長寿料理番組『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ:毎週月~土曜11:45~、CBCテレビ:毎週月~金曜11:20~・土曜11:30~)。この3月で『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』(ABCテレビ)が27年、『おかずのクッキング』(テレビ朝日)が48年と、民放の料理番組が次々と長い歴史に幕を下ろす中、こちらは放送60年目に突入した。

レシピサイトや動画が発達する中で、テレビの料理番組として『3分クッキング』はどのような役割を果たしていくのか。日本テレビの清水真美子プロデューサーに話を聞くとともに、日テレ版のスタジオ収録の現場を取材して探ってみた――。

  • 『キユーピー3分クッキング』を担当する(左から)杉上佐智枝アナ、杉原凜アナ、岩本乃蒼アナ、川畑一志アナ、大町怜央アナ (C)NTV

    『キユーピー3分クッキング』を担当する(左から)杉上佐智枝アナ、杉原凜アナ、岩本乃蒼アナ、川畑一志アナ、大町怜央アナ (C)NTV

■レシピ考案に食材手配…講師陣に「ただただリスペクト」

日曜日を除く毎日の放送という膨大なレシピを考えるのは、番組で料理を作る講師陣。収録の5カ月前に、放送2カ月分の献立会議を番組スタッフ全員が参加して行う。

「月曜や火曜は忙しい週の初めだから炒め物とか簡単に作れるものにしたり、金曜日には週末に向けて揚げ物や、お昼に食べる麺類を入れたりして、1週間単位で先生方にバランスを見てご提案していただきます。4人の先生がいるので、それを合わせた4週分、つまり1カ月のトータルで見て、かぶりや不足するところは調整していくという形で決めていきます」(清水P、以下同)

この会議を受けて、講師がさらに試作などしてレシピをブラッシュアップし、コロナ前は、講師の自宅で、現在はリモートも活用してリハーサルを実施。ディレクターがストップウォッチ片手に全工程のタイムを秒単位で計測し、材料、工程、オープニングのコメント、ポイント、カメラのカット割り、テロップの文字まで、全ての情報を台本に書き起こし、スタッフ全員がそれを見て動けるようにしておく。月~土曜まで1週間分まとめ撮りをしているとは言え、10分番組とは思えない台本の厚さだった。

食材は、講師が手配して収録に持参。収録から放送まで1~2カ月ほどあるため、野菜や果物、魚などは旬のものを用意するのもひと苦労だが、これにより、家庭で手に入りやすい食材も考慮してレシピを提案できる。毎日の放送で紹介した料理をそのまま真似て作れば、料理のバリエーションも抜群で、充実の食生活を送ることができるというわけだ。

それだけに、料理教室など本業を抱えながらここまで労力をかけてくれる講師陣には「ただただリスペクトです」と感謝。献立会議では、講師から「何が食べたい?」と聞かれて番組スタッフがリクエストすることもあるといい、まるで家庭のお母さんと子供のようなやり取りも行われているそうだ。

■ライブ感を重視した収録スタイル

本番当日はスタジオに入ると、15分程度段取りを確認してから、収録がスタート。以前は、放送尺通りに進める「生収録」を行っており、ハプニングが起こると最初から撮り直すため、「本当に生放送のような緊張感がありました」と振り返る。

ちなみに、番組開始当初は生放送で、食材のウナギが逃げ出し、それを追いかけた講師がカメラのフレームから外れ、誰も映らなくなる時間が放送されてしまうという珍事もあったそうだ。

現在はコロナ対策で現場スタッフの人数を減らしているため、途中でストップをかける場合もあるが、なるべくライブ感を大事に収録を進行。「実際の料理も流れで作るものなので、そのまま家庭で作ることを想定しています。そうするとポイントも分かりやすく伝えられるし、出来上がりも一番おいしく見せられますから」と狙いを明かした。