新たな生活スタイルが浸透しつつある2021年、住まいの選び方はどのように変化しているのでしょうか?

不動産情報サイト『SUUMO』編集長の池本洋一氏にお話を伺い、前々回は所沢前回は辻堂の魅力を紹介してもらいました。最後となる今回は千葉です。

  • 生活スタイルの変化は住まいの選び方も変える

千葉県の「西登戸」がなぜ注目エリア?

──ニューノーマル時代注目のエリアとして、これまで、埼玉県の所沢や、神奈川県の辻堂をオススメしていただきました。同じ観点で、千葉県で注目すべき場所はありますか?

『SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版』の結果を見ると、舞浜・浦安エリアが人気を集めています。一時期は、東日本大震災や豪雨災害の影響で順位を落としていたのですが、再開発が進んだこともあってランキングを戻しました。

このあたりはディズニーランドの印象が強いと思いますが、開発道路が計画的に作られたり、大きな公園があちこちにできたりと、住みやすさを意識した街づくりがおこなわれています。

アンケート調査からはこうした動向がうかがえますが、私が千葉県で注目しているエリアは「西登戸(にしのぶと)」です。

  • 千葉県では西登戸に注目と言う『SUUMO』編集長の池本洋一氏

──ZOZOの新本社ができた西千葉のすぐ近くですね。なぜ西登戸に注目されているのでしょうか?

このあたりは昔ながらの高級住宅地で、「良い街にしよう」という意識がとても高いんです。ゴミ出しのルールや防災の取り決めが徹底されている一方で、お祭りなどを通じた新世代の地域参入にもオープンな空気があります。

実際、リクルートが2021年1月に実施した「街の共助力調査」では、1都4県の中で、この西登戸が最も「共助力」の高い街でした。

──「共助力」。あまり耳にしない言葉ですね。

災害が発生したとき、まずは家族を自分自身で守る「自助」を試みて、その後は行政からの「公助」を待つ。こう考えている方は多いと思います。しかし、実際の災害では「友人・隣人に助けられた」という「共助」のケースがとても多いのです。

道路や鉄道が寸断されて、消防士や自衛隊員がすぐに駆けつけられないことだってあります。そんな時、もし建物の下敷きになってしまったら、助けてくれるのはご近所さんしかいません。また、万が一避難生活を送る場合、近隣の情報収集をしたり、孤立を避けたりするなど助け合いがとても重要になります。

ご近所付き合いがあるかどうか。徒歩圏内のコミュニティで交流があるかどうか。こうしたつながりがある街が、共助力が高い街なのです。以前、「シビックプライド」についてご説明しましたが、街に対する誇りが強いと、共助力も高い傾向にあるようです。

自分の価値観に合った住まい選びを

──西登戸は「街を守り、地域で助け合う力」が強いというわけですね。そんな指標があるとは知りませんでした。

今後、街や住まいを選ぶ際の軸はかなり多様化してくる思います。

テレワークの普及によって、デスクワーク系の仕事をしている人は出社回数が減りました。今までの住まいは「通勤」と「家賃」の2軸で検討されてきましたが、これからは「毎日の通勤」制約から解放される方が増え、より自由に住みたい場所を選べるようになってきています。

──確かに、郊外の魅力が再発見されているのも、通勤の比重が減って、「もっと自然が近くにあるほうがいい」と判断できるようになった結果ですね。

これからは、「自分はこう暮らしたい」を大切にできるということです。みんなが良いと言っているから、ではなく「地域の中に友達が欲しいから」「大きな公園を毎日散歩したい」といったさまざまな理由で住まいを決めることができます。

もちろん、共助力の高さも、一つの切り口となるでしょう。さらに最近では、二つのエリアを行き来する「二拠点居住」という選択肢も現れてきました。「奥多摩・高尾エリア」や、「鎌倉・三浦エリア」などが二拠点居住したい地域として人気です。

いろんな指標や切り口を参考にして、自分と家族が本当に暮らしたいと思える街を探してもらえればと思います。

取材協力:池本洋一

不動産・住宅情報サイト『SUUMO』編集長
1995年リクルート入社。住宅領域で編集職・営業職として従事し、2006年に首都圏 『新築マンション』 フリーペーパー地域版の創刊リーダーを務めた後、『住宅情報都心に住む』、『住宅情報タウンズ』 の編集長に就任後、2011年から現職。