2020年初頭から世界的な流行となった新型コロナウイルスにより、人々の生活は一変し、企業活動にも大きな打撃を受けました。そのような状況で気になるのが企業のボーナス動向。ワクチンの接種が進み、徐々に経済再開への期待感も出てきていますが、主に昨年後半の企業業績が反映される今年の夏のボーナスはどうだったのでしょうか。

2021年夏ボーナスの支給実績を振り返りつつ、企業業績との関係性について見ていきましょう。

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ボーナス支給状況は業種ごとに大きく差がつく

日本経済新聞の調べによると、2021年夏ボーナスの支給額は全体で前年比-2.86%と3年連続の減少となりましたが、全31業種のうち前年比マイナスは17業種で、21業種がマイナスとなった昨年と比べると改善傾向にあります。

また来年の新型コロナのボーナス金額への影響を聞いた調査では、半数を超える55%が影響はなさそうと回答しており、来年以降は更なる回復が期待できます。

一方で製造業が前年比-1.35%であるのに対し、非製造業は前年比-7.47%と大きく差が広がっています。製造業は海外で事業を展開する企業も多く、日本に先駆けてグローバル経済が回復基調にある恩恵を受けていますが、国内経済は依然低迷が続いていることが非製造業にとっての向かい風となり、ボーナス支給額にも格差が出てきています。

  • 【業種別】2021年夏ボーナス前年比増加率ランキング※日経新聞のデータ、日経業種分類を参考に筆者作成

業種別に見てみても、前年比増加率上位と下位でコロナ禍の特徴が現れています。上位には、外出自粛の中でも"巣ごもり消費"の恩恵を受けた、陸運や食品がランクイン。特に陸運はEC需要の増加を追い風に宅配便の需要も増加し、ヤマトHD傘下のヤマト運輸は前年比で14.3%の支給額増となりました。

一方で鉄道・バスや不動産・住宅など、新型コロナの外出制限が向かい風となった業種もありました。特に鉄道・バスは昨年4月以降計4回発令された緊急事態宣言をはじめ、人々が感染予防のために外出・旅行を控えたことにより業績面で大きな打撃を受けたことがボーナスにも影響しています。

JR東日本は新幹線や関東圏の在来線利用が大きく減少したことなどを背景に、純利益が5779億円の大幅赤字となり、ボーナス支給額も18.6%減となっています。

企業別ランキング1位の支給額は好調な業績を背景に280万円!?

続いて企業別で支給額を見るとどうでしょうか。支給額上位10企業を見てみましょう。半導体の需要が増え続ける「スーパーサイクル」に入ったとされる半導体関連の企業や、初の純利益1兆円を記録したソニーグループなど、業績が堅調な企業が名を連ねました。

  • 【企業別】2021年夏ボーナス支給額ランキング※日経新聞のデータを参考に筆者作成

1位のディスコは、前年比で33%の増加で、2位を50万円近く引き離す約280万円支給だったようです。半導体、電子部品の研削・切断・研磨装置で世界トップを誇る同社は、世界的な半導体需要増加を追い風に業績も絶好調で、21年3月期の純利益は前年比約41%増となり、過去最高益を記録しました。株価も昨年3月のコロナショック時につけた安値と比較すると、今年の4月には2倍以上に上昇しています。

前年の26位から9位へと大幅な順位アップとなったのは東京エレクトロンデバイスです。東京エレクトロンの傘下の半導体商社で、業績堅調な東京エレクトロンに呼応する形で収益を伸ばしています。21年3月期の純利益が前期比で約37%増であったことに加え、22年3月期も約40%増を見込んでおり、成長が加速段階にあります。こちらの株価も堅調で、昨年3月時には一時2,000円を割れていたのが、今年の5月には6,000円を突破し、一時3倍以上に上昇しています。

ボーナスは業績に連動する部分もあるため、一例ではありますが、このように業績が好調で株価も堅調な企業のボーナス支給額は成長していることがわかります。これは裏を返せば、ボーナスの動向から好調な業種・企業を見つけることもできると言えるのではないでしょうか。

身近な事柄を銘柄選びのきっかけにしよう!

では、一足早いですが、来年のボーナス動向を業績面から展望してみましょう。

四季報夏号の業種展望から今期の純利益予想の上位を見ると、鉄鋼が1,045.3%、繊維製品が897.6%、輸送用機器が226.4%と急回復を見込んでいます。特に鉄鋼、自動車・部品、その他輸送機器は今年の夏ボーナスでは前年比マイナス圏でしたが、来年は業績回復に伴い、ボーナス支給額の回復も見込めるのではないでしょうか。

またサービス業も100%近い増益が予想されております。新型コロナの感染動向に依存するものの、1年以上低迷が続いた中で、人々の外出意欲は高まっているため、行動に制約がなくなった暁にはこちらも急回復が期待できます。

つい難しいと感じてしまう投資の銘柄選びですが、このようにボーナスなど身近な事象をきっかけに関連性を見つけ、銘柄探しに取り組んでみると楽しめるかもしれません。

Finatextグループ アナリスト 菅原良介

1997年生まれ、Z世代のアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科に在学中は「株式投資サークルForward」の代表を務め、大学生対抗IRプレゼンコンテストで準優勝を獲得。2年間の長期インターンを経て、2020年Finatextに入社。現在はFinatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。コミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターも務める。