「私の記憶が確かならば…」の名ゼリフで始まり、料理とエンタテインメントを融合させて一世を風靡したフジテレビ系バラエティ番組『料理の鉄人』(1993~99年)の放送開始25周年を記念した「鉄人シェフ同窓会"絆の鉄人"」が11日、都内のホテルで行われ、道場六三郎氏、陳建一氏、坂井宏行氏といった歴代の"鉄人"、挑戦者、スタッフらが一堂に会した。
駆けつけた挑戦者は約80人にのぼり、懐かしの当時の映像が流れたほか、10分間の料理対決も開催。大いに盛り上がった同会の模様をレポートする。
"美食アカデミー"の主宰・鹿賀丈史が、国内外から超一流シェフをキッチンスタジアムに招き、和・フレンチ・中華・イタリアンの鉄人と料理の腕を競わせる同番組。鹿賀はNHK大河ドラマ『西郷どん』の収録で、3代目和の鉄人・森本正治氏はハワイでの新店オープンが重なり、初代フレンチの鉄人・石鍋裕氏は前日にインフルエンザが発症して欠席となったが、満員の会場では至るところで思い出話に花が咲いていた。
司会はもちろん、当時実況していた元フジテレビの福井謙二アナウンサーで、「5年前にフジテレビを退社しまして、年収はだいぶ下がりました」とツカミの一発。横にはおなじみの解説・服部幸應氏(服部栄養専門学校校長)が並び、"冷蔵庫前レポート"の太田真一郎氏が、随所に「福井さん!」とあの早口で会場からレポートをまくし立てた。会場内のライブ映像は、当時のスタッフが機敏なカメラワークで映し出し、映画『バックドラフト』のサウンドトラックなどから多用された音楽が流れると、当時の興奮が蘇るようだ。
冒頭であいさつに立った2代目和の鉄人・中村孝明氏は「当時は結構苦しい戦いが多かったけど、今日は最高(笑)」、中華の鉄人・陳建一氏は「みんな年取ったねぇ~」、初代和の鉄人・道場六三郎氏は「本当に懐かしい顔ぶれにお会いできてありがたい」、2代目フレンチの鉄人・坂井宏行氏は「本当に懐かしいです!」とそろって笑顔。
乾杯の発声は、御年87歳の道場氏で「いくら年を取っても想像する頭は全然衰えてないので、それによって非常に希望が持てたんです。これは料理人をやってきたおかげだと思います。1日1日をまだ楽しく生きていきたいと思います」と力強く語った。
その後は、審査員を務めていた「かの魯山人の愛弟子」平野雅章さん、「料理記者歴40年」でおなじみの岸朝子さん、名勝負を繰り広げた周富徳さん、番組プロデューサーだった松尾利彦さんという番組終了後に逝去した人たちに"献杯"するコーナーも。立食パーティーの料理を、鉄人自ら振る舞ったり、取り分けたりするシーンも見られた。
そして、メインイベントとも言える10分間での料理対決。当時の衣装に身を包んで待ち構える鉄人たちに相対する挑戦者は、こちらも数々の名勝負を繰り広げた神田川俊郎氏からの刺客・谷口広一氏で、24年前に敗れた陳氏を指名し、リベンジマッチを申し込んだ。
陳氏は「やりたくない!」と駄々をこねながらも、いざ決戦のキッチンへ。テーマ食材は「ダチョウの卵」で、鹿賀主宰の「アレ・キュイジーヌ!」の掛け声で対決がスタートすると、陳氏が谷口氏の用意したウニを強奪したり、谷口氏はゆずと1個落としてしまったりとハプニングに見舞われたものの、両者見事に10分以内で料理を完成させた。
できあがった料理は、谷口氏が「魂のゆず蒸し」、陳氏が「二度と作れない卵料理」。審査員は、服部氏、太田氏、そして特番で冷蔵庫前レポートを務めていたフジテレビの阿部知代氏で、阿部氏は陳氏のメニューを食べて岸さんの名ゼリフ「おいしゅうございます」を出したものの、結果は2対1で挑戦者・谷口氏の勝利となった。戦いを終えた2人が握手を交わす清々しい様子は、当時のままだ。
谷口氏は勝利の弁で「『料理の鉄人』という番組のおかげで、私たち料理人は、思いやりや食材に対する感謝の心をあらためて教えてもらったような気がします」と感謝。陳氏は、料理を終えて「疲れた…」、結果発表前の音楽に「あれ何回聞いても嫌だねぇ」とボヤきながらも、「楽しいね、これね!」と充実の様子で、その勢いで「また番組やればいいじゃん!」と提案すると、会場から大きな拍手がわき起こっていた。
その後は、神田川氏がカラオケで「お料理四季の歌」を上機嫌で歌うと、道場氏も「絶対に神田川には負けたくない」とアカペラで「まっくろけ節」を披露して、外国人シェフたちがポカンとする場面も。
最後は、番組演出を担当し、この会を企画した田中経一氏が「こんなに盛り上がると思いませんでした。本当にありがとうございます!」と感謝。そして、坂井氏が「これを機に、これからは年に1回くらいやりたいな」と締めくくった。