6月は水虫の季節。水虫はカビの一種である白癬(はくせん)菌による皮膚感染症で、日本人の約2割に見られるといわれています。※出典:渡辺晋一氏ら 日本皮膚科学会雑誌 111(14),2101-2112,2001より

「在宅勤務で靴を履かない日が増えたので、今年は大丈夫」なんて、油断しているあなたこそ危ないかも!

  • 水虫は人ごとではない?

完全巣ごもりの1日でも普段は禁物

水虫といえば、足にできるものと思いがちですが、実は髪や爪など、どこでも繁殖します。ただ、最も多くできるのが足の裏や足指の間というわけです。

横浜のクリニック院長のキムシノ氏は、企業で働く従業員の健康管理などを行う産業医としても勤務中。6月になると、水虫の話題が増えるそうです。

コロナ禍により出勤や外出の機会が減り、1日中靴を履いて過ごす日も少なくなり、オフィスワーカーの水虫事情はさぞかし改善したのだろうと思えば、そうでもないらしい。

――在宅勤務や巣ごもりにより、靴さえ履かない日が増えた人もいそうです。裸足で過ごせば湿気もこもらず、水虫なんて無縁そうに思えますが?

キムシノ氏 「油断できませんね。外出しなかったからお風呂は1日おきでいいや、などと思っていても、以前に持ち込んだ白癬菌がいれば、しっかり繁殖します。外出しなくても、足だけは洗いましょう。白癬菌は非常に生命力が強く、角質やアカに住んでいたものは、落ちて干からびても生き続けます。それが誰かの皮膚に付着すると、皮膚の中に侵入して、水虫を発症させることがあるのです。不特定多数の人が裸足で歩くなどの環境だと大繁殖しやすいので、産業医として入念に確認しています」。

――感染しやすい体質、ライフスタイルなどはあるのでしょうか?

キムシノ氏 「基本的に、汗かきの人はできやすいです。そうでなくとも、足に傷があると誰でも感染しやすくなります。職種で言えば、靴を一日中履いている人です。外回りの後は足を拭いて、靴下を替えましょう。内勤時は、できればサンダルに履き替えてください。女性なら、ストッキングが少しでも蒸れたらこまめに靴を脱ぎ、風通しを良くしましょう。男女ともに、5本指靴下は有効です。外来者用のスリッパがあるなら、使うたびに消毒し、1日1回靴箱を開けて風通しを良くしてください」。

流行りのサウナにも水虫の危険がいっぱい

空前のサウナブームですが、「サウナで人生初の水虫になった」という話も聞きます。ドライサウナであれば、中は熱いしカラカラに乾燥しているので大丈夫そうですが、やっぱり足拭きマットやスリッパは危険そう。

――サウナで水虫がうつること、うつすことはありますか?

キムシノ氏 「もちろんありますよ。足拭きマットやトイレのスリッパ、さらにはカーペットなどから感染するケースが少なくありません。ちょうど今のような梅雨から夏場にかけて感染が増えます。白癬菌は高温多湿、特に湿度が高いと増殖しやすいからです。サウナの他、スポーツジムや銭湯、温泉などで感染することもあります。外で裸足になることがあったら、帰宅後すぐに足を洗いましょう」。

――予防方法を教えてください。

キムシノ氏 「足拭きマットやスリッパは小まめに洗い、とにかく清潔を心掛けることです。床や畳はぞうきんで拭き、カーペットはしっかり掃除機をかけましょう。もし、外から白癬菌を持ち帰っても、24時間以内に洗えば菌の繁殖は避けられます。ただし、清潔にしようと軽石でゴシゴシこすったりすると、皮膚に傷がついて感染しやすくなるので要注意です」。

薬を使って根気よく治療すればすっかりよくなる

テレビなどで、水虫薬の宣伝を目にすることがあります。もし水虫になったら、病院に行かず、ドラッグストアや薬局で買える市販薬で治したいものですが、効果はどうなのでしょう。

キムシノ氏 「市販の薬は有効ですが、改善が見られないこともあります。皮膚組織を取って調べないと、水虫なのか、それ以外の疾患なのか、ベテラン医師でも見間違いやすいのが水虫のやっかいなところです。足の指の間にできるものはカンジダ菌による趾間(しかん)びらん症、接触皮膚炎(かぶれ)と似て、水ぶくれは汗が原因で起こる汗疱(かんぽう)と似ています。

こうした事情もあり、産業医としては、皮膚科で確定診断を受けることを勧めています。一見良くなったからといって、治療を中断すると再発します。薬は、患部だけでなく、かかとや指の周りまでたっぷり塗りましょう」。

長引けば鬱陶しい水虫ですが、薬を使えば治ります。他人に迷惑をかけないように、しっかり治療しましょう。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。