JR東日本は7日、従来の電車と比べて機器の省エネ性能が向上している山手線の車両E235系を使用し、乗務員の運転操作によってさらなる運転エネルギーの削減をめざす省エネ運転の研究に関して発表した。

  • 山手線における省エネ運転の取組みフロー

JR東日本で消費しているエネルギーのうち、約8割が列車の運転エネルギーとされ、同社は運転エネルギー削減をめざし、省エネ運転の研究に取り組んでいる。山手線E235系で乗務員の省エネ運転を試行した結果、約10%の運転エネルギー削減効果を確認できたという。今後、乗務員が省エネ運転に取り組みやすい環境を構築し、省エネ運転を推進することで「脱炭素社会」の実現に貢献すると説明している。

現在、研究を進めている省エネ運転は、駅間の所要時間を変えずに最高速度を抑えることで、運転エネルギーを削減するという。具体的には、加速時間を短くし、惰行の時間を長く、減速時間を短くする運転となる。山手線で省エネ運転を試行するため、乗務員が運転した走行データを分析して定時性と省エネを両立する運転曲線を抽出し、これを再現することにより、運転エネルギーの削減を実現する。

省エネ運転を実現するしくみとしては、E235系が搭載する車両モニタリング機能を活用し、取得した走行データから駅間ごとに消費電力量、所要時間、加減速操作のタイミングなど分析。駅間ごとの分析結果をもとに、省エネ効果と乗務員による再現のしやすさなど考慮した加減速操作のタイミングを決定する。

山手線で確認できた省エネ運転による約10%の運転エネルギー削減効果は、山手線における1年間の運転に換算すると、約500万kWh(CO2約1,400トン)の運転エネルギー削減が見込まれるという。なお、首都圏の在来線全線区で省エネ運転に取り組み、同様の削減効果があると仮定すると、年間約2.3億kWh(CO2約7.3万トン)の運転エネルギーが削減できる見込みとのこと。

この研究の走行データの分析は、現在、手動でデータのダウンロードや変換作業を行っている。今後、これらの作業を自動化することで、分析結果を短時間でフィードバックする方法等のシステム開発を進め、乗務員がデータにもとづいた省エネ運転に取り組みやすい環境を構築する。あわせて研究の知見を活用したアルゴリズムによる省エネ運転曲線選定の自動化や、運転中の乗務員に最適な運転操作のタイミングを伝え、省エネ運転を支援する手法などの検討も進める。さらに、E235系が導入される他線区への展開や将来の自動運転への知見の活用など、省エネ運転の取組みを推進していくとのこと。