• 『霜降り明星の校内放送ジャック』Paraviで配信中 (C)テレビ東京

冨田氏が企画・演出を手がけた番組で、最近もう1本話題になったのが、『霜降り明星の校内放送ジャック』(3月26日放送 ※Paraviで配信中)だ。霜降り明星が、この3月で閉校する中学校をサプライズ訪問し、クセの強い生徒・先生とのやり取りや、思春期の真剣な悩み相談を受け止めるコーナーなどを繰り広げる“校内放送”を展開。テレビ画面の中にも外にも笑顔と感動を届けた。

この番組のきっかけも、子どもの通う小学校の事情からだった。

「コロナ禍のご時世で、給食の時間が黙食だというのを聞いたんです。みんなの楽しい時間のはずが、机を囲まず、黒板を見ながら黙って食べているというのを知って、何か良い思い出になることができないかということで、給食や昼休みに流れる校内放送が楽しい時間になる企画をやりたいと考えました」

協力してくれる学校の許可を取るのは、コロナ禍で苦戦も予想していたが、十数校からOKという返事が。「先生たちも生徒たちに楽しい思い出を作ってあげたいという意識があるんだなと感じました」と、学校側としても渡りに船の企画だったようだ。

その中から、埼玉県・久喜市立菖蒲中学校を選んだのは、全生徒にタブレット端末が支給されているなどIT環境が整備されており、チャット機能を使った双方向のやり取りが可能だったこと。授業の様子を下見すると、生徒と先生の距離感が近かったこと。そして、「帰り際に校長先生から『私、実は3月で定年なんです』と言われて、もう校長先生のためにもここでやりたいと思いました(笑)」と、決定打になった。

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■“内輪受け”になる懸念はなかった

霜降り明星の登場はサプライズのため、事前に「テレビ取材の中継が入る」ということだけを伝え、それに向けたアンケートを生徒に実施。学校のあるあるや、個性的な生徒・先生の情報などを集めて企画に生かしたが、“内輪受け”になってしまう懸念はなかったのだろうか。

「先生のネタは確かに内輪受け感があったりしますが、それを見て楽しそうに喜ぶ生徒たちの笑顔やその姿は、絶対内輪受けにはならないと思いました。生徒たちがキラキラしている姿を見るということで、番組として成立すると思ったんです」

そこに一役買ったのが、霜降り明星。「今回はただ単に放送室から話しているんじゃなくて、ラジオのようにメールで参加してライブ感を共有するような校内放送をやりたいと思ったので、生徒たちからどんどん届くメッセージをうまくさばけて、なおかつノンストップで笑いも提供できて、生徒たちと向き合ってもらえる人ということでお願いしました」と起用の狙いを明かす。2人とも20代で、生徒たちの“兄貴分”的な立場になれたのもハマった。

ラストでは、今回の「校内放送」で起きた出来事をネタに盛り込んだオリジナル漫才を、生徒たちの集合した体育館で生披露。「20分間カメラを止めて、真剣にネタを考えていただいたんですが、短時間であれだけクオリティの高い漫才を作っていただけたのは本当にすごいなと思いました」と驚かされた。

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こちらの番組も反響が大きく、ピエール瀧がFacebookで「中学校と霜降り明星の相性が最高」と称賛。そして菖蒲中の校長先生からは、放送後に「本当に感動しました」、定年を迎えた日の朝にも「最後に思い出になる番組をやっていただいて、教員人生のいい締めくくりになりました」と電話がかかってきたそうで、冨田氏は「すごくうれしかったですね。本当にやって良かったと思います」と感激した。