々とした」といった意味があります。また「貴族」という意味も持ちます。

「やんごとなき」の「重要な」という意味を表す英語表現としては、「important」という表現が適しているでしょう。「important」には「重要な、重大な」といった意味があります。

「やんごとなき」の「特別」や「価値がある」といった意味合いを表現する英語表現としては、「valuable」があります。「valuable」は、「高価な、値打ちのある、価値のある、貴重な」といった意味です。

「やむを得ない」という意味合いでは「unavoidable」が使えるでしょう。この単語を分解すると、「避ける」という意味の「avoid」、「できる」という意味の「able」を、「un」で否定しています。

  • There are many noble personalities from overseas attending today's ceremony.
    (本日の式典には、海外よりやんごとなき御身分の方も多数出席されている)
  • Edward was absent from today's meeting, apparently due to unavoidable circumstances.
    (エドワードは今日の会議を欠席していたが、どうやらやんごとなき事情があってのことらしい)

「やんごとなき」は相手や状況に合わせて使いましょう

「やんごとなき」は古語で、「身分が高い、重要な、貴重な、やむを得ない」などの意味を持つ言葉です。

現代でもかしこまった場面で「やんごとなき」という表現が使われることがあります。ただし、「やんごとなき」を多用すると相手に違和感を与えてしまう可能性もあるため、注意しましょう。