原稿をコツコツと書いていたら気づいたことがある。今クール、勝地涼さんと溝端淳平さんの活躍がめざましい。今日日、2~3作品掛け持ちで出演していることくらいなら、そんなに珍しくもない。それよりも共通点として気づいたのが、二人ともデビューは"正統派イケメン"であったこと。恵まれたビジュアルで、着々と実力をつけていたはずなのに、いつの間にか方向転換。作品で見せるコミカルな演技が視聴者の期待に上がっている。

演技だけではなく、バラエティ番組でのガチで愉快な一面や、私生活での話題も興味深い二人。30代前半の同年代というのも、偶然なのだろうか。ひょっとしたらこの二人、第二の唐沢寿明さん、沢村一樹さんの好ポジションを狙っているのかもしれない。

たった一度きりの登場"前髪クネ男"で見せた快挙

  • 勝地涼(左)と溝端淳平

"勝地涼"と俳優名を聞いたら「あ……」と、脊髄反射のように思い出すのが朝ドラ『あまちゃん』(NHK総合 2013年)での、前髪クネ男役。ただこれはヒロインの天野アキが勝手につけた名前であって、本来はTOSHIYAという歴とした役名があった。それでもインパクトのあるあだ名に世間は大フィーバー。そして現在の、ちょっとすっとぼけたギャグをかます役柄が多く見られるようになっている。『ネメシス』(日本テレビ系 2021年)で刑事役として登場した時は「何かやってくれる」という、イチ視聴者としての期待がウズウズ。彼の二枚目キャラは確実に浸透している。

彼の熱血ファンではないので、あくまでもドラマを眺めてきた感想ではあるけれど、2000年のデビュー時は確実にイケメン枠にカテゴライズされていた勝地さん。きっとアイドル雑誌にも数多く登場していたに違いない。以来、数多くの作品に出演しているけれど、ドラマオタクの脳内にインプットされたデータからどうにも役柄が抽出できない。脳裏に浮かぶのは、あのしっかりとした眉毛だけ。

それが『東京DOGS』(フジテレビ系 2009年)くらいから、様相が変わり出した気がする。ヘタレ役、言い換えると『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系 2012年)へ頻繁に登場する、腰巾着たちの存在。そしてヘタレ役で着実にキャリアを積み上げて、現在は『ドクターホワイト』(フジテレビ系)と『となりのチカラ』(テレビ朝日系)に出演中。

自分のメリットであるカッコよさを沈めて、新しいキャラを全面に出す。一般人で言うところの、転職に近い行動だ。そんな簡単にできるものではない。きっとこれからも期待を裏切ることなく、いい塩梅の笑いを作品に落としていくのだろうと予想。ちなみに彼のバラエティ番組でも見せる、一歩下がって笑いを取りに行く様子も大好きだ。

正統派と二枚目の二刀流で役をリリース

そして『天国と地獄〜サイコな2人~』(TBS系 2021年)で、刑事のヒロインの後輩・八巻英雄役で、一般家庭のリビングの笑いを誘った溝端さん。"うっかり八巻"はネットで見かけた『水戸黄門』に登場する"うっかり八兵衛"に似合わせたあだ名。これが本当に大ヒットの言い表しだと思う。あだ名が示すように、溝端さんの演じた役は二枚目、ヘタレ、キョドっぷりの3拍子が見事に揃った役。それでも実直さが視聴者さの心を突いたのか、八巻が危険に晒されると「大丈夫なのか」と心配の声が飛ぶほどインパクトを残した。みんな、八巻の味方だった。

溝端さんこそ、あのジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出身であり、正真正銘の正統派俳優である。舞台、映画、ドラマと確実に人気を獲得して進んでいる。そこにヘタレ役としての頭角を表し出したのは『BOSS』(フジテレビ系 2009年)の花形一平役ではないかと睨んでいる。この役では警察官としての誇りとやる気はあるものの、結果、失敗を繰り返していた。それでも隠しきれないイケメンっぷりで、その後も順調に作品へ出演。その後に朝ドラ『スカーレット』(NHK総合 2019年)でヒロインが初恋をする酒田圭介役も印象深い。

そして花形一平役から約10年後、八巻の役で世間の視線を浴びることになる。ちなみに今出演している『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ系)では編集者、『愛しい嘘 優しい闇』(テレビ朝日系)ではワイナリーの後継者という、至ってイケメンの役。時折、どこかで二枚目が突出してくるのではないかとドキドキしているが、おそらく溝端さんは正統派と二枚目の二刀流。これからもジュノンボーイ出身という輝かしい功績を隠すことなく、ふんだんに生かしてほしい。

勝地さんと決して比較するわけではない。画一化されることのないキャラクターの両名は、確実に希少であり、妙である。今後二人が同キャラで共演する機会を地上波で見られることを祈りつつ、放送中の4作品を見守ろう。