JRグループは、「鉄道開業150年キャンペーン」を2022年4月1日から2023年3月31日まで開催。3月2日に都内で記者発表会を実施した。JRグループ各社の代表者らによるプレゼンテーションも行われ、各社の取組みや今後運行予定の観光列車などが紹介された。
JR北海道は、季節に合わせた観光列車の2022年の運行開始時期について発表。今後、4月29日から「くしろ湿原ノロッコ号」(釧路~塘路間)、5月14日から急行「花たび そうや」(旭川~稚内間)、6月11日から特急「フラノラベンダーエクスプレス」(札幌~富良野間)と「富良野・美瑛ノロッコ号」(旭川・美瑛~富良野間)の運行を開始する予定となっている。
「くしろ湿原ノロッコ号」では、自動車からは見ることのできない、釧路湿原の壮大な風景を楽しめる。JTBが2018年に実施した観光列車に関するアンケートで、「乗ってみたい観光列車」の1位を獲得するなど、好評を得ているとのことだった。
急行「花たび そうや」は、キハ40形を改装した「山紫水明」車両を使用予定。本来であれば2年前に運行開始していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で運転見合わせとなり、今年になってようやく運転できる見込みとなった。「今年こそ」という意気込みで、地元と準備を進めているという。
特急「フラノラベンダーエクスプレス」は「ラベンダー編成」を使用して運行。カウンター席とボックス席を備えたラウンジがあるほか、全席にWi-Fi・コンセントも設置している。「富良野・美瑛ノロッコ号」は風光明媚な富良野・美瑛エリアを走る観光列車で、ゆっくり走る列車の中から、一面紫色に染まるラベンダー畑や、美瑛の丘の景観を楽しめる。
観光列車の運転に合わせ、地元の自治体と協力し、到着駅での出迎えや特産品の販売など、おもてなしにも力を入れる。記者発表会で登壇したJR北海道鉄道事業本部・営業部部長の林雅子氏は、「ぜひ観光列車にご乗車いただき、地域の皆様とのふれあいや、雄大な北海道の自然を楽しんでいただけたら」と話していた。
続いてJR東日本が記念企画を紹介。2022年、JR東日本は鉄道開業150年に加え、5方面に向かう各新幹線もそれぞれの周年を迎える。これを記念し、12月31日まで行われる「新幹線YEAR 2022」キャンペーンについて説明があった。
「新幹線YEAR 2022」では、「新幹線eチケットサービス」にて「JRE POINT」を特典チケットに引き換える際、通常のポイントの半分以下で引き換えられる「JRE POINT 特典チケット 新幹線YEARスペシャル」を期間限定で設定。もともと「JRE POINT」は「新幹線eチケットサービス」または「えきねっとチケットレスサービス」で「JRE POINT 特典チケット」に交換できるが、対象期間中は新幹線利用がさらにお得になるという。
たとえば、「JRE POINT 特典チケット」を使って東京駅から仙台駅まで乗車したい場合、通常の「JRE POINT」は7,940ポイント必要だが、「JRE POINT 特典チケット 新幹線YEARスペシャル」の場合は3,900ポイントで利用可能。「JRE POINT 特典チケット」で東京駅から軽井沢駅まで利用する場合、通常の「JRE POINT」は4,620ポイント必要だが、「JRE POINT 特典チケット 新幹線YEARスペシャル」だと2,300ポイントのみで利用できる。
第1弾は2月に終了したが、6月1~14日に第2弾が行われ、9月26日から10月7日までの第3弾も後に控えている。なお、在来線特急列車の「えきねっとチケットレスサービス」は対象外となる。記者発表会で登壇したJR東日本鉄道事業本部・営業部部長の宮田久嗣氏は、「鉄道開業150年キャンペーンを機に、ご旅行される際は特典チケットのスペシャルなものを使って、お得にご旅行いただければ」とコメントした。
JR東海は、東海道新幹線「のぞみ」の登場から30周年を記念したキャンペーンを実施する。その一環で特別企画ツアーを実施予定としており、車両基地内を走行する新幹線に乗車できるプランや、こども連れの参加者を対象に車掌・駅係員の仕事を見学・体験できるプランなどを用意する。実施時期、販売期間は準備でき次第、発表するとのこと。
新幹線1両を貸し切る「あなたの“のぞみ”をかなえます!」では、東京~新大阪間で「のぞみ」1編成を無料で貸し切り、利用者がやりたいことのアイデアを募集した。1月7日に企画の募集を終了しており、800名からの応募があったとのこと。社内で厳正に選考し、3組のアイデアを当選企画として選出。当選者の「のぞみ」の実現に向け、準備しているところだという。
他にも、リニア・鉄道館における春のイベントとして、「のぞみ」とともに運行開始した300系の企画展を3月16日から開催する予定。ガイドツアーや特別ノベルティの配布、苗字または名前が「のぞみ」「ひかり」「こだま」のいずれかに該当する人を入館無料とするイベントなどを行う。記者発表会に登壇したJR東海営業本部担当部長の安齋辰哉氏は、「この機会に、東海道新幹線『のぞみ』号を利用して、旅を楽しんでいただきたい」と語った。
JR西日本は、1972(昭和47)年3月15日の山陽新幹線新大阪~岡山間開業から今年で50周年を迎えることを受け、記念企画を実施予定。山陽新幹線の歴史の紹介やスタンプラリーなどが予定されており、詳細は後日発表される。
2022年7~9月に開催される「岡山デスティネーションキャンペーン」についても紹介。鉄道開業150年、山陽新幹線岡山開業50周年の節目で開催されるにあたり、いままで以上に岡山県を楽しんでもらうべく、地元と連携して準備を進めているという。「フルーツ」「アート」など、岡山県にある魅力を満喫できるような提案も。津山線では、新たな観光列車「SAKU美SAKU楽」が運行開始予定となっている。
JR西日本営業本部担当部長の梶浦剛史氏によれば、瀬戸内エリアのクルーズ船による旅も準備しているとのこと。「新幹線でお越しいただいた後、列車で、船で、各地の観光スポットを巡っていただく広域周遊ルートをしっかりご提案していきたいと考えております」と述べた。
JR四国は、3月15日から「『しおかぜ』『南風』運行開始50周年キャンペーン」を開催。特急「しおかぜ」「南風」は、ともに1972(昭和47)年3月15日から運行開始した四国最初の特急列車で、今年で50周年を迎える。その第1弾企画として、「しおかぜ」「南風」で各1万枚、それぞれの特定区間でグリーン席・指定席を利用した人に記念乗車証が配布される(なくなり次第終了)。
同社初の本格的な観光列車として登場した「伊予灘ものがたり」が置き換わり、2代目「伊予灘ものがたり」が4月2日にデビューすることも注目されている。キハ47形を改造した初代車両は、2014年のデビューから7年半にわたり運行され、約14万人以上の利用者から好評を博した。
キハ185系を改造した2代目車両では、1両まるごと貸し切っての利用もできる8名限定のグリーン個室「Fiore Suite(フィオレスイート)」を用意した。JR四国鉄道事業本部・営業部部長の藤本聡氏は、「『大切な人と過ごす時間と空間』をコンセプトに、フィオレスイートでしか堪能できない上質なサービスとともに、ワンランク上の空間をごゆっくりご堪能ください」とコメントを寄せた。
最後にJR九州が、西九州新幹線と「ふたつ星4047」、「佐賀・長崎デスティネーションキャンペーン」について紹介。西九州新幹線は武雄温泉~長崎間で9月23日に開業予定。専用の外観・内装で落成したN700S「かもめ」が、いよいよこの秋走り出す。JR九州鉄道事業本部・営業部担当部長の加藤邦忠氏は、「新幹線を契機に、地元が元気になる、発展につながる取組みをいまから考えていきたい」とコメントした。
西九州新幹線の開業と同時期に、D&S(デザイン&ストーリー)列車「ふたつ星4047」も西九州エリアでデビューする。西九州新幹線の開業後、2022年10~12月に「佐賀・長崎デスティネーションキャンペーン」も開催予定。キャッチコピーは「あなたの旅のコンパスをSとNへ 佐賀と長崎へ 出発進行!」。詳細は改めて発表予定となっている。
今後、鉄道を利用して旅行に出かける人が増えることを想定し、記者発表会の場で新型コロナウイルス感染症に対する取組みが改めて紹介された。JRグループでは、駅・車内の定期的な消毒・除菌を行い、車内では空調・換気装置を利用して定期的に空気を入れ替えている。一部エリアでは混雑状況を配信することにより、密を避けるための情報発信も行っているという。これらの取組みを通して、安心して鉄道を利用してもらえるよう記者発表会の場で呼びかけられた。
とはいえ、現在の新型コロナウイルス感染症の状況を見るに、残念ながらまだまだ収束の気配が見えてこない。鉄道各社のみに対策を任せるのではなく、利用者側も引き続き、個人でできる基本的な感染対策を忘れずに行い、可能な限り感染拡大を防止することが重要ではないかと思う。
日本に鉄道が走り始めて今年で150年。JRグループ共同で行う「鉄道開業150年キャンペーン」とは別に、各社においてもそれぞれの周年や新路線の開業、観光列車のデビューを迎えることになる。今回の記者発表会で紹介された内容の中には、すでに詳細が発表されているものも多いので、気になったものがあれば確認してみてほしい。
記者発表会の最後に、JR東日本の宮田氏が挨拶。「現在のような発展を遂げ、存在し続けることができたのは、ひとえにご利用していただけるお客様のおかげだと感謝申し上げております。お客様の会いたい人、大切な場所への架け橋として、私たちJRグループは、これからもたくさんの出会いを作り続けてまいりたいと思います」と締めくくった。