幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第81回は俳優の溝端淳平さんについて。2022年の冬ドラマは『愛しい嘘 優しい闇(以下、愛しい嘘略)』(テレビ朝日系)、『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ系)の2作に出演予定の溝端さん。彼が数多くのスターを誕生させている『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』のグランプリを受賞していることをどれほどの人が知っているのでしょうか。今、各所で見せているキャラはいつごろ発生したのかを振り返ってみます。

ハマり役"うっかり八巻"で全世代から愛されて

溝端淳平

溝端さんは私がテレビで見ている限り、現在の北村匠海さんのような正統派の俳優として露出が始まっていた。『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系 2007年)に出演するような、THEイケメンであり、アイドル的な存在だった。この当時の溝端さんをけして忘れてはいない。現在の整った顔立ちを見ていても、納得である。

その気運が変化の兆しを見せ始めたのは『BOSS』(フジテレビ系 2009年)花形一平役。"警視庁捜査第一課特別犯罪対策室"で、ボスの元、部署内では一番年下の巡査部長。放送回によって見せどころはあったけれど、終始、失敗が多く、村啓輔(温水洋一)とよく一緒に一緒に演技をしていたイメージがある。

ここから快進撃のごとく、溝端さんを各所で見かけるようになる。ドラマ、映画、舞台。ただ何故だろう"銀幕スター"と言うイメージではなく、舞台挨拶で見ていてもどこか腰が低そうに登場していらっしゃる。何度も言うが、イケメンなのに。威風堂々とした雰囲気は感じられない。

この印象を1ミクロンも裏切ることなく、溝端さんの名前を広く知られることになったのは『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系 2021年)の八巻英雄役。『BOSS』で天海祐希さんの周囲をちょこまか動いていたように、主人公・望月彩子演じる綾瀬はるかさんをサポートする刑事役。いつもビクビクしている八巻の"うっかり八兵衛"と重なったのか、ネットニュースで“うっかり八巻”と呼ばれていたのにはウンウン、と頷くよりほかなかった。

ドジっ子&愛され刑事役をやらせたら右に出るものなし?

ふと気づくと、溝端さんは刑事役がよく似合うし、役柄として記憶に残る。それも大物俳優が主演、その脇で主役に振り回されるようなポジションが本当によく似合う。『新参者』(TBS系 2010年)では、阿部寛さんが演じる、変わり者の刑事・加賀恭一郎とバディを組んで、毎回奔走していた。前出の『天国と地獄』でも同じく、望月の指示には逆らえず動き回り、何度も危険な目にあって見ているこちらをヒヤヒヤさせてくれた。

ただヘタレ役を極めたわけでもない。以前『魔界転生』の舞台にお邪魔した際には、ここまで挙げてきた役柄とは一線を画す力強い演技を楽しませてもらった。他の舞台作でも何度かお見かけしたけれど、ドラマで見せる溝端さんは遥か彼方へ飛んでしまったような妙、それから気迫がそこにはあったのだ。役者としての器量、だけではなく、何か特別なスイッチがあるような気がしてならない。これを彼が使い分けているのだとしたら、私たちは彼の思惑に踊らされたしつけのいい視聴者である。

そんな溝端さん、新年早々2作のドラマに出演。『ゴシップ』では、ウエブメディアの編集部員役。それから『愛しい嘘』では、ヒロインに片思いをするワイナリー経営者役。ここではどんな彼を見ることができるのか。"キョドオドキャラ"は2022年封印されるのか、飛躍するのか。また目が離せなくなってしまう、ドラマオタクがここにいる。